最終回の後でも普通に日常は続くんだなぁ

あの感動的な最終回を迎えた後も俺は普通に学校に登校していた。いや、うん。分かってたよ?この世界はラノベやアニメの世界じゃなくて普通の現実世界だって。


でも本当に何も変わらないんだなぁ…変わったことと言えば裕也と橋川が一層イチャイチャしだしたくらい。些細な変化だ。〇ねッ!


最終回が終わったあとも俺は主人公の親友ポジションだし俺が主人公に成り代わることは無い。まぁ昨日はハーレム羨ましー的なことを考えていたが実は俺はそこまで色んな女の子にモテたいとは思っていない。


どっちかと言うと一人の女の子にめちゃくちゃに愛される方が好みです。


…おや?いつもならこの時間になれば裕也が自分の席に着いているはずなのだが。そして俺はその裕也にウザイくらいに絡みに行く。それが日常だったはずだが?


あ、そうか。橋川と付き合ったから二人きりになれる場所に行ったのか。朝から盛んだねぇ…羨ま〇ねッ!


ふぅ…朝から毒を吐いてしまった。まぁ全部裕也が悪い。俺がモテないのも裕也が悪い。テストの点数が悪いのも運動神経が悪いのも全部全部裕也が悪い。俺はなんにも悪くないもんねー。


…にしても暇だな。裕也は唯一の親友である。そして唯一の友達である。つまり裕也と一緒に居なければ俺は必然的にぼっちになるのだ。


…最終回が終われば親友ポジションは不要ですかそうですか。


「俺も彼女ほしー」


?!


耳元でそう囁かれた俺は肩を震わせ、耳を抑えながら声のした方向へ勢いよく目を向ける。そこには柳が立っていた。


「や、柳ッ!貴様どうして俺の心の声をッ!」


「あなたの考えていることなんてお見通しよ。親友である赤坂君が美咲といることが多くなってぼっちになった真柴君?」


思考を全て読まれている…だと?


「どうして分かったの?そう言いたそうね?」


全てを見透かすようなその瞳にゴクリと喉を鳴らしてしまう。


「それは…」


柳の艶のある唇が怪しく動く。


「私も美咲がいなくなって一人になったからよ」


「…」


なんとも心が痛む話だった。


「そういやお前も友達いなかったな…」


「…そうね」


俺たちはなんだか虚しい気持ちになった。


親友同士が付き合いだし、ぼっちになった俺たちが惹かれ合うのは必然なのかもしれない…


「お互い、唯一の友人が居なくなったもの同士仲良くやりましょう」


「そんな関係で仲良くしたくねぇよ」


「あら、私はこんなにもあなたのことを愛しているのに」


柳は感情の篭っていない無機質な声でそう言った。


「それならもっと感情を込めて言ってもらいたいものだな」


「込めてるわよ。込めすぎて溢れだして中身が全て無くなるくらいにはね」


「無くなってるじゃねぇか!」


話してみると案外面白いやつなんだよな、柳。最初はめちゃくちゃに冷たかった。話しかけたら無条件で睨まれるくらいには冷たかった。でも根気強く話しかけてたらこんな風になったんだよな。まぁ柳と仲良くなろうとしていたのは裕也を助けたかったからなんだが…


「いいわ。どうしても私の愛を疑うのだというのなら証明しましょう。私の愛を」


「…」


また面倒くさそうなことを言い出した。無いものをどうやって証明するというんだね。


「お昼休み、一緒にご飯を食べます」


「…はい?」


意味わからん…


「そこで私の愛を証明してあげるわ」


「あ、おい」


それだけ言い残して柳は自分の教室に戻って行った。


「結局柳は何をしに来たんだ?」


前から変わったやつだとは思っていたがここまで変わっていたとは…世界はまだまだ広いな。


昼休みになった。


「蒼緋…俺、今日から…」


俺は話しかけてきた裕也を見る。いつもなら俺と一緒にご飯を食べていた。そしてその手には裕也の母ちゃんが作った弁当を持っていたはずだ。だというのに今日は手ぶら…そして申し訳なさそうな顔…ふっ…


「行ってこいよ」


「!あぁ、ありがとう」


裕也はウキウキとした様子でどこかへ行った。ふっふっふっ…親友ポジションは気を使えなければならないのだ…〇ねッ!


俺は一人暮らしで家から仕送りをしてもらっている。当然主人公の親友ポジションの俺が女子顔負けの料理を作れるわけもなく、食堂のご飯を食べている。


さて、今日は何を食べようかな…


「……ん」


うどん…いや、今はうどんの気分じゃないな。


「……くん」


カレー…うーん、カレーもなんか違う気がするんだよなぁ…


「…しば…ん」


カツ丼…近くなってきたな…もうすぐそこまで来てる…はっ!


「唐揚げだ!」


「誰が唐揚げですって?」


遂に今日の気分に合う昼食を見つけた俺だったが、どうやら昼食を考えることに没頭しすぎて周りが見えていなかったらし。その証拠に目の前数センチには柳が立っていた。


「あ、姉御…」


「あら、それあなたも言うの?」


ま、不味い!もがれる!


「あなたなら特別に抜いてあげるわよ?」


「昼間っから何言うとんねんお前は」


俺は無表情でなんの抑揚もない声でそうツッコミを入れた。


合流した俺たちは食堂に向かった。


朝に柳が何か言っていたな…なんだったっけ?確か「私の愛を証明する」だったっけ?一体どんな愛を見せてくれるのやら。


「さぁ、好きなのを選んでいいわよ」


「…これがあなたの言う愛ですか」


俺は食券機の前で立っていた。どうやら柳が奢ってくれるらしい。そしてそれが愛だと…


「あら、これも立派な愛よ?愛した相手のお腹を満たしてあげる。これのどこが愛ではないと言うの?」


「…さいですか」


俺は適当に返事をしながら唐揚げ定食のボタンを押した。


「ちなみに明日はあなたが私に奢る番よ」


「有償の愛ッ!」



あとがき

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