第14話 綺麗で強くて優しい

ー「は〜い…。抵抗あるやろけど…

風邪引いちゃうから観念してねー…」

 「…………い、い…い…やだ………///」ー


一応玄関で髪やらを拭いた俺たちだったが、服は当然のこと、雨の染みた服に全身を濡らされたため、風邪を懸念してか凛央さんは一緒に風呂に入り直そうと提案してきた。

今はさっきの脱衣場で押し問答を繰り広げている。

そりゃ凛央さんと風呂入れるのが嫌なわけないが、陰茎ち◯こ見られるとか恥ずかしすぎるだろ///

「はーやーくーー。」 

凛央さんは構わず俺の上着に手をかけた。

「い、嫌だぁ嫌だぁ嫌だぁ///!!!」

俺は絶対に入るまいと全力で拒絶を示したが、結果駄々こねる餓鬼みたいになってしまった。しかしそれを見て凛央さんは、意味不明な事を言いながら笑った。

「魔人ブウやん。」

「んだよって…///」

「…え?!

  今の子って魔人ブウ知らんの!?」

分からんな。なんかの人物なのだろうか。

「えー。なんかショックだなあ。

……ん……。魔人ブウ……?」

「………んだよ…。」

なぜだろう。今凛央さんがとても悪い顔を

したような気がした。

「…のりお。アンタ下見られるのが恥ずかしいんやおね?」

そう言って凛央さんは俺の下腹部を細長い指で指した。それすらも恥ずかしかった。

「おう…///」

「じゃ上裸は別に大丈夫なんだよね。」

は? 俺がその言葉の意味を問う前に、凛央さんは脱衣所の籠から青くて短い下履きを出してきた。

「デニムショーパン履いて

なら入ってくれる?」

…なるほど……。そうきたか……。

でも陰茎が隠れるなら別にいいか…。

「…分かった…///」

「おし! 魔人ブウ万歳やな。」

凛央さんはそう言って自分も服を脱ごうとした。綺麗に曲がったくびれが露わになる。

そして あ、と言って何かを付け加えた。

「のりおーーーーぶー?」



え?


俺は聞き間違いかと思った。

一瞬聞き間違いだと思い込んでしまった。

仮に俺の耳が狂ってなければ

こう聞こえた気がした。















「のりお入墨大丈夫?」


振り向いたときにまず俺の目に飛び込んできたのは彼女の左腕に彫られた赤い薔薇だった。そこから伸びている刺々しくも若々しい緑の茎や棘は、螺旋を描いていた。

右腕には、歪にも規則的にも見える不思議な青と紫の柄が彫られている。


俺は目を見張ってしまった。

声が出なかった。

「…あ……やっぱ墨怖いか…。ごめんね。」

口を開けて突っ立つ俺を見かねてか

凛央さんは俺に謝ってきた。



でも俺は、単純にかっこいいと思っていた

だけだった。

この人は世間からの風当たりを気にせず

自分の意志を尊重できる強い人なんだな

と思った。



「……彫らされたのか…?」

家柄や他人からの強制で墨を入れさせられる人間は世の中に一定数いる。

「ううん。私が入れたかった。」


「なら良いんじゃねぇか。」

「…え?」

「それがあんたの生き方だからな。」

とだけ俺は言った。

皮肉でもなんでもない。

凛央さんの選択を尊重しての言葉だった。

凛央さんは優しい。別に墨があろうが

なかろうがこれは変わらないしな。

優しくなくて墨ねぇ人間よりも、優しくて

墨あった人間のほが良いに決まっている。

自分の意志に従わず、周りの声を気にしてしか生きれねぇよりも、自分の意志に従って、世間体なんか気にせず生きてるほうが楽しいと、俺は思うから。

そんな生き方に憧れがあったから。



凛央さんという人物像が知れて嬉しいぞ。

そう伝えると彼女は苦笑した。

「嬉しいけどデニムショーパン履いとる男の子に言われるのは変な気分やな。」


風呂場の扉を開けて鏡を見る。

そこには変なやつが立っていた。

男なのに女物を履く、上裸で白髪の餓鬼。

「そういう妖怪いそうやな。」

「誰が妖怪だ。」

「アンタ。」


何か言い返そうとしたが、凛央さんが黒い胸当てを外している最中なのを見て俺は思わず黙ってしまった。

「なに…ガン見して。」

「しっしてぇっねえよ///」

変なところで噛んでしまったが

胸当てが外れるのと同時に、形の良い胸が

ぶるんという擬音を鳴らして現れる。

その中央に淡い桜色の乳首がついているのを、俺は目に焼き付けた。

…眼福///


「のりおオッパイ好きなんや。」



ばれた。












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