エッセイ

だめだなあ。

書いてしまうということはある程度の妥協をするということだ。

洗練された文章を書くと、細々とした生きたことはぼろぼろと落ちてしまう。自分の記憶さえ書き換えてしまう。

恐ろしい。

やっぱり文章って、読む人に委ねるために書くものなんだな。嘘と冗談と茶番と隙間。

本当に大事な記憶というものは、書かないでいた方がいいのかもしれない。それで劣化版コピーみたいなのをつくって、それをベースに好きなだけ美しい世界をつくるのがいいのかも。

とっておきの元データは、ここぞというときがあるかもしれないし、あるいは一生しまい込まれて終わるのかもしれない。

……ああ、こんなんじゃないんだよ。今も嘘をついている。

面白く盛り立ててそれらしいことを言うのは簡単で楽なことなのだ。


本当に生きたものを書くには。

エッセイは〝生〟を削るのだと、覚悟を持って書かなくてはいけない気がする。

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