第6話 監督の問いとその答え

 授賞式など其の他諸々が終わった後、俺は監督に話しかけに言った。監督にどうしても伝えたいことがあったのだ。前に練習中に監督に聞かれたことがあった「どうして芹沢は守りの卓球に入っているのか?芹沢にとって攻撃に特化した卓球はしないのか?」と、当時の俺はその質問にこたえられなかった。でも今の自分にならわかる。だから今すぐにでも監督に俺が出した答えを伝えたかった。「監督。」そういうと監督は振り返って「どうした、芹沢?もうすぐバスが出るぞ。」と俺に言う。「あ、そうなんですけど、俺監督に言わなきゃいけないことがあって、前に監督が「サーブが来たら一回返して次にボールがまた来たらその時にスマッシュを打つんだ。それが俺の考える攻撃に特化した卓球だと思う。」って言ってたじゃないですか。あの時は何となく聞いていたけど、今日の決勝で試合をしたときに思ったんです。自分にとって、攻める卓球というのはきっとそれじゃない。俺にとって攻撃に特化した卓球とは「一撃で相手のラケットにボールを触れさせない位のボールを打つ攻撃をする。」それが攻撃に特化したプレーだと思うんです。それで、監督のもう一つの質問であった「どうして守りの卓球ばかりしているのか。」ていうのなんですけど、あくまで俺にとっては「攻撃に特化した卓球」っていうのは切り札でしかないんです。黒川や雄大みたいに強烈なサーブを出すことはできないし、決勝で最後に打ったあのスマッシュを何本も正確に打てる自信もない。だけど受け流す力っていうのにはだれにも負けない自信があったから無意識にそれを使っていたんじゃないかなって思うんです。」そう言った俺に対して監督は、「攻撃に特化した卓球は切り札の一つでしかないか…うん、やっぱりお前をキャプテンにしてよかったよ芹沢。」そう言った監督に対して俺は思わず「え?」といってしまった。

「芹沢は、自分には受け流す力しかないと言っているけれど今日の試合を見ていてもう一つの芹沢の武器を見つけたよ。それは「観察力」だ。まぁ、これは佐藤もだがダブルスの試合で一回もプレースタイルを変える練習なんてしていないのにあそこまで正確に味方のフォームまで綺麗にまねできる選手なんてそうそういないよ。それはきっと芹沢の大きな武器だ。」

「でも、それはずっとあいつのプレーを見てたからじゃないですかね。」

「いや、それでもあそこまで完璧には出来ない。」

そこまで監督に言われるとは思わなかった。何か今日の監督、雰囲気違う?というか観察力が武器って言われてもなぁ。それって卓球に役立つのか?

うーんと考えていると、「とにかく、優勝おめでとう。だけどこれで終わりじゃないからな。」といつもの監督に戻っていた。「は、はい」俺はそう元気よく答えた。



  帰りのバスの中に入ってスマホを開く、大会が終わったらすぐに連絡してねと柚葉にきつく言われているのですぐに連絡を入れる。

「予選会、優勝した。これで全国に行ける。」

まぁ、必要最低限の情報しか送っていないけれどだいたいこんなもんだろ。そう思って送ろうとしていたら、すぐに連絡が返ってきた。「本当に⁉おめでとう!」と連絡が返ってきた。それを見ていたらしい雄大が「おやおや~隼人君、大好きな彼女にメールですか??」とからかってくる。「うるせぇ、というかまだ付き合ってないし。」そう言うと、雄大は「じゃあいつ告白すんだよ、こう見えても俺応援してるんだぜ。」とにやにやしながら言う。「全国が終わったら告白するって決めてるんだよ。」と雄大に向かって言うと、「じゃあ絶対優勝しないとな。」と笑いながら拳を出してくる。俺もそれにこたえるように「優勝するのは当たり前だ。」と雄大の拳に合わせる。


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