第4話 予選試合開始
二月、ついに高校選抜団体戦の予選が始まった。
高校選抜は全国を九つのブロックに分けて予選を行う。だから予選を勝ち抜けて出るチームは都道府県代表ではなく〇〇ブロック代表として出場する。俺たちは一回戦、二回戦、三回戦、準々決勝と勝ち抜いていき準決勝までたどり着くことが出来た。
しかし、いつもこの準決勝で俺たちは敗退してしまう。だけど、今年は優勝して必ず全国大会に出てやると心の中で思いながら、次の対戦相手を確認するためにトーナメント表が置いてある場所へ行った。
準決勝の相手は白栄高校。関東ブロックの中では大体俺たちと同じくらいの実力を持っている高校だ。何度か練習試合もしたが飯塚もいないし勝てるかどうかは微妙だ。だけどここで勝たないと俺たちは全国へ行くどころか決勝に行く権利すらもらえないのだから。
「宜しくお願いします!」出場するメンバーが一列になって相手に向かいながら礼をする。そうして俺たちの試合が始まった。
俺の対戦相手は白栄のキャプテンである黒川明人だ。白栄と練習試合をしたときは、いつも黒川の相手が飯塚だったから俺は対戦したことが無い。なので俺は黒川の弱点も知らない。こういう時、飯塚だったらどうしているんだろうと考えてしまうのは、俺がまだ飯塚に劣等感を感じている証拠だ。だけど、今はそんなことを考えている場合じゃない。目の前にいる相手を倒すことに集中するんだ。
俺の試合は第五試合で今は二勝二敗で引き分け状態だ。つまり、この試合を制した方が決勝に上がることが出来る。絶対に勝たないといけない。しかし、最初にサーブ権を持ったのは黒川の方だ。黒川のサーブはとても強烈なサーブだということでまったく戦ったことのない俺でさえも知っているくらい有名だった。それに対して俺は、ラリーを続けて相手のミスを誘うというプレーをする。黒川が一球で試合に勝つなら俺は持久戦で勝つというお互いにとってとても相性が悪い。だから最初から強烈なボールで来られると絶対に返せる自信がない。そう考えていると、俺たちの試合が始まった。
想像通り、黒川のサーブは強烈でその後もどんどん攻撃してくるので返すので必死だった。とても相手にミスを誘うことなんてできない。しかも、だんだんと長く、そして速くなっていくラリーにお互い集中力と体力がなくなっていく。今のスコアはセットスコアが2-2、ゲームスコアは14-13で俺が勝っている。あと一点で俺が勝てるのに、その一点が取れない。
というか、黒川どれだけ体力あるんだよ。普段の試合でもこんなにラリー続かねえよ!と思いながら必死に打っていると、ふと試合前に飯塚に言われたことを思い出した。
「黒川はラリーが長くなっていくと左サイドの守りが弱くなる。そこに速い球を打つことが出来れば、必ず点は取れると思う。」確かに今左サイドの方を見ると守りが少し弱くなっているように見える。だけど、こんな速いラリーの中でさらに速いボールを打てるだろうか。いや、やるしかないんだ。このゲームを落としたら俺たちは負ける。だったら飯塚の言葉を信じてやるしかない。
そしてボールが返ってきた瞬間、俺はこの試合の中で一番強く、そして速いと思えるスマッシュを打った。黒川がレシーブを打とうとしていたがそれよりも速くボールは相手の台について床に落ちた。スコアボードの点数が変わる。15-13。
その瞬間、俺たちの決勝戦進出が決まった。
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