第2話 崩れた日常
七月、「宜しくお願いします!」と部員たちの声が真夏の暑い体育館に響く。
「今日は、スマッシュの練習から始めるぞ~」とキャプテンである飯塚悠馬の声が聞こえる。今日は合宿の三日目、高校選抜の予選大会前に長時間で練習することが出来る最後の期間だ。毎年、俺たちの高校である東英高校はあと少しの所で、本大会には出ることが出来なかった。今年、東英高校卓球部は30周年を迎える。なので今年こそは、本大会に出て優勝するといつも以上にみんな意気込んでいた。いつも通り、卓球台を準備して練習をするといういつもと変わらない日常のはずだった。
「いっつ…」突然そんな声が聞こえた。その声がする方を向いてみると、膝を抱えてうずくまっている飯塚がいた。「飯塚、大丈夫か!」「誰か担架持ってこい!」そう口々に声が飛び交う。俺たち部員は飯塚に何が起こっているのかわからなかったが
少なくとも飯塚の怪我はただの怪我ではないということだけは全員分かっていた。
飯塚は顧問が付き添い病院へ行った。その後、俺たちは練習を再開したが全員あまり
練習に集中できない様子だった。
夜、顧問から飯塚の怪我について説明があった。飯塚は膝をひねったことで靱帯が断裂していたらしく、予選大会に出れるかは怪しいと説明された。
俺たちは、顧問と監督を交えて急遽代理のキャプテンを決める話し合いをすることになった。だけど飯塚の代わりに部をまとめられる人物などそうそういない。俺達の中で部をまとめ上げられる人間は飯塚が一番適任だったのだ。その飯塚がいないと大変なことになる。俺たちが頭を悩ませていると顧問が「代理のキャプテンは芹沢がいいんじゃないか?後輩とも仲いいイメージがあるし。」と言ってきた。確かに後輩とは仲がいいがキャプテンなんて俺にはできない。俺よりも適任な人がいると言って断ろうとしたが皆口々に「芹沢なら大丈夫だな!」と言ってきてとても断れる状況ではない。結果、俺は渋々キャプテンをすることになった。
翌日、顧問から俺が代理のキャプテンになったということを他の部員に説明した。それを聞いた他の部員は、ようやく今この部で起こっている事の重大さを理解したらしい。でも、ここから地獄の日々が始まるとはだれも思わなかっただろう。
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