「その地域に今、負のパッションがコミットしてるんだよ!今そこは心霊災害が起きるリスクが上がってるね!!!」
埴輪庭(はにわば)
秋島くるみ
「あーそれはちょっとまずいね。ええと、差し支えなければ住んでる地域を教えてもらっていいかな。あ、そこまで詳しくは言わなくていいよ。うんうん、なるほどね。──やっぱりだ! その地域に今、負のパッションがコミットしてるんだよ。今そこは心霊災害が起きるリスクが上がってるね。でも大丈夫、君の部屋の霊門がどっちか知りたいから協力してくれる? ありがとう! じゃあ箸を一本立てて、普段をごはんを食べる食卓に立ててくれるかな。先を指で押さえたままね。先端が上になるように。OK……そして指を離して。それを画像で送ってね。…………よし、よくやった、これで分かったわ。その方向にどんな家具があるか教えてね。うん、化粧台か。じゃあその隅に適当なチラシを敷いてさ、塩を盛って。そうそう、食塩でOK! ……盛った? ナァーイス。そしたら『おんあびらうんけん』って言いながら人差し指を塩に突っ込んで、指についた塩をぺろっと舐めてよ。──できた? はい、除霊完了! マジマジ、マジだよ。今夜からでなくなるよ、本当に。その証拠にお礼は解決してからでいいから。もしまた出たら1円も払わなくていいよ。どう? それなら詐欺じゃないよね? うんうん、宣伝してるとおりだからそのへんは! じゃあよろしく! 一週間後に結果をDMしてね! いい? 一週間後だよ。一週間経ってそれまで何もなかった時だけお金を払ってもらうからさ」
通話を終えた秋島くるみはホゥと一息ついた。
「物凄い自信だったなあ。でも……うん、解決してからお金を払うんだったら絶対詐欺じゃないもんね」
つまりは件の祓い屋"ぴるるん@心霊相談承ります"なるアカウントは本物なのだ、とくるみは納得する。
「これで今夜から眠れるってこと!? 引っ越してきたばっかりなのにまた引っ越すとか無理だもん。ぴるるんさんに相談して本当に良かった!」
くるみは大きく伸びをし、トラブル解決の祝杯──モップバリュウの98円ビールを空けた。
・
・
そもそもの話だが、くるみがどんなトラブルに巻き込まれていたかと言うと、一言で言えば心霊現象だ。
くるみが越してきた部屋は
引っ越してきた部屋には初日から何かがおかしかった。
夜になると、天井から微かに響く足音がする──最上階なのだから、上の住人なんているはずもないのに。
床を這うかすかな音がくるみの耳元まで忍び寄る。
それも一度や二度ではなく、毎晩深夜になると決まって。
一番恐ろしかったのは、鏡に映る異形の姿だ。
ある晩、くるみが洗面台に向かって歯を磨いていると、後ろに人影が映っていた。
男か女かも定かではない不気味な影。
びっくりしたくるみは後ろを振り返るが誰もいない。
しかしもう一度鏡を見ると、まだその影は消えずにそこにいた。
結局その日、くるみはネットカフェに泊まる事になった。
またある日、朝起きるといつもどこかしら家具の配置が変わっていた。
くるみは決して動かしていないのに、椅子が微妙に違う方向を向いていたり、テーブルの上に置いていたはずのものが床に散乱していたり。最初は自分の記憶違いかとも思ったが、そんなわけはない。
──何かがくるみの生活空間を侵食している感覚が日に日に強くなっていった。
そして、極めつけは深夜に聞こえてきた囁き声。
最初はきのせいかと思っていたが、次第にそれが明確な言葉になっていった。
「逃がさない」「逃げられない」「お前もここにいる」「私たちのように、ずっとここにいる」
声は複数だった。
くるみは布団を頭までかぶり、震えながら朝を待つ日々が続いた。
日常生活に支障をきたすほどの心霊現象に疲れ果て、精神的にも限界が近づいていた。
・
・
「それって本物の心霊現象じゃないですか」
ある日会社の後輩ちゃんがくるみにそんなことを言った。
心霊現象の相談というのは、なかなか他人にしづらいものがある。
しかしその後輩は心霊だとかオカルトだとかそういったものが好きで相談しても無下にはされないだろうと思い、くるみも相談したのだ。
その考えは正しく、後輩ちゃんは親身になってくるみの話を聞いてくれた。
「そ、そうなの……ほんとうに、もう私、もう……」
くるみの言葉は支離滅裂だった。
それだけ精神に限界が来ている。
「…………正直、私としてはそういう状態の先輩にいい加減なことを言いたくないんですけど、もしダメ元でもなんとかしたいって言うんだったら……」
後輩ちゃんは言葉を濁す。
あまり気が進まない様子だ。
「なんとかできるの!? お願い! なんとかしたい! したいの! でも、よくわかんなくって、私、どうしたらいいのかわかんなくって……見て」
くるみは後輩ちゃんに手首を見せた。
「わ、これは……」
そこには誰かがすごい力で手首を掴んだようなそんな跡が残っている。
それを見て後輩ちゃんも話すことにした。
「今SNSでちょっと話題になってる人がいるんですけど」
そう言って後輩ちゃんはスマホの画面を見せる。
そこには『ぴるるん@心霊現象相談承ります』というアカウントが映されていた。
「ぴるるん?」
ぴるるんはSNSの心霊界隈で今一番熱いアカウントだ。
本物の除霊師だと騒がれている。
これまでに解決した心霊現象は1000を越え、解決率は驚異の100%。
「詐欺とかじゃないの……?」
くるみもさすがに胡散臭いと思ったのか、その声は疑念に満ちていた。
後輩ちゃんは首を振る。
「私もそう思ったんですけれど、どれだけ調べてもこの人の悪評とかそういうのがないんですよね。詐欺られたとかそういう話が全くなくて。普通この手の除霊師って大抵が詐欺なんですよ。ネットで調べれば簡単に被害者が出てきます。だからそういう詐欺師はすごく短期間にコロコロとアカウントを変えたりするんですけど、このぴるるんという人はもう5年も前からずっとこのアカウントなんです。私、この人に相談した人たちに話を聞いたことがあるんですけど、みんながみんなぴるるんに救われたとか、ぴるるんがいなかったら呪い殺されたとか、そんなことばかり言ってて……」
「でもお金かかったりするでしょ……? すごい大金とか」
くるみは引っ越してきたばかりで貯金が大分削られている。
料金次第では、とは思うが大金は払えそうにもなかった。
しかしそんなくるみの懸念を後輩ちゃんは一蹴する。
「それがたったの1万円なんです。たったのって言っていいか分からないですけど……。しかも問題が解決してからの後払いでいいらしいんですよ。これっておかしくないですか? 個人情報収集のためのアカウントなのかなって思った事もあったんですけど、ぴるるんはそういうの全然聞いてこないらしくって。せいぜいが県とか大きい範囲でどの辺に住んでるのかとかを聞くくらいらしくて」
並べられる好条件にくるみの気分は少し晴れてきた。
胡散臭いと思う気持ちは払拭できないものの、ぴるるんが詐欺師であるという材料がことごとく潰されている。
「じゃあ……私、相談してみる」
くるみはぴるるんに相談することに決めた。
◆
くるみがSNSのダイレクトメッセージで相談をすると、返事はすぐに返ってきた。
──『いいよ、じゃあ今夜通話できる? LINEでもディスコでもOK。スカイプでもいいよ』
ぴるるんは妙にカジュアルにテンポよく返信をしてくる。
──『OK、仕事が終わってからで大丈夫だよ。あと俺がこんな態度なのは、本気の人を見極めるためだよ。こんなカンジの俺にでも助けを求めたいっていう人ならマジで困ってるっていうことでしょ? マジで困ってる人なら、俺だってマジで助けたいからね。"ももゆず"さんはマジで困ってると思った。だから安心してよ』
──『ああ料金は1万円ね。振り込みはNO。ペイペイかアマギフでよろしく。高くはならないけど安くもならないよ。納得できなかったら話は無しでも大丈夫だよ』
なるほど、とくるみは思う。
そしてこのやけに頼もしいぴるるんの様子に、「なんとかなっちゃうかも」と思うのだった。
そうこうしている内に、仕事が終わり──
・
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「あーそれはちょっとまずいね。ええと、差し支えなければ住んでる地域を教えてもらっていいかな。あ、そこまで詳しくは言わなくていいよ。うんうん、なるほどね。──やっぱりだ! その地域に今、負のパッションがコミットしてるんだよ。今そこはかなり心霊災害が起きるリスクが上がってるね。でも大丈夫、君のお部屋の霊門がどっちか知りたいから協力してくれる? ありがとう! じゃあ箸を一本立てて、普段をごはんを食べる食卓に立ててくれるかな。先を指で押さえたままね。先端が上になるように。OK……そして指を離して。それを画像で送ってね」
「…………よし、よくやった、これで分かったわ。その方向にどんな家具があるか教えてね。うん、化粧台か。じゃあその隅に適当なチラシを敷いてさ、塩を盛って。そうそう、食塩でOK! ……盛った? ナァーイス。そしたら『おんあびらうんけん』って言いながら人差し指を塩に突っ込んで、指についた塩をぺろっと舐めてよ。──できた?」
「はい、除霊完了! マジマジ、マジだよ。今夜からでなくなるよ、本当に。信じるのが大事なんだ。思いってのはね、目に見えないけど力を持ってるんだよ。君の部屋の幽霊はしっかり除霊された。マジだよ大マジだ」
「俺のアカウントのフォロワー数知ってるでしょ? 70万だよ。それだけの人数が俺の力を本物だって信じてるんだ。君も俺を信じて助けを求めたんでしょ? なら俺を信じなよ。いいかい?
通話を終えた秋島くるみはホゥと一息ついた。
「物凄い自信だったなあ。でも……うん、解決してからお金を払うんだったら絶対詐欺じゃないもんね」
つまりは件の祓い屋"ぴるるん@心霊相談承ります"なるアカウントは本物なのだ、とくるみは納得する。
「これで今夜から眠れるってこと!? 引っ越してきたばっかりなのにまた引っ越すとか無理だもん。ぴるるんさんに相談して本当に良かった!」
くるみは大きく伸びをし、トラブル解決の祝杯──モップバリュウの98円ビールを空けた。
◆
朝。
くるみは目覚ましのアラームの音で起きた。
「え?」
同時に困惑。
というのも家具の位置が全く変わっていないし、変な声で起こされたりもしない。
手首を見てみるとあざが消えていた。
「ほ、本当だった……」
そう、本当に心霊現象は収まったのだ。
・
・
一週間後。
くるみはいつもと変わらず目覚ましのアラームで起きた。
もちろん家具の位置は何も変わっていないし、手首の痣も再び浮き出たりもしていない。
「ぴるるん様にメッセージおくらなきゃ!」
くるみは急いでSNSを開いて、ぴるるんにメッセージを送った。
──『一週間たちましたけど何もおきてません! 本当に本当にありがとうございます!! 私もうぴるるん様がいなかったらどうなっていたか。本当にありがとうございました、助かりました!! お礼のお金を払いたいんですけれど本当に1万円でいいんですか? 私今あまりお金がないですけど、ローンとかで大丈夫ならもっと払えます。あんまり高いと苦しいですけど……』
返事はすぐに来た。
──『OK! 解決だね、料金は1万円ね。最初に約束した通りだよ。じゃあペイペイのQRおくっとくから送金して。アマギフがいいならコードおくってね。できれば今日中、遅れるなら連絡して。それじゃあ、また困った事あったらDMしてよ、じゃあね』
何か胸の奥から込み上げるものがあった。
感動なのかなんなのか、とにかくその謎の感情はくるみを震わせて──
「はあー……本物ってこれかぁ……これがなんていうか、本物っていうんだなぁ……」
と、本物は本物は本物はと連呼する本物ロボになってしまった。
「あ、後輩ちゃんにも教えてあげなきゃ」
そう言ってLINEを送る。
◆◆◆
アホなやつもおるもんやなと、俺は煙草に火を点けた。
昨今流行ってる電子タバコってやつはどうにも気に食わない。
タールを抜いてどうするんだって思いがある。
今時喫煙者なんてみんなさっさとクソみたいな人生終わってしまえと思ってるやつばっかりなんだから、ガンガンと紙巻煙草を吸えばいいのだ。
「あ、そういえば」
と俺はペイペイの画面を開いた。
残高を100万円に迫っている。
「いけね」
俺は操作して銀行に振り込んだ。
ペイペイは残高の上限金額が決まっているのだ。
しかし0になった残高は次の瞬間には2万円となる。
「ほんとバカが多いよなぁ。心霊現象なんてあるわけないじゃん。幽霊なんか本当にいたら今頃世界中パニックになってるよ」
さっきの女もそうだけど、なんかすごいテンションだったし、多分まあ……仕事が大変すぎて精神的に疲れちゃったとかそんな感じなんだろうな。
そういう人って色々と思い込みが激しいから見えないものを見た気になっちゃったりしてギャーギャー騒ぐんやろね。
もし本当に心霊現象が存在していたとしても、少なくとも俺に声をかけてくる連中のそれは嘘っぱちだ。
だって俺は除霊なんかしていないんだから。
あれしろこれしろと指示はするがあれだって全部適当だ。
その場のフィーリングでどうすればいいか適当に言ってるだけにすぎない。
「大体負のパッションがコミットしてるって何なんだよ、俺も知らねえよ」
俺はそう言ってゲラゲラと笑って──ふとPCデスクの横に置いてある写真立てを見て沈んだ。
──はあ、ぴるる……なんで死んじゃったんだろうなあ。俺が死ぬまで待ってくれてもいいじゃねえか
ぴるるとは6年前に飼っていたインコだ。
店で買ったわけじゃなく、ベランダで死にかけていたところを助けた。
医者なの何だのだいぶ金はかかったが、あのまま放置して死なれるっていうのはどうにも気分が悪かったのだ。
当時俺は結構ひどい環境の仕事場に勤めていて、扱いもまあひどくて、自分の存在意義がどうだのとちょっと病み気味だったのもあるかもしれない。
死にかけたインコが妙に自分に重なった。
──お前が死にかけてるのは誰もお前を助けてくれなかったからだよな。俺もまあそうだわ。親はいないし友達なんてのもいないし、きっと今ここで俺が死んでも誰も気づいてくれないんだろうな
そう思ったらもうだめだった。
そうしてインコを手当してもらって、まあなんだかんだって治ったって顛末。
でも当時は少し複雑だった。
インコなんて野良でいるわけないんだから、どこかに飼い主がいるんだろうと思ったからだ。
飼い主は悲しんでるかもしれない。
このまま飼いたかったが、他に家族がいるなら戻さないっていう選択肢は取れなかった。
だから色々探し回ってみたが、結局飼い主は現れず俺が飼うことにした。
ぴるるは優しいやつだ。
名前を呼べば短く鳴いて答えてくれる。
会社ではこっちから何かを聞こうとして話しかけてもたいてい無視されるっていうのに。
あのクソ上司が! 本当に死んでしまえ!
まあそれはともかく、俺はぴるるにめちゃくちゃ癒された。
ぴるるが居なければ俺も多分体か心のどっちかが死んでいただろう。
でもぴるるは俺を置いて死んじまった。
かなり長生きする種類のインコだった筈なのに、病気で死んでしまった。
それから6年、俺はまだぴるるの事が忘れられないし、ぴるるの死が乗り越えられない。
もう何をするにも気力がなく、仕事なんかとてもできなかった。
さっさと死んでぴるるに逢いに行きたい気持ちが抑えられなくなってきたが──自殺はできない。
もし仮に死後の世界なんてものがあるんだとしたら、自殺っていうのは多分あまり良くない選択だと思う。
もしかしたらぴるると違うところへ行っちまうかもしれない。
だから俺はちょっと考えたんだ。
とりあえずただできるだけ生きて死ぬのを待とうと。
とはいえなんだか体もだるくって仕事をして暮らしてくみたいなことがもうできなさそうで。
そんなだらしない俺を嘲笑うかのようにSNSにスパムメッセージがばんばん届いて、俺はなんだかよくわからないけれど笑っちまった。
人間、本当にもうどうしようもなくしょうもない気持ちになると笑うんだなと思った。
他人のことなんかもうどうでもいいし自分のことなんてもうどうでもいい。
何もせずただ生きて、ただ死ぬためにはどうすればいいか。
そう思った俺は詐欺に手を染めることにした。
ぴるるが死んだっていう最悪の不幸に見舞われた俺を、こともあろうに食い物にしようとスパムを飛ばすクソ共。
俺はこんなにしんどいってのにいつもと変わらない平和な毎日送っているクソ共。
多分世界はクソに満ちている。
だから別に罪悪感はない。
詐欺の種類に心霊系を選んだのは詐欺だと立証しづらいからだ──と俺はどっかの記事で見た。
逮捕されるのは嫌だからなるべくヘイトを買わないようなやり方にした。
解決後の支払いなら詐欺と思わないだろうし、それは俺を信じる一押しになるだろう。
俺を信じるってことは解決するって信じてるってことだ。
そうなればただでさえ思い込み激しい馬鹿なんだから、心霊現象とやらも収まる筈。
とはいえまあうまくいくとは思ってはいなかったが。
どこのバカがこんなのに騙されるっていうんだ──俺はそう思っていた。
でもだめならダメでもう餓死でも何でもしてしまえばいいみたいなノリで、俺は
「それが妙にうまくいってるんだもんなあ」
稼いだきた金は莫大だが、それを何に使うというわけでもない。
だが金がある分には困らないだろう。
俺は今、三食ウーバー、あとはずっと家にいてPCをいじったり、残していたぴるるの動画をみたりして過ごしている。
ただ、少し寂しい自己矛盾も感じる。
心霊現象ってのが本当になくて、幽霊も本当にいないんだったら、俺が死んだあともぴるるには絶対会えないってことになる。
「なんだかそれはそれで寂しすぎるなぁ。ぴるるにあいてぇよ……」
俺は大きくため息をつく。
同時に、写真立てがかたりと音をたてた。
・
・
・
◆
秋島くるみが入居した部屋はかなりタチがわるい部屋だった。
過去何人もの人間がその部屋で死んでいる。
しかも不動産会社はその事実を告知しておらず、くるみは過去に何度も自殺が繰り返されている場所だとは全く知らされていなかった。
明確な告知義務違反だ。
最初の悲劇はとある殺人事件から始まった。
犯人は男で、当時付き合っていた恋人に別れを告げられて殺害。
しかもあろうことか男は恋人の死体と性交をした。
警察が男の部屋に踏み込んだ時も男は恋人の腐った死体と性交を続けていた。
その後は自殺事件が連鎖的に続き、早い者は入居後一ヶ月、遅くとも三ヶ月以内に命を絶ってしまうのが常であった。
そんな呪われた部屋はしかし、秋島くるみの入居以降犠牲者を生むことはなくなった。
彼女はその部屋で実に四年間を平穏に過ごし、やがて結婚を機に部屋を退去。
その後は地方で新しい生活を始めた。
秋島くるみはその部屋で何事もなく過ごした最初の入居者となった。
「その地域に今、負のパッションがコミットしてるんだよ!今そこは心霊災害が起きるリスクが上がってるね!!!」 埴輪庭(はにわば) @takinogawa03
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