第46話 繰り返されているんですよ

 この国の中でも、半魔法使いを受け入れている人とそうでない人の二つに分かれてしまっている。それは僕も薄々感じていたことだった。



「国が魔法使いを脅威だと感じていてな。せっかく和解を試みようと入国した魔法使いも先日酷い目に遭わされてしまった。命を受けた騎士が出向くより先に、打倒魔法使いの考えを持った国民によって」



城へ辿り着くことが出来ないほど、魔法使いは人間に恨まれている。

 僕は魔法使いの存在を知らずに育ったからか、彼らに対する先入観がない。だからこそ、罪のない魔法使いをも見境なく殺してしまう、それほどまでに人間たちの中で募ってしまった憎しみが、僕には理解できなかった。



「王子と同じ年頃の魔法使いだった。話も聞かず細切れに…」



セルメントと同じ、と聞いて嫌な想像をしてしまった。

 魔法使いとして生まれるか人間として生まれるかは運命の気まぐれだ。運命が異なっていたら、もしかしたらその魔法使いがセルメントだったかもしれない。

そう思うと、身体が恐怖に震えた。



「当然そんなことをされては、譲歩しようと歩み寄ってくれたあちらの国も激怒する。それで近々魔法騎士をいつもの倍送り込んでくるという話があってな」



傷つけられれば報復する。誰かのためと言いながら、新たな者を殺めては再び恨みを買っている。「これではきりがない」とオレリアンさんは嘆息した。



「いつからこんな風になってしまったんだろうな」


「人間は自分たちが使えない魔法を恐れ、一対多で不死の罪なき魔法使いを痛ぶった。魔法使いは領地を広げるため人間を殺した」



それまで興味を示さなかったラフィネさんが契約書から顔を上げて告げた。



「どちらが先であったかはこの私でも知りかねますが、結局それがずっと繰り返されているんですよ」



「そこで、だ」とオレリアンさんは笑顔を作った。そのサイクルを断ち切る最初の一歩として若い魔法使いが国へ訪れてくれたように、今度は自分たちが武器を先に下ろして話し合う姿勢を見せようと言うのだ。



「やっぱり馬鹿だったんですね」


「考えなしに言っているわけじゃない」



国を変えたいと願う騎士の間でテール・ドゥ・コントロレ国王の暗殺計画が水面下で進んでいるらしい。無論、そのことはセルメントに知らせていないという。



「俺のやろうとしていることが正義だとは言わない。しかしこのままでは下級の若い騎士たちがただ血を流すばかりで、見ていられない」



辛辣な話に言葉を失っていると、ラフィネさんがため息を吐いた。



「貴方々の遺体はどなたがこちらに?」


「引き受けてくれるのか?」



静かに頷くラフィネさん。この人が情で依頼を引き受けるなんて…



「ええ…だってこんな大金を手にしながら優雅に紅茶を飲める日が来るんですよ?。想像するだけで震えが。報酬、楽しみにしています」



ことはなかった。やっぱりお金か。千二百名、且つ騎士様ともなれば報酬はかなりのものだろうけど。

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