ここはソル・ブリジャールという世界のようです。でも今の僕にはそんなの関係ねぇです。何故なら現実に戻りたいからです。

 スレンダーメキシコサラマンダーから見下ろす眼下の光景は、絶望的なまでに地球じゃなかった。


 まず、一面金色の森が地平線まで広がっている。さっき見た金色の木の林、森、樹海が見渡す限りどこまでも、地平線の果てまで続いている。


「ソル・ブリジャールの世界には四つの都があってね、ここはその一つ。水の都エラクア、他にもファジャス、ブリッサ、ティエラの都があるよ」


 アゲハチョウがなんか説明してるようだけど正直そんな話を聞いている余裕なんかぜんぜん無い。


「あああああああああああああ帰せ離せ降ろせー」


 アゲハチョウに担ぎ上げられて物理的に距離を詰めだからはっきり見えるようになったけどスレンダーメキシコサラマンダーの鰓、鰓じゃなかった。遠目にも分かるくらいえらいもっさもさして見えたけど、枝分かれして立派な角になっている。枝珊瑚をぶっさしたようだ。そりゃ派手だわ。ゴージャスに見えるわ。


 眼下には恐ろしくでっかい、洋館の天井にぶらさがってるような豪華な三層シャンデリアが宙に浮いている。支柱の底から生える腕木は上から5本10本15本、の計30本。ろうそくを差す受け皿の部分にはこれまたでっかい皿が乗っている。最寄りの駅から駅くらいの直径がありそうだ。いっとくけど都心の東京から有楽町でも、上野から御徒町でもないからな?北関東の鉄道路線図での一駅だからな??


 そしてどこから湧いてるのかわからんけど全ての皿から、絶え間なく水が溢れていて、そのせいでシャンデリアの下部は濃い霧に覆われている。名前は忘れたけど落ちる水が霧になって散ってしまうから滝つぼがない滝、あんな感じだ。


 下部の皿は鬱蒼とした森と湖が、中段の皿はやはり森と湖、そして市街地がいい感じに三つ巴を描いて乗っている。上段の皿は小さな島に大きな館が一軒デンと構えてる。


 シャンデリアの支柱、つまり中心部分は、なんというか、白鳥の翼を12枚、花のつぼみみたいに重ねて包んだ外壁の中に、ガラスなのかなんなのか透き通った構造物がらせん状に聳えている。


 枝珊瑚の角を持つスレンダースレンダーメキシコサラマンダーは、中央にらせん状の一番下の広いスペースに降りた。やっぱり腹を叩きつけるようなどんくさい胴体着陸だ。


「ようこそトツクニ、ここは私の王宮だよ」


 ようこそじゃないんよ。僕は元の世界に帰りたいんだわよ。


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