嵌めやがったな! 嵌めた嵌めたあっはっはー

 なに、これ。


 ぱっと見、蝶々の浮彫の入った高価そうな腕輪だ。都心の貴金属店の奥の鍵付きショーケースとか美術館のなんとかの至宝展の目玉展示になりそうな逸品。


 だけどこれ変だぞ。継ぎ目がない。無いのにサイズジャストフィット。ぴったりしっくりな着け心地。

 いやちょっとこれどうやって外すんだよ????こんなもん付けたまま学校なんか行けないぞ????


 僕が腕輪をしげしげ見てどうなってるのか調べている間、


「業務ご苦労さま」


「お疲れ様です」


「トツクニが来てたんじゃ、数が合わなくて当たり前だったね」」


「我々トツクニを見たのは初めてでしたので」


 となんか報告しあっている。ちょっと何当事者抜きで話纏めようとしてんの????


「あの、すいません」


 と話に割って入った。


「あなたがトツクニ?に帰してくれる方なんですよね、ところでこれは貰って帰っていいものなんですか?外し方分からないのは流石に困るので教えてもらえますか」


 嵌められた腕輪を指さすと、美形のアゲハチョウさんとイトトンボは「なにを言ってるんだ」って吹き出しが似合いそうな顔で僕の顔をまじまじと見つめた。


「あっはっはっはっはっは」


 アゲハチョウさんが愉快そうに腹から声を出して高らかに笑った。


「それは主従隷属の腕輪だから、外せないよ」


 へ?


「その腕輪を付けた以上、君は私個人の奴隷だ」


 へ?奴隷?


 奴隷と言うのは大体想像するに過酷な肉体労働、口答えを許さない理不尽な命令、逆らったら鞭うち100回、とかああいう扱いを受ける立場ってことだよな????というかあなた勝手に僕の許可も取らずに嵌めましたよね??双方の合意がないということはこの契約は無効という事になりますよね??????美形でもやっていい事と悪い事ってもんがあるんじゃないですか?????


 そう詰めよろうとしたら、アゲハチョウが僕をひょいと肩に担ぎ上げた。


 へ?


「さ、君、王宮に戻ろうか」


 さっそうと言い放つと鰭の派手派手なスレンダーメキシコサラマンダーに飛び乗った。


 どんくさい着地同様、飛び方もどんくさかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る