洞窟を抜けるとそこは異世界でした。でも僕はまだ気づいてません

 明るい。


 そこにはみっしりと僕と同じくらい高校生から小学校高学年くらいの児童生徒、がひしめいていた。


 ぇ、なにここ。


 みんな透き通るような金髪で、紫や黄色や真っ赤な色のひらひらしたでっかいフリルがついたシャツを着ていて、シャツと同じ色の膝上スカートを履いている。


 岩窟を抜けると、そこは女子限定コスプレ撮影会場でした?


「ハイ次、腕を出して」


 参ったな、下手に映り込んで心霊写真沙汰になんてなったら企画ぶち壊しの一大惨事だ。ここは一旦戻って後日出直すか。僕は後ろ手に木戸を探した。


 ?

 手触りがおかしい。木の感触がしない。指先に伝わってくるのは冷たい岩肌だけ。


「残りあと15人だな」


 変だな。僕は木戸を出てから一歩も動いてないぞ?


 無理やり、身体をひねって後ろを目視すると、木戸がない。


 は?


「はい、お前さんで最後、と.......」


 いや待って僕ここから出てきたんだぞ?なんで木戸が消えてるんだよ??やばいやばいやばいやばいなにこれどういうことだよどうするどうしよう???そうだスマホスマホは、圏外?オフライン??なんでどうして??ここがどこだかわかんねーじゃねーかおい??ふざけんなコスプレ会場設営責任者!!


 木戸があったはずの場所で岩壁にしがみついて脳内で極限の責任転嫁を始めた僕に向かって誰がが叫んだ。


「うわぁ誰だお前!!!!!」


 しまった、見つかった!


 僕はとっさに両手を合わせて拝み伏すポーズをキメた。


「隷属紋の腕輪は50個しか発注してないのにまだ一人いるだって??数が合わないじゃねーか」


「え、一人多い??馬鹿言うな、連れてきた時はちゃんと50人だったぞ」


 僕が場違いな場所に出てきたことはわかった。そしてここで受け渡しする限定アイテムの個数と人数が合わない、とイベントプランナーが揉めていることも察した。


 なので、僕は助けを求めることにした。


「部外者が撮影妨害してすんません!!!すぐ帰ります!!というかここはどこですか!スマホ圏外で現在位置が分からんので僕は途方に暮れてます助けてヘルプミー!!!」




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