第36話 共に戦う覚悟
蓮華の市に響く喧騒の中、玲蘭と涼王は即座に戦いの準備を整え、ならず者たちが襲撃してきた現場へ向かって駆け出した。街の防衛は万全に見えたが、敵の数は予想以上に多く、各所で衝突が始まっていた。
涼王は剣を抜き、鋭い眼差しで前方を見据えていた。玲蘭もまた、その隣で自らの役割を果たすべく、冷静に状況を把握し、警備隊に指示を出し始めた。
「涼王陛下、どうか危険な前線には出ないでください。街の中心を守るために、ここで指揮をお願いします!」
玲蘭は必死に涼王を守ろうとした。しかし、涼王は彼女の言葉を無視するかのように、毅然とした声で答えた。
「玲蘭、私もこの戦いから逃げるわけにはいかない。皇帝として、この街とお前を守ることが私の役目だ」
涼王の強い言葉に、玲蘭は一瞬言葉を失った。彼がこの戦いに対してどれだけ覚悟を決めているか、そして彼女を守りたいという気持ちが伝わってきたからだ。
(陛下……)
玲蘭の心は揺れ動いたが、今は感情に流されるわけにはいかない。まずは目の前に迫る危機に立ち向かうべきだと自らに言い聞かせた。
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市の中心部に近づくにつれ、ならず者たちの姿が次々に目に飛び込んできた。彼らは粗暴な集団で、武器を手に商店や住民たちに襲いかかっていた。
「警備隊、散開して敵を追い払え!市民を守るんだ!」
玲蘭の指示で、警備隊は速やかに行動を開始し、ならず者たちを次々に制圧していった。玲蘭自身も剣を手にし、目の前に立ちふさがる敵を素早く倒していった。
「玲蘭、君も無理はするな」
涼王は彼女の背後で見守りながら、共に戦う覚悟を固めていた。
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しばらくして、二人は市の中心部にある広場へと到達した。そこでは、ならず者の**頭目**と思われる男が数人の手下を従え、まさに街を支配しようとしていた。
「これが、蓮華の市を仕切る警備か。大したことはなさそうだな」
頭目の男は冷酷な笑みを浮かべ、玲蘭と涼王に挑発的な視線を向けた。その背後では、ならず者たちが次々に市民を脅かし、混乱が広がっていた。
「この街にこれ以上手出しはさせない。すぐに立ち去るんだ!」
玲蘭は毅然とした声で男たちに命じた。しかし、頭目はその言葉を一蹴し、手にした剣を振り上げた。
「ならば、力ずくでその命令を聞かせてもらおうか」
頭目が攻撃の構えを見せた瞬間、涼王がすぐに剣を構え、玲蘭の前に出た。
「玲蘭、ここは私が引き受ける。お前は他の市民を守るために動け」
涼王のその一言に、玲蘭は驚きつつも、その言葉に従った。彼の背中を見つめながら、一瞬でも自分が彼のそばにいられることに安堵を覚えつつ、玲蘭はすぐに周囲の警備隊に指示を出し、避難を手助けする市民たちの方へ向かった。
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涼王と頭目の間には、鋭い緊張が走っていた。二人は互いに睨み合い、激しい戦いが始まった。頭目の動きは素早く、涼王もそれに負けじと応戦していた。剣と剣が激しくぶつかり合う音が、広場中に響き渡る。
「皇帝とやらが、ここまで来るとはな……。だが、私はこの街を奪い、全てを支配する!」
頭目はさらに激しく剣を振るったが、涼王は一歩も引かず、冷静に応戦していた。彼の動きには迷いがなく、玲蘭を守るため、そして街の人々を守るために戦っていることが感じられた。
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一方、玲蘭も避難する市民たちを守るために全力を尽くしていた。周囲には混乱が広がり、ならず者たちが次々に市民を襲おうとしていたが、警備隊と共にそれを阻止していた。
(涼王陛下が私たちを守ってくれている……私も負けられない)
玲蘭はそう自分に言い聞かせ、剣を握り締め、次々に敵を倒していった。
やがて、涼王が頭目との一騎打ちで優勢に立ち、頭目の剣を弾き飛ばした。その瞬間、頭目は膝をつき、敗北を認めた。
「……くそ、ここまでか……」
頭目は悔しそうにうめき声をあげたが、涼王は冷静に彼を見下ろし、静かに剣を収めた。
「これ以上の戦いは無意味だ。降伏して、街を去れ」
涼王の冷静な声が響き渡り、頭目はついに戦意を喪失した。
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ならず者たちが撤退していく中、街は再び静けさを取り戻しつつあった。玲蘭は、涼王が無事であることを確認し、安心すると同時に、今まで感じていた緊張が一気に緩んだ。
「陛下……ご無事で何よりです」
玲蘭が涼王に向かって声をかけると、涼王は微笑みながら彼女の方に歩み寄った。
「お前のおかげだ、玲蘭。お前がいなければ、この街も守れなかっただろう」
涼王のその言葉に、玲蘭は胸が熱くなった。彼の隣に立ち、共に戦ったことで、彼女の中には強い充実感と共に、涼王への想いがさらに深まっていくのを感じていた。
(私は……陛下のために、もっと強くなりたい)
玲蘭は心の中でそう決意し、涼王の隣で自分ができることをこれからも果たしていこうと誓った。
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