第18話 次なる波動

 涼王に陰謀の証拠を提出し、関係者が捕らえられてから数日が経った。宮廷内は一時的に静けさを取り戻し、陰謀の動きも止まったかに見えた。しかし、玲蘭の胸には拭えない不安が残っていた。


(これで終わるはずがない……)


 玲蘭は宮廷内の変化を敏感に感じ取っていた。陰謀が暴かれたことで、表面的には安定しているように見えるが、見えない場所で何かが動き始めているように思えたのだ。


 蒼斉もまた、玲蘭と同じように宮廷の内部で微かに感じる不穏な空気に気づいていた。涼王の命を受け、彼はさらなる調査を行っていたが、今のところ確実な証拠は得られていない。


「玲蘭様、どうやら私たちは次の動きを待たなければならないようです」


 蒼斉は静かに告げた。玲蘭もまた、焦らず、状況を見守るべきだと理解していた。だが、その中で次の危機がいつ訪れるのかという恐れが常に心の奥底にあった。


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 その夜、玲蘭は涼王の執務室に呼ばれた。宮廷内の情勢が落ち着いたように見える一方で、涼王もまた何かを考えているようだった。彼の表情は冷静だが、目には鋭い光が宿っている。


「玲蘭、お前も気づいているだろう。まだすべてが終わったわけではない」


 涼王は玲蘭に向かって静かに語りかけた。


「はい、陛下。表面上は静けさを保っていますが、裏では何かが動き始めているように感じます」


 玲蘭の言葉に、涼王は頷いた。


「その通りだ。宮廷内の陰謀は一時的に沈静化したが、これはまだ序章に過ぎない。次の波が押し寄せる前に、私たちは万全の準備をしておかなければならない」


 涼王の言葉には、これまで以上に慎重さと決断力が込められていた。玲蘭は彼の信頼に応え、次の危機に備えるためにさらなる努力を続ける決意を固めた。


「私は、どのような試練が訪れても、陛下をお守りする覚悟です」


 玲蘭の言葉に、涼王は微かに笑みを浮かべた。


「その決意を忘れるな。お前にはこれからも、私の側で宮廷内の動きを見守ってほしい」


 涼王の言葉に、玲蘭は深く頭を下げた。彼女は涼王のために、これからも全力を尽くす覚悟を改めて胸に刻んだ。


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 翌日、玲蘭は再び宮廷内の動きを観察し始めた。陰謀の兆しが再び現れる前に、何か手がかりを見つけるために、彼女は日々の任務に集中していた。


 そんな中で、玲蘭は宮廷内の高官たちの中に、微妙な緊張感が広がっていることに気づいた。かつては和やかに進んでいた会議も、今ではどこか張り詰めた空気が漂い、言葉の裏に隠された意味があるように感じられた。


(誰が次に動こうとしているのか……)


 玲蘭はさらに鋭い観察眼で周囲を見渡した。何か大きなことが近づいていることを肌で感じながら、彼女は一瞬たりとも気を抜かずに、次の一手を待っていた。


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 その日の夕方、玲蘭は蒼斉と再び会うことになった。彼もまた、宮廷内での緊張感に気づいており、何かが近づいていることを感じていた。


「玲蘭様、やはり私たちの読みは間違っていなかったようです。宮廷内でまた新たな動きがあるかもしれません」


 蒼斉の言葉に、玲蘭は深く頷いた。


「はい、私もそれを感じています。まだ表立った動きはありませんが、必ず何かが起こります」


 二人は、涼王に対する忠誠心を共に確認し合い、次の波に備えるための準備を進めることにした。玲蘭と蒼斉は、常に互いに信頼を置いて行動しており、今回も例外ではなかった。


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 その夜、玲蘭は宮廷の中庭で一人静かに考え込んでいた。涼王の側で働くことに誇りを持ちながらも、彼女は自分がこれから直面するであろうさらなる試練に対して、心の中で準備を進めていた。


(私は、涼王陛下を支えるためにここにいる……どんなに困難な道であっても、進むべき道を見失わない)


 玲蘭は空を見上げ、静かに息を整えた。彼女の心は揺るがず、次に訪れるであろう試練を迎える準備はできていた。


 その時、ふと背後に気配を感じた。玲蘭が振り返ると、そこには蒼斉が立っていた。


「玲蘭様、お一人ですか?」


 蒼斉は微笑みながら玲蘭に声をかけた。彼の表情は優しげだったが、目には鋭い観察力が宿っていた。


「はい、少し気を落ち着けたくて……」


 玲蘭は微笑みながら答えた。蒼斉は玲蘭の心情を察し、静かに彼女の横に立った。


「我々がこれから直面する試練は、これまで以上に大きなものになるでしょう。しかし、私たちなら必ず乗り越えられます」


 蒼斉の言葉には、揺るぎない自信と信頼が感じられた。玲蘭はその言葉に励まされ、さらに強く決意を固めた。


「そうですね。どんな試練があっても、私は陛下をお守りします」


 玲蘭の言葉に、蒼斉は静かに頷いた。


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 その後、玲蘭は再び自室に戻り、次の陰謀に備えるために再度情報を整理し始めた。彼女には、まだ何者かが裏で動いているという確信があった。そして、次の動きを見極めるためには、さらなる洞察力と冷静さが必要だと感じていた。


(私は、陛下を守るために……)


 玲蘭は心の中で何度も自らに言い聞かせ、次に訪れる波に立ち向かうための準備を整えた。

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