第17話 真実の告白
玲蘭は手に入れた証拠を持って、涼王の執務室へと急いでいた。宮廷内で進行する陰謀は、国全体に大きな影響を及ぼす可能性がある。そして、今まさにその背後にいる者の正体が明らかになりつつあった。
涼王の執務室に到着すると、蒼斉もすでに到着しており、玲蘭の報告を待っていた。涼王はいつもの冷静な表情を保ちながら、玲蘭に視線を向けた。
「玲蘭、何か掴んだか?」
涼王の静かな問いかけに、玲蘭は深く頷き、報告を始めた。
「陛下、私と蒼斉様は、高官の一人が隣国の使者と裏で密かに取引を行っている現場を確認しました。その内容は、隣国との貿易交渉を利用し、私利私欲を満たそうとするものです」
玲蘭は証拠として手に入れた文書を涼王に差し出し、続けて説明した。
「これらの取引は、我が国の利益を犠牲にして行われており、彼らはさらに権力を拡大しようとしているようです。今、行動を起こさなければ、国家全体に大きな混乱が生じる危険があります」
涼王は文書を慎重に目を通し、深い思索に沈んだ。その表情には冷徹な決断を下す者の気配が漂っていた。
「玲蘭、お前はよくやってくれた。この陰謀を未然に防ぐためには、早急に対処しなければならない」
涼王の声は冷静ながらも、その中には強い意志が感じられた。彼は立ち上がり、蒼斉に指示を出した。
「蒼斉、この証拠を基に宮廷内の調査を進め、関与している者たちを全て捕らえよ」
「かしこまりました、陛下」
蒼斉は深く頭を下げ、すぐに行動に移るべく部屋を出て行った。
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玲蘭は涼王と二人きりになり、再び緊張が走った。彼女はこの瞬間がどれほど重要なものであるかを強く感じていた。宮廷内の陰謀を暴くことは涼王の信頼に応えるための大きな一歩だが、同時に新たな試練が待ち受けていることも予感していた。
「玲蘭、これで一つの陰謀は明らかになった。しかし、このような動きが他にないとは限らない。お前には、これからも私の側で宮廷内の調和を見守ってほしい」
涼王は静かに玲蘭を見つめ、その目には揺るぎない信頼が込められていた。
「私がこうして国を守り続けられるのは、お前のように忠実で有能な者たちのおかげだ。玲蘭、これからも共に歩んでほしい」
涼王の言葉に、玲蘭は胸が熱くなるのを感じた。彼の信頼に応えたいという思いはますます強くなり、玲蘭は深く頭を下げた。
「陛下、私はこれからも全力でお支えいたします。どのような試練が待ち受けていても、陛下をお守りします」
玲蘭の言葉には、これまで以上に強い決意が込められていた。彼女は、涼王のために、そして国のために生きる覚悟を再び固めたのだ。
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その夜、玲蘭は自室で静かに窓の外を見つめていた。暗い夜空には星が瞬き、静かな風が彼女の頬を撫でていた。心の中では、宮廷内での陰謀がひとつ暴かれたことで、少しだけ安堵感が広がっていたが、完全に気を緩めるわけにはいかなかった。
(これで全てが終わったわけではない……)
玲蘭は、涼王の言葉を思い返しながら、さらに自分を引き締めた。宮廷内で一つの陰謀が明らかになったとしても、それがすべてではない。彼女はこれからも、常に次の動きに備えていかなければならないのだ。
(私は、これからも陛下を支える……そのために、もっと強くならなければ)
玲蘭は剣を手に取り、その刃を見つめた。自らの決意を再確認し、さらに高い壁に立ち向かう準備を整えるために。
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翌朝、玲蘭は再び宮廷内の動きを観察し、次の一手を考えていた。蒼斉が陰謀に関与した者たちを追及し、宮廷内での緊張は次第に高まっていた。しかし、その一方で、玲蘭は感じていた。この陰謀の背後には、もっと大きな力が働いているのではないかと。
(この動きは、まだ序章に過ぎない……)
玲蘭の中に、次第に強まる不安が広がっていった。彼女は自分の役割がさらに重くなることを予感しつつも、次に来るべき危機に備える必要があると感じていた。
涼王の信頼を裏切らないために――玲蘭は、自らの道を進み続ける決意を固め、さらに鋭い目で宮廷内の動きを見守っていた。
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