第13話 揺れる選択
玲蘭は涼王の言葉を胸に抱えながら、日々の生活に戻っていた。後宮は再び落ち着きを取り戻し、女官たちや妃たちも以前のように穏やかな日々を過ごしているように見えた。しかし、その平穏の中に、玲蘭は自分の心が揺れ続けているのを感じていた。
(私は今、涼王陛下を守っている……けれど、それが私のすべてではないのかもしれない)
涼王が玲蘭に示した「もっと広い世界」という言葉は、彼女の心に新たな疑問を投げかけていた。これまで玲蘭は、後宮を守ることに全力を注いできたが、自分自身の未来について考える余裕はなかった。しかし、涼王の言葉によって、玲蘭は自分の役割について深く考えるようになっていた。
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その日、玲蘭は秋蘭とともに後宮の庭を散策していた。静かな風が吹き、花々が優しく揺れている。
「最近、少し考え事をしているように見えますね、玲蘭様」
秋蘭がふと声をかけた。彼女は玲蘭の変化に気づいていたのだ。
「ええ……少し、考えることが多くて」
玲蘭は正直に答えた。秋蘭の前では、いつも心を開いて話せる。
「もしかして、陛下とのお話が関係しているんですか?」
玲蘭はその言葉に少し驚いたが、静かに頷いた。秋蘭には隠し立てする必要はないと思っていた。
「陛下が私に、『もっと広い世界を見てほしい』と言ってくれたの。それを聞いて、自分の役割について考え始めたの」
玲蘭はふと立ち止まり、庭の花々を見つめた。自分が今いる場所、この後宮が全てなのか、それともその外に何か別の道があるのか――彼女の心は揺れていた。
「玲蘭様はずっと、陛下と後宮を守るために尽力してきました。でも、陛下の言葉は、玲蘭様の未来にもっと可能性があることを示しているのだと思います」
秋蘭は優しく微笑みながら、玲蘭にそっと寄り添った。
「私も、玲蘭様にはもっと自由に生きてほしいと思っています」
玲蘭はその言葉に驚きつつも、秋蘭の真心を感じ取った。彼女はずっと自分を支えてくれていた。そして、玲蘭の未来を案じてくれていることに感謝した。
「ありがとう、秋蘭。でも、私はまだ自分の道を決められない」
玲蘭は静かに答えた。自分の未来について考えることは重要だと分かっていたが、今はまだ涼王と後宮を守ることが最優先だった。
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その夕方、玲蘭は再び涼王に呼ばれた。彼は、自室で静かに書類を整理しながら玲蘭の来訪を待っていた。
「玲蘭、来てくれてありがとう」
涼王は穏やかに微笑みながら、玲蘭に座るよう促した。彼の表情は柔らかかったが、その瞳には何かを決意しているような深い思いが見え隠れしていた。
「玲蘭、お前にはもう一つ、重要な任務を任せたいと思っている」
涼王の言葉に、玲蘭は驚きながらも真剣に耳を傾けた。
「何でしょうか、陛下」
「私は、後宮内だけでなく、宮廷全体の調和を保つために、お前に助けてもらいたい。後宮内のことはお前に任せているが、それ以上の役割を果たしてほしいと思っている」
涼王の言葉は、玲蘭が予想していたものを超えていた。彼女はただ後宮を守るために尽力してきたが、涼王は彼女にもっと大きな責任を託そうとしていたのだ。
「陛下、私は……そんな大きな任務を果たせるでしょうか?」
玲蘭は一瞬ためらった。彼女は自分が後宮を守ることに全力を尽くしてきたが、それ以上の役割を果たせるかどうか、自信がなかったのだ。
「お前ならできる。お前はすでに後宮を守り抜き、私の信頼を勝ち取った。お前にはその力がある」
涼王の言葉は玲蘭の心に強く響いた。彼は玲蘭の能力を誰よりも信じており、彼女にさらなる未来を見出していたのだ。
「陛下……」
玲蘭はその言葉を受け止めながら、深く考え込んだ。自分の役割が後宮を超えて広がっていることを感じ、彼女は新たな試練に向き合う決意を固めつつあった。
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その夜、玲蘭は自室に戻り、再び深く考え込んでいた。涼王が自分に託そうとしている役割は、後宮を超えた大きなものであり、彼女にとって新たな挑戦だった。
(私には、もっとできることがある……そう言ってくださった陛下の期待に応えなければならない)
玲蘭はその言葉を心の中で反芻しながら、心を強くしていった。彼女の未来には、まだ見ぬ道が待っている。涼王が示してくれたその道を、自らの手で切り開いていくことが求められているのだ。
(これからの道を選ぶのは、私自身……)
玲蘭は決意を新たにし、剣を手に取った。後宮を守るだけでなく、宮廷全体を見据えた新たな役割を果たすために、彼女は次なる一歩を踏み出そうとしていた。
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