第9話 真実の刃
玲蘭は、後宮の闇を照らし出すため、再び麗妃の動向を追っていた。涼王からの命を受け、彼女は慎重に動きながら、陰謀の証拠を掴む決意を固めていた。麗妃が皇后を失脚させるだけでなく、後宮全体を掌握しようとしていることは明らかだった。
(私は、この陰謀を止めなければならない……)
玲蘭の心には、強い使命感があった。涼王に信頼され、後宮を守るために選ばれた彼女は、その重責を果たすために動き続けるしかなかった。
その夜、彼女は再び麗妃の元へと足を運んだ。彼女が計画を進める動きが、明らかに何かを仕掛ける直前にあると感じたからだ。
麗妃の居室に近づくと、再び小さな囁き声が聞こえてきた。前回と同じように、麗妃が密かに誰かと話しているのだ。
玲蘭は息を殺し、物陰に身を潜めた。闇の中で、麗妃とその相手の姿が浮かび上がる。
「計画は順調よ。すぐに動き出せば、皇后を追い詰めることができる」
麗妃の声には、確固たる自信が漂っていた。彼女はこの陰謀が成功することを確信しているかのようだった。
「しかし、玲蘭という女官が動いていることが気になる。彼女が涼王に忠誠を誓っている限り、油断はできない」
相手の男がそう言うと、麗妃は小さく笑った。
「心配はいらないわ。玲蘭もいずれは私たちの計画に取り込まれるか、排除されることになる」
その言葉に、玲蘭は身震いした。自分が既に麗妃の標的になっていることを改めて実感したのだ。
(排除される……?)
玲蘭は冷静を保ちながらも、その言葉の重さを感じていた。麗妃は、彼女をも陰謀の一部として扱っている。自分がこの計画に反抗する存在である限り、命を狙われる可能性が高い。
「すぐに計画を実行する時が来る。涼王が動く前に、私たちの手で全てを掌握するのよ」
麗妃の声が、玲蘭の心に重く響いた。彼女は、これ以上の犠牲を出さないためにも、早急に手を打たなければならないと決意した。
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玲蘭は蒼斉の元へと急いだ。麗妃の計画が動き出す前に、彼に報告し、対策を講じる必要があった。後宮内の緊張が高まり、彼女は一刻の猶予も許されない状況に直面していた。
蒼斉は、玲蘭の報告を受けて眉をひそめた。
「麗妃が動き出すというのは、予想以上に早い……。我々も急がねばならない」
「はい。彼女が皇后様を狙っていることは間違いありません。しかし、涼王陛下をも巻き込む計画があるようです」
玲蘭はそう告げながら、蒼斉の反応を見守った。彼は黙って頷き、冷静に次の行動を考えているようだった。
「涼王陛下には、私が直接報告する。玲蘭、お前は引き続き、麗妃の動向を監視してくれ」
蒼斉はそう指示を出し、すぐに行動を開始した。玲蘭もまた、麗妃の陰謀を暴くため、さらなる行動を決意した。
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その夜、玲蘭は再び麗妃の動向を追っていた。彼女の計画が動き出す直前に、決定的な証拠を掴む必要があった。後宮の暗い廊下を歩きながら、玲蘭は心を静め、冷静に状況を見極めようとしていた。
やがて、麗妃が密かに動き出す音が聞こえた。玲蘭は音を立てずにその後を追い、ついに彼女が向かった場所を突き止めた。
そこは、後宮の奥深くにある、普段は使われていない古い部屋だった。中に入ると、そこには密かに集まった何人かの者たちがいた。麗妃の計画に賛同する者たちだ。
玲蘭は影に隠れながら、その様子を見守った。
「いよいよ計画を実行する時が来た。まずは、皇后を失脚させ、その後は涼王陛下をも掌握する」
麗妃はそう言い放ち、周囲の者たちに命令を下した。彼女の野望は、単なる後宮内の権力争いを超え、涼王そのものをも支配しようとしていたのだ。
(これが、彼女の本当の狙い……)
玲蘭は息を潜めながら、その場の会話を全て聞き取った。これで、麗妃の陰謀の全貌が明らかになったのだ。玲蘭は決意を新たにし、すぐに涼王へこの事実を報告するためにその場を離れた。
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涼王の前に立った玲蘭は、麗妃の陰謀の全貌を詳細に報告した。彼女の声には、揺るぎない決意が込められていた。
「麗妃は、皇后様だけでなく、陛下をも狙っています。彼女の計画は、後宮全体を掌握するだけではなく、陛下の地位を脅かすものです」
涼王は玲蘭の報告を静かに聞きながら、目を閉じた。彼の表情には、一切の感情が読み取れなかったが、その冷徹な思考が動き出しているのは明らかだった。
「麗妃の陰謀がここまで進んでいるとは……。だが、これで全ての準備は整った」
涼王は静かにそう言うと、玲蘭に向かって微かに笑みを浮かべた。
「玲蘭、お前の役目はここで終わりではない。お前には、最後の仕上げを任せる」
その言葉に、玲蘭は胸の中で新たな使命を感じた。涼王は彼女に信頼を寄せており、この陰謀を打ち破るための最終的な任務を託そうとしているのだ。
「私は何をすべきでしょうか?」
玲蘭は冷静に問いかけた。涼王はその目を細め、静かに答えた。
「お前には、麗妃を捕らえる役目を任せる。私が動けば、後宮全体に混乱が広がる。だが、お前ならば、静かにこの陰謀を終わらせることができるだろう」
涼王の言葉には、玲蘭への絶対的な信頼が込められていた。彼女はその重責を受け入れ、静かに頷いた。
「承知いたしました。私が必ず、麗妃の計画を止めてみせます」
玲蘭の決意は固く、後宮に渦巻く陰謀を打ち破るために、最後の一歩を踏み出す準備が整っていた。
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