第8話 動き出す運命の糸
麗妃の元を訪れた後、玲蘭は自室に戻り、一連の出来事を振り返っていた。麗妃の態度には、明らかに何かを隠している様子があったが、具体的な証拠を掴むことはできなかった。後宮内の権力争いは、表面上穏やかに見えるが、その裏では複雑な陰謀が渦巻いているのだ。
(麗妃が皇后に対する陰謀の黒幕なのか……)
玲蘭はふと立ち上がり、巻物に記された他の名前を見つめた。まだ全ての人物を調査したわけではなく、真相にたどり着くにはさらに深い捜査が必要だった。
その時、ふいに扉が軽くノックされた。玲蘭が扉を開けると、そこには蒼斉が立っていた。
「蒼斉様……」
彼の真剣な表情に、玲蘭は何か重大な知らせがあることを感じ取った。
「玲蘭、急ぎの知らせだ。後宮内で麗妃が何者かと密会しているという情報が入った。お前にも同行してもらいたい」
「麗妃が密会を……?」
玲蘭は驚きながらも、すぐに行動を決意した。もし麗妃が陰謀に関与しているなら、これがその証拠を掴む絶好の機会かもしれない。
「わかりました。すぐに参ります」
玲蘭は剣を手に取り、蒼斉に従って後宮の奥深くへと向かった。
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夜の後宮は冷たく静かで、どこか不穏な空気が漂っていた。二人は足音を立てないように慎重に歩みを進め、麗妃がいるとされる場所へと向かった。
やがて、小さな離れにたどり着いた。そこには薄暗い明かりが灯り、中から誰かの話し声が漏れてきた。玲蘭と蒼斉は慎重に物陰に隠れ、様子を窺った。
(あの声……)
玲蘭は耳を澄まし、麗妃の声を聞き取ろうとした。中には確かに麗妃がいる。そして、その相手もまた、後宮内の高位の者のようだった。
「計画は順調に進んでいるわ。皇后が失脚すれば、私たちの手で後宮を掌握できる」
麗妃の声には冷たい確信が込められていた。彼女はまさに、後宮内の陰謀を進める中心人物だったのだ。
「だが、涼王陛下がどう動くかが問題だ。彼は決して油断ならぬ相手……」
相手の男が低い声で答えた。その言葉からは、涼王を警戒している様子が伺えた。
(やはり……麗妃が黒幕だったのか)
玲蘭は心の中で確信を深めた。皇后を襲った陰謀の中心には麗妃がいた。そして、涼王に対しても何らかの計画を進めている可能性がある。
蒼斉は玲蘭に目配せし、二人は静かにその場を離れた。すぐにこの情報を涼王に報告し、対策を練る必要があった。
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「麗妃が……」
涼王は、報告を受けた後も冷静だったが、その目には鋭い光が宿っていた。後宮内で繰り広げられる陰謀に対して、彼の感情が揺れることはなかった。
「皇后を襲ったのも、麗妃の計画の一環であることは明らかだ。しかし、彼女が本当に狙っているのは、皇后の失脚だけではないはずだ」
玲蘭はそう言いながら、麗妃のさらなる目的に思いを巡らせていた。後宮の権力争いは、皇后を失脚させることで終わるものではなく、その先にある大きな野望が絡んでいるに違いない。
「麗妃が後宮を掌握すれば、涼王陛下に対しても反旗を翻す可能性があります」
蒼斉が冷静に分析を加えた。涼王は静かに頷き、目を伏せた。
「彼女を捕らえるには、さらなる証拠が必要だ。私が動けば、事態が大きく動く。だが、その前に確実な手を打たねばならない」
涼王の言葉には、慎重な判断と冷徹な決意が込められていた。彼は一切の隙を見せず、後宮内での権力争いに対しても確実に対処する構えを見せていた。
「玲蘭、引き続き麗妃の動きを監視し、さらなる証拠を掴んでくれ」
玲蘭は涼王の言葉に頷き、任務を受け入れた。彼女はこの後宮内で渦巻く陰謀の中心に立たされていることを再び実感し、自分の役割の重さを深く理解していた。
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その夜、玲蘭は再び麗妃の動きを追うために動き出した。後宮内での陰謀がいよいよ最終段階に差し掛かろうとしているのを感じながら、彼女は自らの決断を固めていた。
(私は、この陰謀を必ず止めなければならない……)
そう心に誓い、玲蘭は一歩一歩、確実に自分の役割を果たしていく決意を胸に抱いていた。
後宮の闇は、さらに深くなっていく。しかし、その中で玲蘭は光を見出すために進み続ける。
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