第7話 隠された真実
巻物の発見から数日が経過した。玲蘭と蒼斉は、陰謀の背後に潜む者を追うために密かに調査を進めていた。巻物に記されていた名前や記号は、後宮内の権力者たちと何らかの関係があると見られていたが、まだそれを結びつける決定的な証拠には至っていなかった。
「玲蘭、この巻物に書かれている人物たちの動きは、最近どうだ?」
蒼斉が玲蘭に問いかけた。彼は後宮内の警備を強化しながらも、玲蘭と協力して陰謀の真相を探ろうとしていた。
「表立った動きはありません。ただ、後宮内での会話や噂から察するに、何か大きなことが進行している気配はあります」
玲蘭は慎重に答えた。後宮内の女官たちや役人の間では、何かが動いていることを感じ取っていたものの、それが具体的に何なのかはまだわからなかった。
「陰謀の首謀者が皇后を襲ったのは、彼女を失脚させようとしているからだ。だが、その目的が単に皇后の地位を奪うことだけではないように思える」
蒼斉は巻物を見つめながら、眉をひそめた。
「そうですね……。この陰謀は、後宮の力関係を根底から変えようとしているように感じます」
玲蘭もまた、蒼斉の考えに同意した。皇后を失脚させれば、後宮内の権力バランスが崩れ、それに乗じてさらなる陰謀が進行する可能性が高い。
「蒼斉様、まずは巻物に書かれている人物の動向を詳しく調べる必要があります。彼らの中に、この陰謀を進めている者がいるはずです」
玲蘭は強い決意を込めて言った。蒼斉もまた、頷きながら彼女の提案に同意した。
「そうだ。だが、相手は簡単には尻尾を出さないだろう。慎重に動かなければならない」
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その夜、玲蘭は自室でひとり、巻物に記された名前を整理しながら考えを巡らせていた。名前の中には、後宮の高位の妃や女官、さらには皇帝に近しい者たちも含まれていた。
(誰が本当に黒幕なのか……)
玲蘭はその考えに没頭していたが、ふと、廊下の向こうから足音が聞こえた。それは不自然なほど静かで、まるで何かを隠すような足取りだった。
(誰かが来る……)
玲蘭はすぐに警戒し、剣を手に取った。部屋の扉の向こうで足音が止まり、次の瞬間、扉が静かに開いた。
現れたのは、涼王だった。
「陛下……」
玲蘭は驚きの声を上げた。涼王がこんな時間に、そして一人で玲蘭の部屋を訪れるとは予想もしていなかった。
「玲蘭、今夜のこと、外に知られてはならない」
涼王は静かに言いながら、部屋に入ってきた。彼の冷徹な瞳は、何かを悟っているように見えた。
「どういうことですか?」
玲蘭は動揺を隠しつつ、涼王に尋ねた。
「後宮内で、お前が巻物を見つけたことが一部の者たちに知られている。奴らはお前を危険視し、今後さらに厳しい目を向けるだろう」
涼王の言葉に、玲蘭は自分がすでに陰謀の標的になっていることを悟った。
「では、私はどうすれば……?」
「その陰謀を解き明かすのはお前の役目だ。だが、そのためにはさらに危険な場所に踏み込まなければならない」
涼王は冷静にそう告げた。彼の声には揺るぎない信念が込められており、玲蘭に対して確かな信頼を寄せているのが伝わってきた。
「陛下……私にできるのでしょうか」
玲蘭は一瞬、ためらいの色を見せたが、涼王の瞳は彼女に力を与えていた。
「お前ならできる。お前の強さを、私は信じている」
その言葉に、玲蘭は心の中で固い決意を抱いた。自らの運命を受け入れ、後宮を守るために戦う覚悟を固めた。
「わかりました。私はこの陰謀を解き明かし、陛下の期待に応えてみせます」
玲蘭の力強い言葉に、涼王は短く頷いた。そして、彼は振り返ると、再び廊下へと歩き出した。
「今夜のことは、誰にも知られるな。お前の安全のためにも」
涼王はそう言い残し、闇の中に消えていった。
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翌朝、玲蘭は巻物に記されていた名前の一つに注目した。その名前は、後宮の高位の妃である **麗妃(れいひ)**。彼女は皇后に次ぐ地位を持ち、後宮内で多大な影響力を持っている人物だった。
(麗妃……彼女が何か関わっているのか?)
玲蘭は早速、麗妃の居所に向かうことを決意した。彼女は、麗妃がこの陰謀に関与しているかどうかを確かめるため、直接話を聞くことにしたのだ。
麗妃の居室に着くと、女官たちが丁寧に迎え入れてくれた。彼女は気品溢れる美しい姿で、玲蘭を迎えた。
「玲蘭様、ようこそいらっしゃいました。何かご用でしょうか?」
麗妃は穏やかな笑顔を浮かべながら問いかけてきた。その態度は、冷たいながらも余裕を感じさせるもので、彼女の力強さが滲み出ていた。
「少し、お話をお伺いしたいことがあります」
玲蘭は慎重に言葉を選びながら、麗妃に問いかけた。
「最近、後宮内での陰謀が噂されています。皇后様に対する襲撃もありましたが、何かご存知ではないでしょうか?」
麗妃は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに微笑みを取り戻した。
「玲蘭様、後宮では常に何かが動いています。陰謀が渦巻くのは珍しいことではありませんわ」
その言葉には、どこか含みがあった。まるで、麗妃自身が何かを知っているような印象を玲蘭は受けた。
「しかし、最近の出来事はただの噂に過ぎません。後宮の秩序は保たれていますし、皇后様も無事です。それ以上のことは私にはわかりかねます」
麗妃の言葉は一見正論のようだったが、玲蘭にはその裏に隠された意図があるように思えた。
(麗妃は何かを隠している……?)
玲蘭はそれ以上追及することはせず、話を切り上げることにした。今、彼女を強く追い詰めるのは得策ではないと感じたのだ。
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玲蘭は自室に戻り、考えを巡らせていた。麗妃の態度からは、何かを隠している気配があったが、決定的な証拠は得られなかった。
(もっと、深く調べなければ……)
玲蘭は巻物に記された他の名前にも目を向け、さらなる調査を進めることを決意した。後宮内の陰謀は、まだその全貌を見せていない。だが、彼女は涼王の言葉を胸に、自らの運命を切り開くために動き続ける決意を新たにしていた。
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