第14話

亮太たちは三年一組の教室に集められていた。黒板上にある丸時計は、十一時半を指している。昼食の前にミーティングを取るらしい。

 教室の中心の席に集まって座っている亮太たちの前に、梶井が現れた。続いて釜本が現れ、さらに続々と生徒が入って来る。

 全員が教室に入った所で、釜本の隣にいた生徒が一歩前に出た。

「向影学園、サッカー部三年、赤坂健太郎だ。よろしく」

 サッカー部のキャプテン、赤坂が挨拶をした。

「そんなこと、知ってるよ」

 蓮が言う。蓮はポケットに手を入れ、机の上に足をのせていた。

「静かにしろ。お前たちが再入部するにあたって、再びチームメイトになるんだ。挨拶は大切だ」

「あれは石頭超えて、鉄頭だな」

 蓮が自分達だけに聞こえる声で言った。その後部員たちの自己紹介が続く。と言っても、言うのは名前とポジションくらいだった。高校に入学してから直哉がサッカーを辞めるまでの短い間だが、亮太たちにすれば元チームメイトである。そのため、知っている情報が続き、退屈な時間が流れた。

 総勢二十人程度の紹介を終える頃には、亮太たちは誰も話を聞いていない。博明は机に落書きをし、優太は机の下でゲーム。拓実は睡魔と世紀の大決戦を行っていた。

赤坂は亮太たちの態度に、苦笑しつつ眉間に皺を寄せる。だが実力があるのが亮太たちである以上、何も言えないようだった。

その後、亮太たちの自己紹介となるも、

「うっす」

「ちっす」

「よろしく」

 と一言であっという間に終わった。

 すると不満げな顔の赤坂だったが、青田を筆頭に部員はそさくさと部屋を出ていく。

「あいつらは今から練習だ。合流は昼からになる」

 釜本がそう言うと、赤坂らの後を追って教室を出て行った。

 残った梶井は教壇に登る。

「部員たちとの顔合わせが済んだ所で、今からは君たちにやってもらうことを確認していく」

 そう言うと梶井はチョークを手に取ると、黒板に大きく文字を書いていく。

「君たちの目標はただ一つ、グランドリーグ優勝だ」

 梶井が優勝の文字の下に、二重線を引き黒板を叩いた。

「まず大会について話す。本番は今から十九日後」

「あと二週間ちょっとしかないのかよ」

 優太が言った。ようやく睡魔に打ち勝ったらしい。

「二週間だぁ」

 それに博明が反応する。が落書きをする手は止まらない。視線も、見ず知らずの先輩の机に向けられたままだった。

「そうだ。あと十九日で、お前たちはグランドリーグを優勝してもらう。大会は二日間。一日目に一回戦と準決勝、勝てば二日目に決勝だ」

 そこで梶井がリモコンを操作すると、黒板の上からスクリーンが現れる。その上に、プロジェクターから画像が映し出された。

「これが会場だ。場所は大阪の海沿い。画像では見にくいがこのコートの奥には、大阪湾が見える。コートは人工芝で、選手や関係者はみんな写真にも写っているこのホテルに泊まる」

「でっけぇ」

「高級ホテルじゃねぇか」

「朝食はビュッフェかなあ」

「高級ホテル、ビュッフェ」

 各々が感嘆の声を漏らした。

 そこで梶井が咳払いをする。

「いいか。観光に行くわけじゃない。君たちは全国の強豪を倒し、優勝しに行くんだ。そのことを忘れるな」

 そう言われて、亮太たちの顔は引き締まる。

「後の事は、練習しながら説明していく。その前に腹ごしらえをしておけ。昼からの練習は午前とは比べ物にならないぞ」

 梶井が言うと、数名から悲鳴が上がった。

「それから、亮太と裕介、それから優太は私と共に来て欲しい。今のサッカー部の実力を判断してもらう」

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