第13話
亮太たちに休憩を言い渡し、釜本は職員室で谷崎、梶井と話し合った。
「本当に、大丈夫なのか」
谷崎が釜本に聞く。谷崎と梶井は職員室から練習の一部始終を眺めていたが、谷崎はその間ずっと不安を募らせていた。
釜本の表情も渋いものである。
「正直言って、期待外れです。確かにそれぞれ優れている所はありますが、それも想像の域を出ません。練習態度もまるでなってないし、あれが本当に元日本一のメンバーだとは思えません」
「全く。大会まで時間が無いというのに」
谷崎がそう漏らした。
「個人別の評価は?」
梶井が釜本に聞く。
「長沼亮太、町田慎司、谷元裕介あたりは戦力になりそうですが、他は使い物になりません。長後博明は全てのプレーを指示しなければ動かないし、榊原優太は真面目に練習せずゲームばかりです。梅ヶ丘蓮は真面目にやっていますが………」
「なんだ?」
「いや、彼がプレーしていると女子生徒たちが見に集まって来て他の選手に影響します。特に栗平拓実はただでさえ、体力もなく足元の技術もないのに、女子生徒ばかり気にしていて練習になりません」
「なんだそれは。本人が真面目に練習しているならいいじゃないか」
谷崎が言った。
「いえ、あの面はチャラチャラとしていて、ろくな奴じゃありません」
釜本が断言する。なぜか鼻息が荒くなっていた。
「それはただの偏見というか、嫉妬ではないのか」
谷崎が釜本の目を覗き込む。校長に疑いの目を向けられ、筋肉質な釜本がゴツイ首をすごい勢いで左右に振った。
そこで梶井が口を開いた。
「私もここから練習はすべて見させてもらった」
そこで二人の視線が梶井に戻る。
「全員合格だ」
「なに」
「本当に大丈夫なのか?」
釜本と谷崎が同時に口を開く。
だが梶井は黙って釜本からバインダーを受け取ると、全員の欄にチェックをつけた。
「問題ない」
谷崎と釜本が梶井の表情を覗き込むも、梶井は真っすぐコートの上に立つ選手たちを見ていた。
グラウンド上では慎司が拓実を追いかけ、氷水をかけようとしている。
彼らはコートに立つというより、遊んでいるだけなのかもしれない。
梶井はどこか肩透かしを食らった気になるが、それでも生徒を見続けた。
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