第18話 初魔物討伐はスライム!

《レンギア王国9日目ーケルンジリア9日目ー》


 ポニョン♪、ベチョン♪

 プニョン♪、プニョン♪、ポニョン♪

 ベチョン♪、ベチョン♪


 2メートルほど目の前を、ポニョン・プニョン・ベチョンと会話をしているように、5体のバスケットボールサイズの水まんじゅうが飛び跳ねている。

 透き通った水色のスライム。

 某ゲームのように目と口がついていないけど可愛い。

 ベチョンで地面に落ちたゼリーのようにぺっちゃんこになるけど、すぐさまプルプルプルと球体に戻る。

 

「ヴィヴィオラさん、あれがスライムです。まだ大きさ的に強くなさそうですね」

「いや、十分に大きくない?」

「ハハハ、大きい奴は馬ぐらいの大きさですよ」


 ジェイクさんは「なので弓で狙ってみましょう」と言いながら地面に木の枝でスライムを書いていく。

 今、私とジェイクさんは茂みに隠れて目の前の透明なスライムを倒そうとしている。

 動いているのは難しいので、跳ねて降りた所を狙う算段だ。

 イラストの真ん中に一点協調されている箇所。

 

「一番濃い箇所をねらってください。そこがスライムの核。心臓みたいな場所です」


 透明なのに濃い場所ねぇ……目をジッと凝らしてみる。

 確かに、ビー玉ぐらいの大きさの濃い箇所がある。

 

「うーん、ココかな?」


 弓をキリキリと引き、スライムに向かって矢を放つ。

 短い射程なら、まっすぐ的に当てれるようになった。

 弓の長所である遠距離攻撃は、まだ無理。

 放った矢が、核の横を貫通して、地面に刺さった。

 ビシャ!

 水風船が割れたように地面に形を崩して広がっていく。


「まずまずですね。核は外しましたが、HPが削れたようで倒せましたね」

「やった! 初討伐!」


 ジェイクさんと手を合わせて喜ぶ。

 ロング副団長は、少し不機嫌に他のスライムを指さす。

 残り4体のスライムは、仲間がやられたことに気づいたのか突然くっついてブルブルと震えだし一つにまとまった。

 そして、バッと投げ網のように広がって私とジェイクさんに襲いかかる。


「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!」

「わぁぁぁぁぁぁあ!!!」


 私とジェイクさんが叫ぶ。

 ロング副団長は、腰の帯剣を抜き、一振り。

 ヒュッ!

 スライムがキラキラと消し飛んだ。

 剣で斬るというより粉砕してる? どうなってるの?

 風圧のお陰で、頭から死んだスライムをかぶらなくて済んだのはありがたい。


「すっ、すいません。ロング副団長……。ヴィヴィオラさん、スライムは弱そうに見えますが、成長したり集合体になれば結構強いので気を付けて」

「うん……いま、実感した」

「先ほどのようにスライムは捕食するのですが、皮膚を溶かしたりと意外に痛いんですよ」

「溶かすって、痛いですまないような」

「引っ剥がして、地面に投げつければOkですが、全身をスライムに取り込まれれば逃げる術がないかも」

「その時は?」

「その時はーーーー死? まぁ、仲間がいれば大丈夫です。ソロの時は危ないですね」

「よかった……ぼっち逃走じゃなくて」

「ぼっち何?」

「い、いや! なんでもないよぉ……」


 スライムって強いイメージないけど、大きいやつは危ないと。

 初めに倒したスライムに近づいて、眺めてみる。

 浜辺に打ち上げられたクラゲのようだ。

 ゼラチン質なスライムを持ち上げようとすると、静止された。


「ヴィヴィオラ様、こちらを使ってください」


 ランドルーさんが、分厚い皮の手袋を渡してくれた。


「そのまま触ると皮膚が溶けて指紋がなくなるからね」

「そうか、そうだよね。わぁ、結構ずっしりくるね。あれ? この小さい石ってゴミ?」

「これは魔石です。王都の公園で売っていたくず魔石です」


 ランドルーさんがくず魔石と言った、透明な直径5ミリぐらいの魔石をダガーで取り出した。

 

「神斗君! こっち来て! 初めての魔石だよ」


 初めて魔物討伐に行くと聞いた神斗君の訓練官が、一緒に行けと言ったのでついてきてくれた。

 訓練官さんがサボリたいだけって神斗君が言ってたんだけど、私としては良かったんじゃないかと思う。

 最近、訓練が厳しいのか神斗君が辛そうなんだよね。

 朝、晩の食事時に顔を合わすのだけど、ボーッとしてるんだ。


「おめでとうございます。ンフフ」

「わぁ、酷い! 笑ったね! 生き物殺すの初めてだったんだから!」

「ごめん、ごめん。ンフフ。そ、それで、これは拾った方が良いものなのですか?」

「う~ん、そうですね~。魔石はギルド登録していたら売ることもできますね。バッグに余力があれば持っていくのもいいと思います。でもくず魔石はギルドでは売れないので、直接くず魔石屋さんに売る感じになるかな」


 このくず魔石でお金を稼ぐのは難しそう。


「初めての魔石だから、持って帰る!」

「そちらの世界には魔石とかないんでしたっけ」

「そうそう、魔石・魔物なんかいないよ」


 初めての魔石。

 これで水とか火がでるのか。

 どうやって? まず色が違う。


「ランドルーさん、お城でお風呂沸かすときに使っているのと一緒?」

「お城で使っているのが魔石なら同じですが、これはまだ刻印されていないので魔法を呼び出せません」

「あらら……そうなんだ。刻印? が必要なのか」

「くず魔石はMP1しかないので生活魔法1回ですね。ですので、価格が合わないんですよね。刻印するにもお金がかかるので」

「魔石使い終わったら?」

「真っ黒く変化して、数分後に粉々になります」

「へぇー、魔石って使い捨てなのか」


 神斗君は、ズボンのポケットから魔石を取り出した。


「ヴィヴィオラさん見て、俺のは凸凹している」


 ほんとだ、私のつるんとした魔石と見比べる。

 魔石は球体を少しつぶしたような形をしている。

 神斗君が見せてくれた魔石は小さいのに明らかにわかるほど凸凹している。


「確かに凸凹してる! これ偽物だ!?」

「いやぁ……フフ。今、そいつから取ったし」


 指を刺した方を見るとスライムだったものが数体地面にダラッと球体から崩れて動かなくなっている。


「こいつから、取ったんだけど。他のやつより色がおかしくて。ほら、核が赤いでしょ」

「これは、スライムの上位種みたいですね」

「レアスライム! スライム〇スだ」

「強いのは大きくなるだけと思ったら、色も変わるのがあるのか……進化の仕方が色々あるんだ」


 突然、ロング副団長が剣を抜いて、その剣で森奥を指した。

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