第7話 気が重い歓迎パーティー
壁という壁が金細工で装飾してある豪華な部屋。
リーナさんにエスコートしてもらい部屋に入るとざわめきが大きくなる。
ここにいる全員の目がこっちを見た。
もう! 魔人族ってなんなの! こんなに可愛いのに! イラストレーターさんに蹴られてしまえ!
「やはり、ヴィヴィオラ様が一番ですわ」
リーナさんはなんか自慢気だけど。
部屋には長いテーブルに二十数人分の椅子がズラリと並んでいる。
席は決められているようでリーナさんは着席した私の後ろに立つ。
今空いているのは、国の地位の高い人たちの席だろう。
「まだ? コルセット、苦しいんだけど……」
「こんなんじゃ、何にも食べれないじゃん。なんでこんなの付けないといけないわけ? カミトは楽でいいよねー。カミトもつけてみなよ」
保護者のようなカミト君はため息をついている。
ツトムさんは、テーブルのカトラリーの多さにオドオド。
コルセットが苦しいのは理解、でも我慢するよ大人だもん、私。
リーナさんが耳打ちする。
「私、ヴィヴィオラ様でよかったです」
「フフフ、余り物に福があった? でも、みんな環境の違いに驚いているだけだよ」
リーナさんは「そうなんですかね」とブツブツ呟いている。
その時、扉の近くにいたナウンサーがベルをチリンとならした。
その音が合図となり、着席していた全員が一斉に立ち上がる。
日本人の4人と私は、遅まきながら立ち上がった。
扉が開き、王様を筆頭に王族の人、神官長が入ってきた。
最後に現れたみなさまが席に着き、上座に立った王様がワイングラスをかかげ言った。
「召喚に応じてくださった方々に、そしてわが王国の更なる発展に乾杯」
歓迎パーティーが始まった。
召喚自体、突然に王様が決めたらしく、歓迎パーティーの参加はごく身内でといったところ。
今朝の早朝に夢で女神さまからお告げがあり、『今、召喚すると大陸統一が叶う』と周りをたたき起こすように叫んだようだ。
そして、お告げの通り勇者カミト君が召喚されたので「勇者を引き当てた、儂、偉い」と髭をいじりながら何度も言っている。
主な参加者は王、王妃、側妃、第一王子夫妻、第二王子夫妻、第四王女、第五王子。
あとは神官長、宰相、騎士団長に多分地位の高そうな文官数名。
着席フルコースとは思わなかった。
立食ならコソッと端に隠れることができたのに。
地位の高い人から座っているので、私の周りは文官達に囲まれている。
文官位なだけで上位貴族。
向かいの席は伯爵さま、斜め向かいは侯爵さまとリーナさんが教えてくれる。
両隣も伯爵さまや次期侯爵さまらしい。
王族に囲まれるよりはましだよね。
私は乾杯のワイン以後、お酒は好きだけど強くないので冷たい水を貰うことにした。
他のみんなは、召喚に納得できるわけもなく不満が顔に現れているけど今はこの状況を受け入れているらしい。
ワインを手になんとかその場の雰囲気に合わせている。
高校生の3人とツトムさんはつがれるまま、ワインを飲んでいるのを見て、この世界は飲酒年齢制限なんてものあるのだろうか? と思った。
「なんと、勇者様の国では平和であると、うらやましいですなぁ」
「我が国もなんとしてでも統一して、平和を享受したいものですな」
ハッハッハッと大きな笑い声が聞こえる。
上座の方では、盛り上がっているみたい。
もう、大陸統一を隠してないのかな。
日本は確かに平和なんだけど、私達、テロリストに殺されたんだけどな……みんなは知らないだろうけど。
召喚された際、魔がどうとか言っていたけどそんな話まったく聞こえてこない。
こちらは静かに食べ進めてるけど私はなんか不躾な視線を感じて居心地が悪い。
私の種族である魔人族ってどんな位置づけなの?
ニコッと笑いながら自然に見える程度に周りを見渡す。
うーん、見られているのは私だけではないみたい。
王族のみなさんは、チラチラと私たちを品定めしているみたいだ。
コソコソとなにかを話、相槌をうっている。
なんだろう嫌な感じ……。
黙って食事をしているのもなんなので、今後の為に情報収集といきましょうか。
「あの~、私の種族、魔人族っていうみたいなんですけど、どんな種族かわかりますか?」
向かいの席の中肉中背の伯爵さまに聞いてみる。
リーナさん情報だと貴族の中でも、領民思いのまともな人らしい。
「え? 君の種族なのに知らないのかい?」
目を見開くぐらいびっくりされた。
えぇそうですよ、私も元人族でしたからねとは言わないでおく。
斜め前の細身の侯爵さまは、横柄な態度で答えてくれる。
「ハッ! そうだな。魔人族っていうのは、野蛮なやつらだよ。大柄で力や魔力が強くてさ、モノづくりが上手いチビもいるか。どいつもこいつも言うことを聞かないやつらだよ」
侯爵さまはグイッとワインを飲み干し、テーブルへ力強く置く。
向かいの伯爵さまは、優しい口調。
「人間は人族。それ以外はまとめて魔人族という括りになっているんだよ。君は魔人族の中のビーストだね」
「まとめてっていうと私みたいな姿じゃない人もいるということですか?」
ファンタジーでいうエルフとかドワーフとかいるのだろうか?
獣人=ビーストが居るんだから、まぁ、いるよね。
「あーいるいる、エルフとかドワーフとか魚人とか。あとリザードマン、虫人。それにハーフもいる。きりがないな」
「ムシビト?」
わぁ、虫は駄目だぁ。
特に小さくて噛みつくやつ! あと、やっぱり、ゴ、ゴ、ゴキーー。
「羽根が生えた1メートルぐらいの種だよ。花の蜜が大好きで楽しいことしかしない」
虫というよりは、妖精みたいなものかな?
侯爵さまの空になったワイングラスにワインを注いでもらうように給仕にお願いする。
「寿命が長いやつが多いのも気に食わない」
「そうだね。人族の二倍は生きる種が普通だね。短くて多産種もいるけど」
「寿命が長い……?」
魔人族を嫌っていると思われる侯爵さまは饒舌になっていく。
「そうだな、あいつらいつ死ぬんだ」
「一番長生きなエルフは、1000年はいくって噂だね」
うへぇ、寿命長すぎる、私はエルフじゃないけど。
「ビーストは、旧神に愛された種だったっけか? だから500年ぐらいか」
「えぇ!!、なっが! いですねぇ……」
私もステータス鑑定で種族【???】だけど魔人族ビーストの特徴があるので500年は生きれる可能性があると。
今22歳なので気が遠くなる。
これは、長く旅を楽しめるというラッキーな事なのかな?
「あまり、人族と魔人族とは仲が良くなさそうな感じですか?」
「仲良くする人族もいるさ。プライドのないやつらだよ」
侯爵さまは、私の後ろのリーナさんをチラリと見た。
リーナさんの表情はみえないけど「ふん!」と怒っているのを感じるから、何か因縁があるのかな?
「ーーええと?」
「わざわざ、魔人族を伴侶に選ぶ奇特な人族がいるのさ」
人族と魔人族で対立関係がありそうな事はわかった。
「君は、魔人族なんだろうけど、見たことない種だね」
「確かにそんな髪色は見たことがないな。目の色も変だ。突然変異体なのか。獣って感じしなくて、まるでぬいぐるみだな」
アハハと笑いが響く。
伯爵さまがごめんねと言わんばかりの表情をしている。
「見たことないビースト……どうなんでしょうね……」
やはり、この髪色目立つんだろうな。
大人しく控えめにしておこう、そんなことを思いながらも笑顔で食事を進めた。
それにしても最低限のテーブルマナーを知っていてよかった。
というか同じなんだね、マナーが日本とさ。
フィンガーボールが出てきたときは少々戸惑ったけど、私が指先を洗ったらみんなも追随した。
初めに女子高校生二人が器を持ち上げて飲もうとしたのは見なかったことにする。
多分、ワインの呑みすぎで強烈に喉が乾いたんだと思う。
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