4ー 話 レンギア王国と召喚

第4話 異世界召喚されたようです

《レンギア王国1日目ーケルンジリア1日目ー》


 騒がしい。

 歓喜の声が聞こえる。

 目を開くと、ローブを着た人やら剣を携えた人、豪奢なドレスを着て椅子に座っている人に囲まれていた。

 王冠を頭の上に乗せたお腹がでっぷりとした人は王様だと思う。

 パっと見た服装からして、地位の高そうな人に囲まれている。

 本当にケルンジリアに、異世界に召喚されたんだなぁ。

 近くには、私以外の召喚者である日本人4人。


「おおぉ、女神よ。ありがとうございます! これで我が国レンギアの夢である大陸統一ぅ――」

「大陸統一?」

「できるほどの戦力ぅー……があれば、人族が魔に脅かされる事もないでしょう! 勇者の皆様、〖レンギア王国〗へようこそおいでくださった」


 威厳のない王様が超絶笑顔でもみ手しながら出迎えてくれた。

 でも、私を見る目は困惑と嫌悪と見下すような視線が入り混じっている。

 あと舌なめずりしている人もいるんだけど?。

 なぜだろう?

 服装は、コンビニエンスストアの時着ていたパーカーだし、他の人と比べておかしなところはないはず。

 周りをみると私以外の日本人の召喚された人達も明らかに私を見て動揺しているみたい。


「ここはどこ! おい! やめろ! 触るなって!」


 女子高校生は立たせようとしてくれた騎士に、当たり散らしている。

 あっ、この女子高校生は陳列前シフォンケーキ強奪犯の感じ悪い子じゃないか。


「はぁ? 何? 何なの? カミトなんとかしてよ」


 もう一人の女子高校生は、うん、まぁ混乱するよね、この子は陳列前シフォンケーキ強奪犯のクールなミカだ。


「だ、大丈夫だよ、ミカ。俺が守るし。……おばさんに守れって言われてるし」


 ミカをなだめているのが助けてくれた男子高校生カミト君だな……、コンビニエンスストアで謝ってくれた子だ。

 あっ、起き上がらせてくれたのにミカはカミト君の手をふり払ってる。

 幼馴染っぽいけど、幼馴染は恋に発展するなんて幻想よね。


「ぼ、ぼく、僕……バイトの途中……な、なんだここ。店長に怒られる! シフト表の締め切り昨日だったのに!」


 この状況でも仕事の事考えるなんてめっちゃバイト戦士がいる。

 でも、バイト入る前にシフト表だせばよかったのに。

 この人はパレット持っていたラーソンの店員さんだ。

 それにしても、この慌てぶり。

 あれれ?

 みんな、あの不思議な場所で星の管理者である虎さまとジョブを決めた事とか記憶がないのだろうか?

 虎さまが私の記憶を消し忘れたとか?

 虎さまならありうるなとちょっとニンマリしながら、それぞれ大騒ぎしている日本人を眺めていた。

 するとカミト君がこちらを見て恐る恐る声をかけてきた。


「え、と。ここはどこだかわかりますか?」


 はじめて私を見たかのように丁寧に聞いてくる。


「う~ん、なんというか、日本から召喚されたっぽいよ」

「えぇぇ? まじですか? いや、確かにコスプレどっきりにしては本格的だし……。えっ! 日本ってわかるんですか?」

「いや、どう見ても日本人だし」

「えっ?」

「えっ?」


 二人顔を見合わせる。

 その時、カツーン!

 床に何かが打ち付けられた音がした。

 黄金のネックレスを何重にもして、両指にゴツイ宝石がついた指輪をしている神官長みたいな人が、杖で床をついた音だった。

 音にびっくりしたのか騒いでいたみんなの口が閉じた。


「みなみなさま、突然のことで驚かれたことと思いますが、この後のことをお伝えします。ステータス確認ののちお部屋にご案内させていただきたく思います。その後は――」


 ステータスかぁ。

 どんな感じなんだろう。

 虎さまにお願いしたラッキー全振りしかわからない。

 ステータスのチェック方法は、若い神官の人が持っている青い珠に手を乗せたらわかるようだ。

 若い神官は、順番に召喚された日本人の前に周り手を乗せるように促す。

 隣の書記官がステータスの結果を記載して読み上げるらしい。

 私は近くにいるので、直に青い珠に浮き出た内容を見ることができる。


「では、まずカミト・モチズキ様。種族は人族 ジョブは勇者ーー」


 ステータスが発表されるたびに、王様と側近の人が歓喜を表す。


「おぉぉ、カミト様は勇者さまですぞ! 勇者を勝ち取れるとは召喚者だちに褒美をやらんとな! 夢にまで見た人族の頂点に。あの帝国の悔しがる顔が浮かぶわ。アハハハハハハハ!」

「これは素晴らしい! ミカ様はバランスが取れております! 剣聖は勇者の次に剣のを極めれる者。これで我が国は剣術では負けることはないですな」

「マナミ様はなんとバーサーカーですな。しっかり暴れてもらいましょう! 一日中暴れれる環境はありますのでな」


 そこのおじさん、なんか涎でてるよ。

 狂犬病なのかな?

 

「ツトム様は聖者とは。あちらには聖女がいるので一安心ですな。女じゃないのが悔やまれますが。まぁ、王女様にでもいいですな」


 ステータスの結果を聞いた召喚した人達は騒いでいる。

 ところどころ、何やら胡散臭さが漂ってくる言葉が聞こえるね……。

 虎さまに使命があるのか聞いた時に『管理者としては、ないですよ』と言う言葉は本当だったんだね。

 なんとか問題に巻き込まれる前に脱出したいと、この光景をみて強く思った。

 さて、わかるのは名前、種族、ジョブ、年齢、HPとMPの情報だけみたい。


 [名前]カミト・モチヅキ

 [種族]人族

 [ジョブ]勇者レベル0

 [年齢]17歳

 [HP]100

 [MP]080


 確かジョブに合わせて属性などスキルが決まってるって言ってたけど、ここでは詳細な情報はわからないみたいだ。

 最後に私の順番が来た。

 なんとなく青い珠に触らせたくないような雰囲気を感じたけどなんで?


「「……」」

「別にいいですけど……」

「あぁぁ、いや、どうぞ……」


 もう、なんなのと珠の上に無造作に乗せる。

 手を珠に乗せると ぐにゃぐにゃとした線が現れ直線となり、文字に形成された。

 他の人が乗せてた様子を見てたけど不思議だな。

 どれどれ?

 私のステータスはいかほど?


 [名前]ヴィヴィオラ

 [種族]???

 [ジョブ]???レベル0

 [年齢]22歳

 [HP]022

 [MP]222


 ん?

 これは私のステータス?


「えぇとヴィヴィオラ様」

「ヒァッ! あ、わたし……わたしの事ですよね?」


 変な声がでた。

 なんで! 名前がヴィヴィオラなの!

 見間違いかと思った。


「種族、ジョブともわかりません……、え~~と、年齢22歳。まぁ若いですな。HPが22……、おぉ! MPは222ですぞ。属性が気になりますな! それにしても種族とジョブが……」


 王様が神官に「使えそうなのか?」「こんなことは初めてで」とひそひそと思いきや聞こえる大きさで話している。

 使えそうって言い方気になります!

 それ以外にも気になることがある。

 ジョブは[???]なのはわかるよ?

 あの場でテンプレートのジョブを選ばなかったからね。

 虎さまオリジナルの可能性がある。

 でも、なんで種族が[???]なの?

 私だって他の4人の日本人と一緒の人族ってやつでしょ?

 それなのにーー。

 ……もしかして?

 ……いや、ほんとに?

 ……まさかね?

 ヴィヴィオラって名前……。

 髪の毛を触る。


「あぁぁぁぁぁ、このピンク色は!」


 イラストレーターさんと何度も打ち合わせして表現してもらった、シルクのような艶のあるくすみピンクの髪色、そしてこの長さ、配信で使用しているアバターになってる?

 配信したいとは言ったけど、配信で使用していたアバターに変化するなんて思ってもみなかった。

 どおりでみんな異物を見る目で見てくるはずだ!

 頭を抱えるとペコっと折れる何かがある。


「猫耳生えているよ!」


 ウォッフォング……と神官長みたいな人が独特な咳払いする。


「ヴィヴィオラ様の種族は、おそらく魔人族でしょうな」

「ま、まじん? まじんぞく? 魔人族?」


 魔人なんか悪者くさい種族じゃん……。

 それに年齢も22歳にゃーにゃー猫の鳴き声ってだけで決めた年齢もそのままだよ。

 真剣に考えれば良かった。

 HP22ーー戦闘職っぽくない聖者の3分の1しかないよ。

 あきらかにハードモードでスタートだよ。

 逆にみんなが落ち着き始めた中、私だけが頭を抱えて声にならない声で叫んでいた。

 虎さま~、本当にラッキー全振りなんですかぁぁぁ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る