ばんがいへん1-本物の耳島の花姫は?
平安の世に生きる女性は美しいが、令和の世に生きる女性よりも自由がない。
例えば衣服は基本的には用意された物、結婚相手は父君が選んだ御方、食する物は用意された料理、勝手に邸から出る事すら許されず、外出時には複数人の大人が付いて来る。
それに比べ、令和の世は実に自由なものである。
衣服は基本的に自分の好きな物、結婚相手も好きな相手、食する物も好きな物、外出する時は…、少しは許可をもらうけどどこに行くか伝えれば基本自由。
(何て素晴らしい世なのでしょう。)
旧耳島の花姫、現花谷詩那里。
耳島の花姫は詩那里と同じく、朝目を覚ましたら知らない部屋の知らない服を着ていて、知らない床で寝ていたことが分かった。
それも、知らない男に声を掛けられて目を覚ました。
外見からして歳は30代半ば、中肉中背。
花姫の知っている男とは違う、貫禄の無い雰囲気。
「詩那里。学校遅刻するよ。」
「何でございましう…」
「起きなさい」
「もう朝なのかい?」
この叔父様、花谷三太郎はどうやら詩那里の叔父さんらしい。
「詩那里?」
「詩那里…?」
「どうした、詩那里?記憶でも失ったかい?」
「…何を言っていますの?叔父様、そんな事、あ…、あ…、ありませんのよ?」
耳島の花姫、いや、詩那里は嘘が大層下手糞であった。
自分に記憶は一応あるが、詩那里としても記憶は全くない。
だから、詩那里が誰のことを指しているのかは分かったが、元の詩那里がどう言った人物なのかは分からない。
だが、ここで『はい、私は詩那里ではなく、耳島の花姫です。』なんて言えるわけない。
「君、その嘘は分かりやすすぎるぞ。」
「え…」
「詩那里、記憶がないんだろう。君が別人だとは僕も思わないよ。毎日一緒に過ごしている僕は分かる、君は詩那里だと。見た目がまんまだからね。」
「…ええ。」
「でも、その言葉遣いと言い、その嘘のつき方と言い、君は今までのそれとは違っている。僕の知っている君はもっと現代風な話し方で、嘘をつくのも上手だった。」
「そうでしたの…」
「ああ。」
それから三太郎は詩那里のおかしな話を、しっかりと聞いた。
「つまり君は平安時代からタイムスリップして、現代にいた詩那里と同じ顔の別人と言うわけだな。そして恐らく本物の詩那里は平安時代にタイムスリップしていると…。君はまた、平安時代の北国のお姫様…」
「信じられない気持ちは私にも分かりますわ。しかしこれは事実なのです。」
「ああ、大丈夫だ。僕は理解している。」
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