第16話 夜闇を裂く黒き翼
「笑ってた? あの爆弾魔ドラゴンが?」
一般市民を狙った無差別爆破事件、予期せずそれに出くわすこととなった俺達は、ようやく帰路についていた。
真の標的だったお母さんとその娘さんは救出され、犯人も逮捕された。事件に決着がついたと言って間違いはなかったのだが、どうにも頭に引っ掛かるものがあった。
そう、あの岩石ドラゴンが、連行される最中に不敵な笑みを浮かべていたことだ。
俺がそれを伝えると、ルキアは怪訝な眼差しを向けてきた。
「うん、もしかして他にまだ、どこかに爆弾を仕掛けていたとか……」
「いや、それはないわね」
隣を歩くルキアが、俺の不安を払拭するように即答した。
彼女の片手にはレジ袋が提げられていて、中にはピーマンやマスカット、他にもスーパーで購入した物が詰まっている。あの爆発現場に放置していたせいで、焦げたにおいが付いてないか心配したが、どうやら大丈夫だったようだ。
あの子が、プリシラが届けてくれたお陰で、買った物が無駄にならずに済んだ。
「警察があの現場周辺を徹底的に調べていたし、私も鼻で辺りを探ったけれど、どこからも爆弾のにおいはしなかったから」
「そっか……」
しかし、あの不敵な笑みは一体……そう思っていると、
「大方、爆弾で世間を騒がせたことに満足してたんじゃない? 人間より優れた自分の力を誇示して、歪んだ満足感に浸るドラゴンもいるから」
俺の考えを見透かしたように、ルキアは言った。
残念だと思うけど、彼女の言うとおりだった。
他人の注目を浴びるために大事件を引き起こす、自己顕示欲が暴走した果てに、凶悪犯罪に手を染めてしまう。ドラゴンに限った話ではなく、俺達人間だって十分ありえることだった。
「『誰かに認められたい』、っていう気持ちは誰もが持っているものよ。でもあのドラゴンは、それを間違った方法で満たそうとしてしまった。ドラゴンステイをキャンセルされたことで、自分のすべてを否定されたとでも思いこんだんだと思うわ」
空を見つめながら、ルキアは語る。
俺はふと、前の母さんの言葉を思い出した。ドラゴンは姿こそ違うが、俺達人間と同じように心があり、楽しければ笑い、悲しければ涙を流せて、嫌なことがあれば怒るという、あの言葉だ。
心があるからこそ、激情に突き動かされてしまうこともある。
それは、人間もドラゴンも同じことなのだろう。
「まあ何にせよ、あのドラゴンは殺人未遂で第一級の罪を犯した……ドラゴンステイはおろか、もう二度と人間界に降り立つことも許されないでしょうね」
詳細全部を把握してはいないが、ドラゴンには全八段階の罪があるのだ。
一番下の『第七級』から、次の『第六級』、次に『第五級』と続いていき……『第一級』、さらにその上の『特級』だ。
ドラゴンの年齢や事情などで減刑されることはあれど、ルキアが言ったように殺人未遂は第一級。なお第二級以上は終身刑、ないしは死刑が確定するらしい。
ちなみに、騎乗免許を持っていない人間を背中に乗せて飛行するのは第七級。逆に人の命を奪うこと、つまり殺人は特級だ。
「審議は行われるでしょうけど、少なくとも当面は龍界の牢獄で過ごすことになるはずよ」
ルキアの口ぶりからは、同情するような気持ちは感じられなかった。
事情があったとしても、誰かを傷つける理由にはならない。
裁判の結果、あの岩石ドラゴンがどんな刑に処され、どんな一生を送ることとなるのかは分からない。だけど少なくとも、同情の余地などないのは間違いなかった。
「私達ドラゴンの力は、誰かを守るためのもの。それが分からないドラゴンなんて、危険極まりないでしょ?」
ルキアの言うとおりだと思った。
誰かを守るため、悪人を成敗することだけにその力を振るう彼女だからこそ、説得力が感じられた。
そんなこんなで、俺達は歩き続けて……また、そこに通りかかった。
さっきも立ち寄った、ジャックを飼っているお宅の前だ。
「あ……」
俺はふと、ルキアの顔を見た。
ジャックはドラゴンのにおいに慣れていないのだから、まあ仕方ないのだが……吠えられてしまったことがいまだにショックらしく、彼女は悲しい面持ちを浮かべていた。
――何とかしてやりたい。
俺は、率直にそう思った。まだ一緒に暮らし始めたばかりだけど、少なくとも俺はルキアが悪い奴じゃないってことは理解していた。火事の時は助けてもらったし、今回も彼女がいなければ、人質になったあの親子を助けられなかったはずだ。
お礼と言っちゃ何だけど、せめてこれくらいは……俺はジャックに駆け寄った。
「よう、ジャック」
ジャックが俺のほうを向いたが、後ろにいたルキアに気づいて身構えた。
俺はしゃがんで、ジャックの頭を撫でた。
「なあジャック、ルキアとも仲良くしてやってくれないか? 怖い奴なんかじゃないからさ」
ルキアには聞こえないように、俺はジャックに教え諭した。
ボーダーコリーは最も賢い犬種だし、ジャックが利口な犬だということを俺はよく知っている。きっと分かってくれる……そう信じての言葉だった。
変化はあった。微かに唸るような声を発していたジャックが、その声を止めたのだ。
俺は振り返って、
「撫でてみたら?」
ルキアにそう提案した。
「いいわよ、嫌われちゃってるもの」
当然ながら、ルキアは首を横に振った。
「でも、ジャックと仲良くなりたいんだろ?」
スーパーに行く途中でここに立ち寄った時、ルキアは心底ジャックに触りたがっていた。
私にも触らせて、と頼んできた時の彼女の表情を、今でも覚えている。
「そうだけど……」
そわそわした感じで応じるルキア。
その様子はもう、可愛い動物を愛でたがる普通の女の子で……岩石ドラゴンを素手でぶん投げる最強のドラゴン少女だとは思えなくなってしまうくらいだった。
「歩み寄ってやらないと、心を開いちゃくれないぞ」
言ってて、何か恥ずかしく思える台詞だった。
でも少なくとも俺には、それが最善の言葉だと思えたんだ。
「分かったわよ……」
迷う様子を見せた後で、ルキアは心もとない返事とともに、ゆっくりとジャックに歩み寄った。
ジャックはぴくんと身を震わせたけれど、吠えはしなかった。
「ジャック、大丈夫さ」
今度は俺は、ルキアにも聞こえるように言った。
すると、思いがけないことが起きた。ジャックのほうから、ルキアの足元に近づいていったのだ。もしかしたら、さっき俺が言ったことを聞き届けてくれたのだろうか。
「あ……!」
ルキアは、俺以上に驚いたことだろう。
ジャックはルキアの足のにおいを嗅ぐような仕草の後で、彼女の顔を見上げた。それはまるで、彼女を見定めているかのようにも見えた。
しゃがみ込んで、ルキアはジャックと視線の高さを合わせる。
「焦らないで、ゆっくりとな」
俺が助言すると、ルキアはこっちを向いて頷いた。
ゆっくりと、彼女はその右手をジャックに向けて伸ばしていく。
ジャックはまたぴくんと身を震わせたが、拒むことも逃げることもしなかった。やがてルキアの指が、その毛並みに触れた。
それが打ち解けるきっかけとなった。
初めて会った時の反応が嘘だったように、ジャックは自らルキアに歩み寄ったのだ。
「っ……!」
ルキアが息をのんだ。
恐怖を抱かなくなったからなのか、それとも他に理由があるのかは分からない。でも、ジャックがルキアを拒絶しなくなった……それだけで、俺には十分だった。
ルキアが頭を撫でると、ジャックは舌を出してハアハアと声を出した。
「わあ……!」
尻尾を振ってじゃれてくるジャックの体を、ルキアはやんわりと受け止めた。
その様子を見ていて、俺も思わず胸が満たされる気持ちになる。
屈託のないルキアの笑顔を見たのは……その時が初めてだった。
人間のそれと変わらない、純粋で可愛らしく、無垢な笑顔……見ていると、思わず彼女がドラゴンであることを忘れてしまいそうになった。
◇ ◇ ◇
「おおお……」
その夜、食卓に並んだ晩御飯を見て、俺は思わず目を見張った。
大きな皿に盛り付けられていたのは、大きなハンバーグにナポリタンに、サニーレタスを添えたポテトサラダ……それに別の小皿には、俺とルキアがさっき買ってきたマスカットが載せられていた。
お菓子に限らず、母さんは手の込んだご飯をよく作ってくれるけれど、今晩のは段違いに豪勢なメニューだった。
「すごいでしょ智、お母さん頑張っちゃった。ルキアちゃんも手伝ってくれたんだけどね」
向かいの席に座った母さんが、得意げに言った。
美味しそうで……見ているだけで腹が鳴ってしまいそうだった。
「よく味わって食べなさいよ。言っとくけど、残したら許さないから」
からかい半分なルキアの言葉に、俺は応じた。
「残さないって!」
俺とルキアのやり取りを見守っていた母さんが、くすくすと笑いながらコップにオレンジジュースを注いで俺に手渡してきた。普段はお茶か水なのだけれど、今日だけは特別らしい。
そう、もちろんこのご馳走は何の意味もなく出された物ではなく、ルキアが我が家に来たことのお祝い――つまり、『歓迎会』のために用意されたのだ。
ドラゴンは、食事をする必要がない。
でも母さんは、ルキアにも俺達とまったく同じ食事を用意していた。無意味と言われるかもしれないけれど、それはルキアを家族として尊重するという、母さんの意思表示なのだろう。
俺にコップを渡し、ルキアにもコップを渡す。
そして母さんは、最後に自分の分のオレンジジュースもコップに注いだ。
「それじゃ、ルキアちゃん……我が家へようこそ」
「ありがとうございます、お母様」
母さんが、俺を見た。
「ほら、智も」
「へっ……?」
急に振られて、間の抜けた声を出してしまった。
ルキアも俺を見てくる、『何か言ってよ』とでも言いたげな眼差しだった。
「よ、ようこそ……これからも、よろしく」
何だか照れくさくて、視線を外しながらそう言うのがやっとだった。
すると、
「ぷっ、あははは……!」
母さんが、大口開けて笑いだしたのだ。
「ちょ、何だよ母さん!」
「ふふ……よくできました」
笑い過ぎて瞳に浮かんだ涙を拭いつつ、母さんが答えた。
くそ、何だってんだ、まるで子供扱いじゃないか……!
「ま、あんたにしちゃ上出来ね」
「んなっ!?」
鼻で笑われた上に、またも子ども扱い感バリバリの言葉を投げられる。
食い下がろうとすると、
「ほらほら、もう食べましょう? 智の好きなハンバーグが冷めちゃうわ」
母さんに制されて、俺は引き下がることにした。もちろん、消化不良な感じは拭えなかったけれど。
そんなこんなで、食事……つまりルキアの歓迎会は始まった。
ポテトサラダをちょっと食べて、俺は続いてメインであろうハンバーグを口に運んだ。ふわっとしてて、閉じ込められた肉汁がジューシーで……母さんお手製のハンバーグソースも当然のようにピッタリマッチしていた。食欲を大いにそそられる見た目に違わず、それはそれは美味しいハンバーグだったのだ。
ふと、俺はハンバーグに入れられた何かに気づいた。
何だこれ? 何かの野菜なのは分かるけれど、玉ねぎじゃないし……。
「あ、そうだ」
俺が怪訝な表情を浮かべていることに気づいたのか、ルキアが言った。
「何?」
俺が問い返すと、
「言い忘れてたけど、そのハンバーグにはピーマンが入ってるから」
「へっ!?」
驚いた。
と言っても、俺の天敵たるピーマンが食材として使われていたということ以上に、これがピーマンだとすぐに分からなかったことのほうが、驚きだった。
俺が知るピーマンとは、一齧りで強烈な苦みとえぐみを口腔内にぶちまける危険物、緑色の拷問器具だ。
だけど、このハンバーグに刻まれて入れられていたそれからは、苦みもえぐみも感じられなかった。それどころか、肉の味を引き立てて、旨みを増幅させているようにすら思えたのだ。
お、おい嘘だろ、これがピーマン……? 半ば信じられずにいると、
「ルキアちゃんが作ってくれたのよ、智のピーマン嫌いを克服するためにね」
ハンバーグを切り分けながら、母さんが言った。
前々から思っていたのだが、母さんはナイフとフォークの持ち方がとても綺麗で、さらに、食器が触れ合う音を一切立てずに食べるのだ。
自分は昔、龍界の屋敷でお手伝いさんをしていた。母さんは口癖のようにそう言うけれど、もしかしたらその経験を通じて、それなりに高度な作法を学んだのかもしれない。
「どう、これだったらあんたでも食べられるでしょう?」
残したら許さないという言葉は、このピーマン入りハンバーグに対してだったのか。
とは思ったけれど、ルキアの言うとおりだった。
「うん、これなら……」
頷きつつ、もう一口。
いや、普通に美味しい……。
「それじゃ、明日のおかずはピーマンの肉詰めね」
「は!? やめろ!」
そんな俺とルキアのやり取りを見守りながら、母さんはくすくすと笑っていた。
赤面しちまって、恥ずかしさは拭えなかった。でも気づけば……心のどこかで、俺は『楽しさ』を感じていたのかもしれなかった。
一人っ子の俺は、兄弟ってものを知らない。でも、もし……俺に『姉貴』がいたとしたら、こんな感じだったんだろうか。
目の前にいる最強のドラゴン少女を見て、俺はそんなことを思った。
◇ ◇ ◇
時計の針は、夜八時半を指していた。
夕食を終えたルキアは、エプロンをつけて瑞希と一緒に台所で皿を洗っていた。
「手伝ってもらってありがとうね、ルキアちゃん」
「いえ、そんな……お礼を申し上げるのは私のほうです。歓迎会を開いていただけるなんて……」
手際よく皿や箸を洗うと、ルキアは続いて調理の際に使われたフライパンを手に取った。
すぐにスポンジで洗おうとはせず、ルキアはまず瑞希が用意したスキージーで油汚れを拭き取った。ハンバーグや生姜焼きを調理したフライパンは油汚れがひどく、そのまま洗うとスポンジが駄目になってしまうし、排水口に流れた油は悪臭や破損の原因となる。
だから、こうして先に油を拭き取るのが賢明。ルキアは、それを知っていたのだ。
「それに、マスカットまでご馳走してくださって……とても美味しかったです。本当にありがとうございます、お母様」
智には決して見せないしおらしさを、その時のルキアは放っていた。
「あれくらいいいのよ、喜んでくれて嬉しいわ」
食事の最後に、ルキアは智と瑞希とともにマスカットを食べた。
スーパーで買ってきた、あの山梨県産の種なしシャインマスカットだ。大粒で張りがあって、見た目にも上品で……酸味が少なく甘みが強いマスカットは本当に美味しく、一粒食べたら止まらなくなってしまいそうだった。
豊潤で高貴な味わいを思い返しつつ、洗い物を続けていると、
「ねえ、ルキアちゃん」
洗い物を続けながら、瑞希が話しかけてきた。
「はい?」
ルキアが応じると、瑞希は一旦手を止めて視線を重ねてきた。
「ちょっと訊きたいんだけど……智のこと、どう? 仲良くなれそうかな?」
「え……」
不意の質問に、ルキアは思わず目を丸くしてしまう。
困惑はした。けれど、ルキアはすぐに答えを見出した。
「あんな出会い方をしたから、正直最初は何だこいつって感じでしたけれど……ちゃんと謝ってくれたし、無鉄砲なところもあるけれど、何だかんだで誰かを助けるために行動できる彼のこと、私は嫌いじゃないです」
初対面の時に『メスドラゴン』呼ばわりされた時、ルキアの智に対する評価は地に堕ちた。差別用語であることを差し引いてもあまりにも常識外れで、配慮に欠ける言葉だった。人間と同じように心や感情があるドラゴンを、単なる動物と誤認しているとすら思えたのだ。
しかし瑞希に言ったように、智の行動力と他者を救うために自己犠牲を厭わない精神は、評価に値する。それにルキアは、今の生活を率直に『楽しい』と感じていた。
瑞希や智と一緒に過ごしたのは、まだほんの数日だった。それでもルキアは、この松野家にドラゴンステイできて良かったと思っていたのだ。
「ありがとう。それじゃあルキアちゃん……これからもあの子と、仲良くしてあげてくれるかな?」
「はい、もちろんです!」
ルキアが応じると、瑞希は笑顔を浮かべた。
――その時だった。
尋常ならざる気配を感じて、ルキアは振り返った。
「っ!?」
思わず息をのむ。
ほんの数秒前まで浮かべていた笑みは、もうルキアの表情から消え去っていた。
彼女が向いた方向には窓があって、その奥には夜の街の風景が広がっていた。立ち並ぶ民家が月光に照らされ、木々が風に揺られているのが見えた。
ルキアが視線を集中させていたのは、遠方に立つ高いビルだった。
気配の発生源は、あそこのようだ――と思ったのだが、今はもう何も感じなかった。
「ルキアちゃん、どうかしたの?」
「あ、いえ、何も……!」
瑞希に問われたルキアは、慌てて平静を取り繕った。
洗い物を続けつつ、再度窓に視線を向けてみたが、やはり何も感じられない。
(気のせい……か)
◇ ◇ ◇
その日の仕事を終えた二人組のサラリーマンが、夜の帳に包まれた街を歩いていた。
社会に出て間もない青年達で、ふたりともスーツ姿で、片手にはまだ新しいビジネスバッグを提げていた。
「聞いたか、今度うちの部署に来るのってドラゴンらしいぞ。ワイバーンなんだってさ」
「お、ワイバーンって飛ぶ能力に長けてるんだよな? 外回りが楽になるな」
会話を弾ませていた時だった。
異様な寒さが、突如として彼らの身を覆い包んだのだ。
「な、なあ……何だか寒くないか?」
「ああ、やけに冷えてきたな……早く行こうぜ」
身を縮こませて、彼らは足早にその場を去った。
ふたりが通り過ぎた道の脇に立つビル、その屋上にひとりの少女が立っていた。
長い金髪をハーフアップの髪形に結い、漆黒のドレスを着た美しい少女――その紫色の瞳は、迷いなくルキアの姿を映し出していた。
(ルキア……)
心の中で呟く。夜風が緩やかに吹き、彼女の金髪や漆黒のドレスが優雅に空を泳ぐ。
月光に照らし出された彼女の姿は美しく、気品に溢れ……そして、神々しさも醸していた。
彼女はひとしきり、家事に勤しむルキアの姿を見つめ続けていた。気配を察したのか、ルキアがさっきこちらを見た気がしたが、その後彼女が視線を向けてくることはなかった。いや、気取られようがそうでなかろうが、別にどうでもいい。
これから遠くない未来、彼女はルキアと相対することになるのだろうから。
風が弱まったその時、少女の背中に翼が出現した。そのドレスと同じ、夜闇に溶け入るように黒く、大きく……鋭く攻撃的な形状をした翼。光沢のある表面も相まって、まるで何本もの刃物が寄せ集まっているようにも見えた。
何のためらいもなく、彼女はビルの屋上から飛び降りる。
次の瞬間、一対の翼が夜闇を切り裂くように羽ばたき、彼女は夜空の彼方へと舞い上がり――その姿を消した。
WHITE DRAGON 虹色冒険書 @Rainbow_Crystal
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