第19話 迫り来る危機

影の執行者を倒し、再び町に平穏が訪れたかのように見えた。しかし、李華の心にはどこか不安が残っていた。闇の力が完全に消え去ったわけではないことを感じ取っていたからだ。彼女の中で、何かが迫っている予感が日に日に強くなっていた。


「闇の力はしつこい…次の脅威がもう近くに迫っているかもしれない」


李華はそう感じながらも、中華屋「李華飯店」で普段の生活を続けていた。常連客たちは笑顔で料理を楽しみ、彼女も表向きはいつもと変わらず元気に店を切り盛りしていた。しかし、心の奥では常に次の戦いに備えていた。


その日の夜、突然、賽銭箱の鈴の音が響き渡った。


「また…」


李華はすぐに店を閉め、賽銭箱の音が響いた場所へ向かった。路地裏に行くと、そこにはまた新しい依頼の紙と千円札が入っていた。


「頼む…家族を探してくれ。昨夜、黒い霧の中に消えたんだ…」


依頼の内容に書かれていたのは、黒い霧に包まれ家族が失踪したというものだった。それはかつての黒い影の事件と酷似していた。李華はすぐに佐藤に連絡を取り、状況を説明した。


「佐藤さん、また行方不明事件が起きています。黒い霧に包まれて家族が消えたそうです。これって、闇の影響ですよね?」


電話越しに佐藤の声が響く。


「そうだな。影の執行者を倒したことで闇の勢力が衰えたと思っていたが、どうやら完全には消えていないようだ。しかも黒い霧が現れたということは、新たな脅威が動き出している可能性が高い。」


「やっぱり…何かがまだ潜んでいるんですね。私は、すぐに動きます。」


「俺もすぐに向かう。合流して行動しよう。」


李華は電話を切ると、賽銭箱の場所から黒い霧が出たという家へ急いだ。


---


家に到着すると、そこは静まり返っており、外見には異常はなかった。しかし、家の周囲には薄暗い霧が漂い、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。


「これは…普通の霧じゃない…」


李華は慎重に家の中へと足を踏み入れた。内部は荒らされておらず、家具もそのままだったが、人の気配はまったくなかった。まるで時間が止まっているかのような不思議な感覚が広がっていた。


「誰もいない…?」


李華はさらに奥へ進むと、突然、背後から黒い霧が一気に濃くなり、彼女を包み込んできた。目の前が一瞬で暗くなり、息苦しさを感じたその瞬間、霧の中から声が響いた。


「お前が…町の戦士か…」


低く不気味な声が霧の中から聞こえてきた。李華はその声に警戒し、バズーカを構えた。


「誰?出てきなさい!」


すると、霧の中からゆっくりと一人の影が現れた。その姿は黒いローブに包まれ、顔は見えない。だが、その存在感は圧倒的で、ただならぬ力を感じさせた。


「私は『闇の王』。お前の力を試させてもらおう…」


闇の王は冷笑を浮かべ、手をかざした。その瞬間、霧が渦を巻くように動き出し、李華に襲いかかろうとしていた。彼女は咄嗟にバズーカを発射し、強力な衝撃波を霧に向けて放ったが、霧はそのエネルギーを吸収するように消えてしまった。


「エネルギーが効かない…?」


李華は驚きながらも、すぐに次の手を考えた。これまでにない強大な力を前に、彼女は慎重に行動しなければならないと感じた。


「私の力は、今までの相手とは違う。影の執行者など、私の下僕にすぎん。」


闇の王はそう言いながら、一瞬の間を置いて攻撃を仕掛けてきた。闇のエネルギーが彼女に向かって一気に押し寄せてくる。


「くっ…!」


李華は必死に防御しながら、再びバズーカを構え直した。だが、そのエネルギーはますます強くなり、彼女の体に重くのしかかる。


「これじゃ…勝てない…」


その時、背後から声が聞こえた。


「李華、無理をするな!」


佐藤が現れ、彼女を支えるように駆け寄った。彼の手には古い巻物が握られていた。


「この巻物は、かつて闇の力を封じ込めるために使われたものだ。これを使えば、闇の王の力を一時的に封じることができる。」


「本当ですか…?」


佐藤は頷き、巻物を広げた。その瞬間、光が巻物から溢れ出し、闇の王のエネルギーを押し返した。


「なに…?」


闇の王は驚き、しばらくの間動けなくなった。


「今だ、李華!全力で攻撃しろ!」


李華はすぐにバズーカを構え、巻物の光に合わせて最大のエネルギーを放った。


「これで終わりよ…!」


バズーカから放たれた光が、闇の王に直撃し、彼の体を包み込んだ。激しい光が周囲を照らし、闇の王の姿は次第に消えていった。


「私が…敗れるとは…」


闇の王はそう呟き、やがて完全に姿を消した。


---


家の中は静寂に包まれ、黒い霧も消えていた。李華は力を使い果たし、その場に倒れ込んだが、佐藤がすぐに彼女を支えた。


「よくやった、李華。だが、これで本当に終わったかどうかはまだ分からない。闇の力はしぶといからな…」


李華は深く息をつき、静かに答えた。


「ええ…でも、私はこの町を守り続けます。どんな脅威があっても…」


彼女は立ち上がり、再び町を守る決意を固めた。闇の王との戦いは終わったが、彼女にはまだ守るべきものがたくさん残っている。次の戦いに備え、李華は再び戦士としての役割を全うすることを誓った。


### 続く

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