第18話 新たなる脅威

闇の司祭を倒したことで、町は再び平和を取り戻したかのように見えた。しかし、李華は安心することなく、次の脅威に備えて気を引き締めていた。彼女には、闇の力が完全に消え去ったとは思えない何かが心に引っかかっていた。


「まだ何かが動いている…」


そう感じながらも、彼女はいつも通り中華屋「李華飯店」を開店させ、町の人々に美味しい料理を提供していた。だが、その平穏な日常の中にも、何か不穏な空気が混ざっているように感じられる。


ある日、店に一人の少女が訪れた。年齢は十代半ば、どこか憂いを帯びた目をしていた。その姿に、李華は何か不思議な印象を受けた。


「いらっしゃいませ。何か召し上がりますか?」


李華が優しく声をかけると、少女はしばらく黙っていたが、やがて静かに口を開いた。


「李華さん…助けてください…」


その言葉に、李華は一瞬驚き、表情を引き締めた。


「どうしたの?何か困っているの?」


少女はうつむきながら、震える声で続けた。


「家族が…突然いなくなったんです。まるで、消えてしまったみたいに…何も残さずに…」


李華はその言葉に、以前の依頼で行方不明になった家族のことを思い出した。黒い影が家族を襲い、姿を消してしまった事件だ。今回も同じようなことが起こったのだろうか。


「詳しく話を聞かせてくれる?何が起こったのか、教えてほしいの。」


少女はしばらく考えた後、小さく頷き、語り始めた。


「昨日の夜、私が部屋で寝ていたら、突然家の中が暗くなって…気がついたら、家族全員がいなくなっていたんです。探しても、誰もいなくて、まるで影に消えたみたいに…」


李華はその話を聞き、再び黒い影の存在を感じた。闇の司祭を倒したはずなのに、影の力がまだ町に残っているのかもしれない。


「分かったわ。私が調べてみる。必ずあなたの家族を見つけるから、安心して。」


少女は涙を浮かべながら頷き、李華に感謝の言葉を伝えた。李華は少女を見送り、すぐに佐藤に連絡を取った。


「佐藤さん、また行方不明事件が起きました。今度は、あの影がまだ残っているのかもしれません。」


佐藤は電話越しに少し考え込んだ後、静かに答えた。


「そうか…やはり闇の力は完全には消えていないのかもしれん。闇の司祭を倒したが、まだ何かが動いている可能性がある。今夜、町の巡回をしよう。闇の影を追い詰める。」


李華は佐藤の言葉に同意し、夜の巡回に備えることにした。


---


その夜、李華と佐藤は町を見回りながら、黒い影の気配を探していた。町は静まり返っており、人影もほとんど見当たらない。だが、李華の心には何か不安な感覚が広がっていた。


「佐藤さん、何か感じますか?」


佐藤は周囲を警戒しながら、静かに答えた。


「何も感じないな…だが、何かが動いているのは間違いない。町全体が妙に静かすぎる。」


二人が町の外れに差し掛かった時、不意に鈴の音がかすかに響いた。李華はその音に反応し、周囲を見回した。


「賽銭箱の音…?」


李華はその音に導かれるように、人気のない路地裏へと進んだ。そこで見たのは、再び現れた賽銭箱と、その前に佇む一人の男だった。男は李華の姿に気づくと、静かに振り返った。


「お前が…噂の戦士か。」


男の顔には、何か見覚えがあるような表情が浮かんでいた。その目は冷たく、どこか無感情な印象を与えていた。


「あなたは…誰?」


李華が尋ねると、男は薄笑いを浮かべ、冷たい声で答えた。


「俺は、『影の執行者』。闇の司祭が倒された今、俺が新たな支配者として、この町を闇に染めるために現れた。」


その言葉に、李華は緊張感を高め、バズーカを構えた。


「この町を闇に染める?そんなことはさせないわ!」


だが、影の執行者はまったく動じることなく、静かに手を上げた。その瞬間、周囲の空間が歪み始め、暗闇が広がっていった。まるで、町全体が彼の闇の力に包まれていくかのようだった。


「くっ…これは…」


李華は必死に抵抗しようとしたが、闇の力が強すぎて動けなくなってしまった。佐藤も同じように、闇の力に縛られ、動きを封じられていた。


「今度こそ、この町を完全に闇に飲み込んでやる。お前たち戦士も無力だ…」


影の執行者は冷笑を浮かべながら、闇のエネルギーを集め、町全体を覆い尽くそうとしていた。李華は必死に体を動かそうとするが、闇の力に押しつぶされそうになっていた。


「このままじゃ…町が…」


彼女は必死に心の中で叫び、自分を奮い立たせた。彼女には、町を守るための力がある。それを信じて、最後の力を振り絞らなければならない。


「私は…この町を…絶対に守る!」


李華は強い意志で闇の力を跳ね返し、バズーカにすべての力を注ぎ込んだ。バズーカが再び光り輝き、彼女の決意と共に強力なエネルギーが放たれた。


「これで、終わらせる…!」


エネルギーが闇の執行者に向かって放たれ、彼の体を包み込んだ。激しい衝撃が町中に響き渡り、闇の力が消え去っていく。


「この私が…敗れるとは…」


影の執行者は信じられない表情を浮かべたまま、やがてその姿を消し、闇の力もまた消え去った。町には再び静寂が戻り、李華は力尽きてその場に膝をついた。


「これで…終わったの?」


佐藤が彼女のそばに駆け寄り、優しく肩を支えた。


「よくやった、李華。だが、まだ完全に終わったわけではないかもしれん。闇の力はしぶとい。だが、今は休もう。お前の力がなければ、町は守られなかった。」


李華は静かに頷き、佐藤に支えられながら立ち上がった。町には再び平和が訪れたが、彼女はまだ心のどこかで新たな脅威の存在を感じていた。


「私は、いつでも戦士として戦う準備をしている。町を守るために…」


李華は心の中でそう誓いながら、再び中華屋へと歩き出した。彼女の戦いはまだ続いていく。町を守るため、そして人々の平和を守


るために。


### 続く

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