第17話 闇の祭典の残響

石碑の前で黒い影を封じた翌日、李華と佐藤は再び日常に戻ろうとしていた。町は静まり返り、まるで昨日の出来事が嘘のように平和を取り戻していた。だが、李華の心にはまだ消えない不安が残っていた。彼女は中華屋で普段通りに働きながらも、どこか落ち着かない気持ちでいた。


「闇の祭典があった場所を封じても、何かがまだ残っている気がする…」


彼女はそう考えながら、店の中を見渡した。常連客たちは何事もなかったかのように笑顔で料理を楽しんでいるが、李華は自分が町の人々を守るために、まだやるべきことがあると感じていた。


その日の午後、佐藤が再び中華屋を訪れた。彼は李華の不安な様子に気づき、静かに声をかけた。


「李華、何か考え込んでいるようだな。昨日のことがまだ気になるのか?」


李華は深く頷き、佐藤に向かって答えた。


「ええ、影を封じたけれど、まだ完全に終わった気がしないんです。何か、もっと大きなものが隠れているような気がして…」


佐藤はしばらく黙っていたが、やがて何かを思い出したかのように話し始めた。


「実はな、俺の昔の仲間が、あの石碑についてもう少し詳しい情報を持っていたんだ。あの石碑はただの封印の道具じゃない。闇の力を封じるだけでなく、逆に解放する役割も持っているらしい。」


「解放…?それは、つまり…」


「おそらく、何者かがその力を意図的に解放しようとしたんだ。黒龍が倒された後、何か別の存在が動き出している可能性がある。」


李華はその言葉に息を呑んだ。もし誰かが意図的に闇の力を解放しようとしているなら、それは町全体を危険にさらす行為だ。彼女は再び戦士としての役割を強く感じた。


「私が、もっとしっかりと封印を行わないといけない…」


佐藤は彼女の決意を感じ取り、再び協力を申し出た。


「俺も手伝う。闇の力を使おうとしている奴がいるなら、そいつを見つけ出さなきゃならん。情報を集めて、そいつを突き止めよう。」


李華は力強く頷き、二人はすぐに動き出すことにした。町を守るため、そして闇の力を悪用する者を見つけ出すために。


---


その夜、二人は町の外れにある古い教会に足を運んだ。教会は今では使われておらず、廃墟のようになっていたが、過去には闇の祭典が行われていたという噂が残っている場所だった。


「この教会には、かつて闇の力を封印した者たちが祈りを捧げたと言われている。ここで何かが分かるかもしれん。」


佐藤はそう言いながら、教会の中へと足を踏み入れた。中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。李華はバズーカを手に、何か不穏な気配を感じ取りながら進んでいった。


「静かすぎる…でも、何かがいる気がする。」


二人が教会の奥に進むと、突然、祭壇の前に黒い影が現れた。影はゆっくりと形を変え、やがて人の姿を成した。その姿は、黒龍と同じような冷たい雰囲気を漂わせていた。


「お前たちか…」


影の人物は低い声で呟き、李華と佐藤を見下ろした。彼の姿は黒いローブに包まれ、顔はフードで隠されていたが、その目だけが不気味に光っていた。


「お前は…誰だ?」


佐藤が問いかけると、男はゆっくりと口元に笑みを浮かべた。


「私は『闇の司祭』。かつて封印された力を再び解き放つために、この町に来た。」


李華はその言葉を聞き、戦士としての覚悟を固めた。


「あなたが、この町の闇を解放しようとしているのね。絶対に許さない…!」


彼女はバズーカを構え、闇の司祭に向かってエネルギーを放とうとした。しかし、司祭は冷笑を浮かべながら、手を軽く上げた。


「無駄だ。今の力では、私を倒すことはできない。」


その瞬間、教会全体が暗闇に包まれ、まるで何か巨大な力が渦巻いているかのようだった。李華は咄嗟にバズーカを発射し、強力な衝撃波を司祭に向けて放ったが、彼は軽々とそれをかわし、闇のエネルギーを放った。


「うっ…!」


李華はそのエネルギーに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。彼女のバズーカが手から離れ、床に転がる。


「李華!」


佐藤が駆け寄ろうとするが、司祭は再び手を上げ、強力な闇の力で彼を抑え込んだ。


「この町の人々は、すべて私の手の中にある。お前たちが何をしようと、私の計画は止められない。」


李華は必死に立ち上がろうとするが、体中に痛みが走り、思うように動けない。それでも彼女は諦めなかった。彼女には町を守る使命がある。


「私は…諦めない…!」


李華は再び立ち上がり、バズーカを拾い上げた。そして、最後の力を振り絞り、司祭に向かって再びエネルギーを放った。今度こそ、彼の防御を破ろうとする決意で。


「これで終わりよ…!」


バズーカから放たれた光が、司祭を直撃し、激しい爆発音が教会内に響き渡った。闇の司祭はその衝撃に驚き、姿が一瞬揺らめいた。


「くっ…この私が…!」


彼は体勢を崩しながらも、なおも立ち上がろうとしたが、李華のエネルギーが彼を押し返し続けた。


「今の私の力なら、あなたを倒せる…!」


李華の叫びと共に、バズーカのエネルギーはさらに強まり、闇の司祭を完全に包み込んだ。彼の姿は次第に薄れ、やがて教会の中から消え去った。


「やった…!」


李華は力尽き、膝をついた。司祭は倒したものの、体は限界に近づいていた。佐藤が彼女のそばに駆け寄り、優しく肩を支えた。


「よくやった、李華。だが、これで終わりじゃない。司祭が言っていたように、まだ何かが残っている。」


李華は静かに頷き、再び立ち上がった。


「ええ、私は戦士として、最後まで戦います。この町を守るために。」


二人は教会を後にし、再び町の平和を取り戻すための戦いに備えた。闇の司祭との戦いは終わったが、町にはまだ謎と危険が潜んでいる。彼女の戦いは、まだ続いていくのだった。


### 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る