第16話 闇の真実
黒い影との遭遇から数日が経った。李華と佐藤は町を巡回しながら、行方不明になった家族や影の正体についての手がかりを探していた。町は一見、平穏を取り戻したように見えたが、李華には何か不穏な気配が漂っているように感じられた。
「影の存在は、単なる偶然じゃない…もっと深い謎が隠されているはず…」
李華は心の中でそう確信しながら、町の人々に聞き込みを続けた。しかし、行方不明になった家族についての情報は少なく、彼らがどこに消えたのかは依然として謎のままだった。
そんな中、佐藤がある情報を持って李華のもとに駆け寄ってきた。
「李華、少し分かったことがある。黒い影が現れた場所の近くで、似たような事件が過去に何度も起きていたらしいんだ。」
「過去に…?どういうことですか?」
李華はその言葉に耳を傾けた。佐藤はポケットから古い新聞の切り抜きを取り出し、彼女に見せた。
「この町で何十年も前に、同じような失踪事件があったらしい。行方不明者の数も多く、警察も何度も捜査を行ったが、結局誰も見つからなかった。そして、失踪者の家の近くで、黒い影を見たという証言が残っている。」
「それは…まさか、あの影と同じもの?」
「可能性は高い。しかも、その影が現れた時期と、この町に伝わる『闇の祭典』という古代儀式の時期が重なっているんだ。」
「闇の祭典…?それは一体…」
佐藤は真剣な表情で話し続けた。
「闇の祭典は、かつてこの町で行われていた古代の儀式だ。町に災いが訪れた時、それを鎮めるために『闇の力』を呼び出し、封じるというものらしい。その儀式が行われた場所が、今では地下に封じられているという話だ。」
「じゃあ、その封じられた力が…」
「そうだ。おそらく、あの影はその封印された力が何らかの形で解放され、具現化したものかもしれない。」
李華は驚きながらも、すべての出来事が繋がっていく感覚を覚えた。黒い影、行方不明の家族、そして過去の失踪事件。それらがすべて「闇の祭典」に関係しているというならば、今すぐにでもその場所を突き止め、対処しなければならない。
「佐藤さん、その闇の祭典が行われた場所は分かりますか?」
「少し手がかりはある。町外れの森の中に、古代の祭壇があるという話だ。そこに行けば、何か分かるかもしれん。」
李華は深く頷き、すぐにその場所へ向かうことを決意した。彼女は岡持を肩にかけ、佐藤と共に町外れの森へと向かった。
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森の中は静まり返っており、昼間だというのに薄暗く、何か不吉な気配が漂っていた。二人は古い地図を頼りに、古代の祭壇があるとされる場所を目指して進んでいった。
「この辺りだと思うが…」
佐藤が立ち止まり、周囲を見回す。そこには大きな岩がいくつも積み重なっており、苔むした地面が広がっていた。だが、明確な祭壇の跡は見当たらない。
「本当にこの場所で合ってるんですか?」
李華が尋ねると、佐藤は少し考え込んだ後、あることに気付いた。
「待て、もしかしたら…」
彼は岩の隙間に手を差し込み、力を込めて押し始めた。すると、重い音を立てて岩が動き、その下から地下への入口が現れた。
「隠されていたのか…ここが、闇の祭典の場所だ。」
李華は心を落ち着けながら、その入口に足を踏み入れた。狭い通路を進むと、やがて小さな広間にたどり着いた。そこには古びた石碑があり、表面には何か呪術的な模様が刻まれていた。
「これは…?」
李華が石碑に手を触れた瞬間、突然、部屋の中が不気味な光で満たされた。闇の力が解放されようとしているのだろうか、空気が重くなり、冷たい風が吹き抜けた。
「これは危険だ。封印の力がここに集まっている…」
佐藤が焦りの表情を浮かべる中、李華は静かにバズーカを取り出し、構えた。
「私が、この場所の封印を守る。ここで、すべてを終わらせるわ。」
バズーカが再び光り、強力なエネルギーを放とうとしたその瞬間、石碑が激しく揺れ、そこから黒い影が溢れ出した。影は無数の形を成し、一斉に李華に向かって襲いかかってきた。
「くっ…!」
李華は咄嗟にバズーカを発射し、エネルギーを影に向かって放った。激しい光が影を包み込むが、それでも影は次々と湧き出してくる。
「どうして…こんなにたくさんの影が…」
影の圧倒的な数に圧倒されながらも、李華は必死に攻撃を続けた。彼女の体力は限界に近づいていたが、諦めることはできなかった。彼女には、守るべき町と人々がいる。
「私は…この町を守る…!」
李華の叫びに応えるように、バズーカが再び光り、今までにないほどの力を発し始めた。まるで彼女の意志そのものが武器に宿っているかのようだった。
「これで…終わらせる!」
李華は全力でバズーカを放ち、影の群れに向かって強烈なエネルギーを放射した。その光が広間全体を包み込み、影たちは次々と消えていった。
やがて、影が完全に消え去り、広間は静寂に包まれた。李華はその場に膝をつき、深い息を吐き出した。
「やっと…終わった…」
佐藤が李華のそばに駆け寄り、彼女を支えた。
「よくやった、李華。これで、この場所の闇の力は封じられた。」
李華は疲労の中で微笑みながら頷いた。彼女はまた一つ、町を守るための戦いに勝利したのだ。
しかし、彼女は知っていた。これで終わりではないことを。闇の力が封じられたとしても、この町にはまだ多くの謎と危機が潜んでいる。
「これからも、この町を守り続けるわ…」
李華はそう誓いながら、再び立ち上がり、佐藤と共に地上へと戻っていった。新たな闇が訪れるその時まで、彼女は決して戦いを止めることはないだろう。
### 続く
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