第14話 新たな日常の始まり

封印の巨人との激闘が終わり、李華は少しずつ日常の生活へと戻りつつあった。中華屋「李華飯店」は再び活気を取り戻し、町の人々もまた、平穏な日々を送っている。しかし、李華の心の奥には、まだ完全に消え去っていない不安が潜んでいた。


「巨人を封印できたけれど、この町にはまだ守らなければならないものがたくさんある…」


李華はそんな思いを抱えながら、日々の仕事に勤しんでいた。カウンターの向こう側では、いつものように常連客たちが餃子や炒飯を楽しんでいる。


「今日の麻婆豆腐、最高に美味いよ!さすがだな、李華ちゃん!」


常連の一人が声を上げると、店内は笑い声に包まれた。そんな中、佐藤が店に現れ、カウンターに腰を下ろした。彼の顔には久しぶりに落ち着いた表情が浮かんでいた。


「よう、李華。今日はどうだ?店は順調か?」


「ええ、おかげさまで。佐藤さんも元気そうで何よりです。」


李華は笑顔で答えながら、佐藤に餃子を出した。二人はしばらくの間、特に会話もなく静かに過ごしていたが、やがて佐藤が口を開いた。


「この町も、少しは落ち着いたみたいだな。封印の巨人も再び眠りについたし、当分は安心していいだろう。」


「ええ、そうですね。でも…」


李華はふと顔を曇らせた。彼女の中にはまだ拭いきれない不安が残っていた。


「でも、まだ何かが起こる気がするんです。黒龍のような存在や、あの巨人以外にも、この町には何か隠された力があるんじゃないかって…」


佐藤は彼女の言葉に耳を傾け、真剣な表情で頷いた。


「確かにな。俺もそう思っている。町にはまだ謎が多いし、特に地下には何かが眠っている可能性が高い。だが、今は少し休む時だ。お前も体を休めて、次に備える必要がある。」


佐藤の言葉は落ち着いていたが、どこか遠い目をしているようだった。彼もまた、これまでの戦いで疲労を感じているのだろう。


「佐藤さん、ありがとうございます。私も少し休んで、また戦士としての力を取り戻します。」


そう言って李華は微笑み、店の仕事に戻った。


---


その夜、李華は中華屋を閉めた後、街を一人で歩いていた。静かな街並みは、黒龍との戦いの影響など感じさせず、平和そのものだった。彼女は街の人々が無事に暮らしていることに、ほっとした気持ちを抱きながらも、次の戦いに備える自分を感じていた。


「いつ何が起こるかわからない。でも私はこの町を守り続ける…それが私の使命。」


彼女はそう自分に言い聞かせながら、夜空を見上げた。星々が輝き、静かな時間が流れていた。


その時、李華の胸ポケットの中で、賽銭箱の鈴の音がかすかに響いた。


「賽銭箱が…?」


賽銭箱は以前、黒龍によって消え去ったはずだったが、今、再びその音が鳴り響いたのだ。李華はすぐに路地裏へと向かい、そこで再び賽銭箱が現れているのを見つけた。


「戻ってきたのね…」


賽銭箱は、これまでと変わらぬ姿で佇んでいた。李華は箱に近づき、中に入っていた紙を取り出した。


「依頼が…」


紙には、ある家族が町で困難に直面していることが書かれていた。李華はその瞬間、再び戦士としての使命が呼び覚まされたことを感じた。


「この町には、まだ私の力が必要なんだ。」


彼女は岡持を手にし、静かに賽銭箱の前を離れた。新しい依頼を胸に、再び町を守る戦いが始まる。封印の巨人や黒龍との戦いは終わったが、町にはまだ助けを必要としている人々がいる。


「出前もやってますが、戦士もやってます!」


李華は笑みを浮かべながら、再び戦いに向かうための準備を始めた。新たな日常が、ここから再び動き出す――町を守るための戦いが、再び彼女を呼んでいた。


### 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る