第12話 動き出した地下の影

その翌日、李華は早朝から落ち着かない気持ちで中華屋を開けた。佐藤が地下の秘密を探りに行ったきり、何の連絡もない。心のどこかで不安が募る中、店は開店しても客は少なく、いつも賑わっているはずの中華屋も静まり返っていた。


「佐藤さん…無事でいてください。」


李華はふと呟きながら、厨房で鍋を振るっていたが、突然、店のドアが激しく開いた。入ってきたのは、見慣れた初老の男性、佐藤だった。だが、彼の様子は何かがおかしい。顔は青ざめ、汗でびっしょりと濡れている。


「佐藤さん!どうしたんですか?」


李華が駆け寄ると、佐藤は息を荒くしながら座り込んだ。


「李華…大変なことになった…地下で…動きがあったんだ。」


「地下で?何が起きたんですか?」


佐藤は深く息を吸い込み、荒い呼吸を落ち着けながら話し始めた。


「俺の昔の仲間に会ってきた。彼も地下の力を調べていたが、その時、地下で封じられていたものが動き出したんだ。何か…とてつもなく強大な存在が、目覚め始めている。」


その言葉を聞いた瞬間、李華の心に冷たいものが走った。黒龍との戦いが終わったばかりなのに、再び町に危機が迫っている。


「目覚めるって、一体何が…?」


佐藤は険しい顔で首を振った。


「それが何なのか、俺にもはっきりとは分からない。だが、古い記録によると、その力は『封印の巨人』と呼ばれているものらしい。封印されていた理由は、その力があまりにも強大で、町を滅ぼす可能性があったからだ。」


「封印の巨人…」


李華はその言葉を繰り返しながら、次第に決意を固めた。地下に眠る力が本当に町を脅かす存在であるなら、それを止めるしかない。


「私がその巨人を止めます。佐藤さん、場所は分かりますか?」


佐藤は頷きながら、地図を取り出した。


「地下の奥深くにある古代の封印場所だ。この地図に示されている。だが、行くのは危険だ。お前一人じゃ…」


「私は戦士です。この町を守るために、何があっても行かなくちゃいけません。」


李華は強い決意を込めた目で佐藤を見つめた。佐藤は彼女の覚悟を感じ取り、深く頷いた。


「分かった。だが、俺も一緒に行く。昔の戦士として、少しでも役に立てるはずだ。」


二人はすぐに準備を整え、地下へ向かうことにした。町の平和を守るために、今度は「封印の巨人」と対峙することになる。李華は岡持を肩にかけ、戦士としての役割を胸に刻んだ。


---


地下への入り口は町の外れにあった。古びた建物の中に隠された通路を見つけた二人は、暗い洞窟のような通路を進んでいく。薄暗い中、佐藤は地図を頼りに歩いていたが、次第に緊張感が高まっていく。


「この先に封印の場所があるはずだ。だが、気をつけろ。何が待ち受けているか分からん。」


李華はバズーカを手に構え、いつでも戦える態勢を整えていた。しばらく進むと、突然、前方に広がる大きな扉が見えた。扉には古代の文字が刻まれており、何かを封じ込めている様子が伝わってくる。


「これが…封印の扉…」


李華が扉に手を触れると、冷たい石の感触が伝わってきた。彼女は深呼吸し、扉をゆっくりと開けようとした。その瞬間、扉が重々しく動き出し、中から不気味な光が漏れ出した。


「来たぞ…準備しろ!」


佐藤の声に応じて、李華はバズーカを構えた。そして、扉の奥から巨大な影が現れた。目の前に立つのは、圧倒的な大きさを誇る「封印の巨人」だった。古代の鎖で縛られていたが、その鎖はすでに壊れ、巨人は目を覚ましていた。


「これが…封印の巨人…」


巨人はゆっくりと動き出し、地面が震えるような音を立てて歩みを進めていた。李華はバズーカを巨人に向けて発射したが、衝撃波は巨人の体に当たってもほとんどダメージを与えられなかった。


「なんて強さ…!」


巨人はゆっくりと手を振り上げ、李華と佐藤に向かって振り下ろそうとした。その瞬間、李華はすばやく佐藤をかばい、バズーカで防御を試みたが、巨人の力は圧倒的だった。彼女は倒れ込むように地面に叩きつけられた。


「くっ…こんな…」


李華は必死に立ち上がろうとしたが、巨人の圧倒的な力に対して無力感が広がった。しかし、彼女の心にはまだ諦めの色はなかった。


「私は…この町を守る…!」


李華は再び立ち上がり、バズーカを構え直した。巨人に向かって放つ最後の一撃に全ての力を込めるつもりだった。その時、バズーカが再び光り輝き、進化を始めた。


「これが…新しい力…!」


李華は自らの力とバズーカに託された力を信じ、巨人に向かって最後の一撃を放つ決意を固めた。巨大な存在に挑む覚悟を持ち、彼女は再び戦士としての力を発揮しようとしていた。


### 続く

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