第5話 消えた賽銭箱
その夜も、李華は中華屋で一日の仕事を終え、静かに路地裏へと向かった。彼女の戦士としての使命は、依頼人を助けるために毎晩行動すること。しかし、今夜は何かが違っていた。
「ん…?」
いつもなら路地裏にあるはずの賽銭箱が、どこにも見当たらない。暗闇に覆われた路地に立ちながら、李華は不審な気配を感じた。賽銭箱は、苦しむ人々の依頼を受けて彼女に助けを求める大切な存在だ。あれがないということは、依頼も途絶えることを意味する。
「まさか、賽銭箱が消えるなんて…」
李華は辺りを注意深く見回し、賽銭箱が突然消える理由を考えた。これまで一度もこんなことはなかった。しかし、その時、不意に背後から不気味な声が響いた。
「賽銭箱が見つからないか?」
驚いて振り返ると、薄暗い路地の向こうに不審な男が立っていた。彼は李華に向かってゆっくりと近づいてくる。
「…あなた、誰?」
男はニヤリと笑い、李華の前に立ち止まった。彼の風貌はどこか異様で、普通の町の住人とは違う雰囲気を醸し出していた。
「俺の名は、『影の男』だ。俺たちがこの町を新たに支配するために、まず賽銭箱を消した。あんたが頼りにしていたものをな。」
李華はその言葉を聞いて、急に心臓が跳ねるのを感じた。この男は、賽銭箱を消し去った張本人だったのだ。
「賽銭箱がなければ、誰もあんたに依頼することはできない。つまり、あんたの役目も終わりだ。」
影の男は勝ち誇ったように李華を見下ろすが、彼女は冷静だった。
「依頼が途絶えたとしても、私がこの町を守ることに変わりはないわ。」
影の男は再びニヤリと笑い、腕を軽く上げた。その瞬間、彼の背後から数人の悪党が姿を現した。彼らは武器を手にして、李華を取り囲むように歩み寄ってくる。
「さて、どうする?おとなしく引き下がれば命だけは助けてやるが…」
李華は冷静に岡持を取り出し、いつものように構えた。
「戦士として、私に引き下がる選択肢はないわ。」
その言葉と共に、李華は岡持をバズーカに変形させ、敵に向かって構えた。
「岡持、バズーカモード、起動!」
影の男は驚いた表情を見せたが、すぐに冷笑に変わった。
「ふん、そのバズーカがあったとしても、賽銭箱が消えた今、お前に勝ち目はない。」
「そう思う?」
李華は静かに引き金を引いた。バズーカが火を噴き、轟音と共に強力な衝撃波が敵に向かって放たれる。数人の悪党が一瞬で吹き飛ばされ、倒れ込んだ。
影の男は一歩後退し、驚愕の表情を浮かべた。
「な、なんだ…この力は…!」
「賽銭箱がなくても、私は戦う力を持っているわ。」
李華はさらにバズーカを構え直し、影の男に狙いを定めた。男は焦った表情を見せたが、すぐに嘲笑に変わった。
「いいだろう…今日のところは退いてやる。だが、覚えておけ。賽銭箱は二度と現れない。次に会う時が、お前の終わりだ。」
そう言い残すと、影の男は姿を消すように闇の中に溶け込んでいった。
李華はその場に立ち尽くし、賽銭箱が消えたという事実と向き合った。彼女の使命に大きな変化が訪れたことを感じ取っていた。しかし、彼女は決して諦めない。賽銭箱がなくても、この町を守るために戦い続けることを決意した。
「どんな状況でも、この町を守り抜く。それが、私の役目だから。」
彼女は岡持をバズーカから元に戻し、静かに店へと戻るために歩き出した。
次なる戦いの幕が、再び開かれようとしていた。
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