第6話 頼れる仲間

数日が経ち、賽銭箱は依然として姿を消したままだった。依頼を受けることができなくなった李華は、中華屋の仕事を続けつつ、街の様子を見守りながら、次に何が起こるのかを警戒していた。


「これで依頼が途絶えたわけじゃない。自分で町を見回るしかないわね…」


いつものように厨房で鍋を振るいながら、李華は心の中でそう考えていた。依頼がなくとも、街を守るために彼女は行動し続ける決意を固めていた。


その日の午後、店の常連客の一人、佐藤という初老の男性が店に訪れた。彼は静かにカウンターに座り、李華が出す餃子を黙って食べていた。佐藤は無口で、いつもあまり話さない男だったが、この日は何か違った。


「李華ちゃん、最近…町の様子がおかしくないか?」


突然の質問に、李華は驚いた。佐藤が町のことを口にすることはこれまでなかったからだ。


「ええ…実はね、ちょっとトラブルがあって、町中で悪党が暗躍してる感じがするの。でも、どうして佐藤さんがそんなことを?」


佐藤は一瞬、黙った後、目を細めて李華を見つめた。


「実はな、俺もただの常連客じゃないんだ。」


その言葉に、李華はさらに驚いた。佐藤がただの初老の男性だと思っていたが、何か秘密を隠しているらしい。


「どういうことですか?」


佐藤は深いため息をつき、静かに話し始めた。


「俺は昔、この町のために戦ったことがあるんだ。お前と同じようにな。もっと若い頃、俺もこの町を守るために色々な悪党どもと戦った。」


李華は目を見開いた。まさかこの町で同じように戦士として戦っていた人物がいたとは思いもよらなかった。


「信じられないかもしれないが、俺も戦士だったんだ。今は歳をとって表立って動けなくなったが、それでも町を見守ってきた。」


佐藤の静かな語りに、李華はすぐに彼の言葉が嘘ではないと感じた。


「それで、どうして今になって話してくれるんですか?」


「お前がこの町を守っていることは、前から知っていた。そして最近、町の様子が不穏だ。お前一人じゃ無理だと思ってな。俺も少しばかり助けてやろうと思ってよ。」


李華は佐藤の申し出に驚きつつも、嬉しく感じた。彼女はずっと一人で戦ってきたが、頼れる仲間が現れるとは思っていなかった。


「本当に…ありがとうございます。でも、今の私は賽銭箱がなくなって、依頼を受けることもできないんです。」


佐藤は小さく笑い、首を横に振った。


「賽銭箱なんかに頼らなくても、俺たちは町を守れるさ。情報収集なら俺に任せろ。俺が裏で手を回して、悪党どもの動きを探ってやる。」


李華はその言葉に力をもらい、再び希望を見出した。佐藤の助けを借りれば、より効果的に敵に立ち向かえるだろう。


「分かりました。佐藤さん、力を貸してください。」


佐藤は静かに頷き、再び餃子を口に運んだ。


「これからもお前の店には通い続ける。表向きは変わらず常連客としてな。でも、動きがあったらすぐに知らせるから、その時は一緒に動こう。」


李華は力強く頷いた。頼れる仲間ができたことに、胸の中に温かい気持ちが広がる。


その夜、佐藤から最初の情報がもたらされた。街の裏通りに、新たな悪党たちが集まり始めているという。李華はすぐに岡持を手に取り、戦士の姿に変身した。


「行きましょう、佐藤さん。今日からは、私たち二人でこの町を守るんです。」


佐藤は微笑みながら、李華の後を静かに追った。新たな仲間を得たことで、彼女の戦いはさらに力強いものになる。


次の戦いは、すぐそこに迫っていた。

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