第3話 悪党の計画

昼下がりの中華屋、李華はいつも通り厨房で鍋を振っていた。香ばしい匂いが店内に広がり、客たちは嬉しそうに料理を待っている。店は活気に溢れていたが、李華の心にはどこか影が差していた。昨日の依頼、暴力に苦しむ女性を助けたことで、一層強く感じるものがあった。


「この街には、まだまだ救わなきゃいけない人がたくさんいる…」


彼女が自問自答しているその時、店のドアがゆっくりと開いた。入ってきたのは、中年の男。身なりは整っているが、目には怪しげな光が宿っていた。


「いらっしゃいませ!」


李華は明るく声をかけ、男にメニューを渡した。しかし、男はメニューには目を向けず、店内をじっくりと観察している様子だった。


「美味そうな店だな。あんたが店主か?」


「はい、私が店主の李華です。今日は何をお召し上がりになりますか?」


男はニヤリと笑ってテーブルに座った。


「まぁ、食事は後にして、ちょっとあんたと話がしたいんだが…。」


その言葉に、李華は一瞬警戒心を抱いた。しかし、客として来ている以上、無視するわけにはいかない。彼女は笑顔を保ちながら、男の席に近づいた。


「話?どういうことでしょうか?」


男は怪しげな笑みを浮かべたまま、低い声で続けた。


「実はね、この町に新しい『ルール』を作ろうって話があるんだ。商売をしている以上、あんたもそのルールに従った方がいいってわけだ。」


その瞬間、李華はピンときた。これはただの客ではない。おそらく、町を牛耳る悪党たちの一味だ。


「ルール、ですか?」


「そうだ。この町で商売を続けたいなら、毎月、少しばかりの『協力金』を払ってもらいたいんだ。分かるだろ?お互いウィンウィンってやつさ。」


男は当然のように話を進めたが、李華の心には怒りがこみ上げていた。この町の人々を苦しめるようなやり方を、決して許すわけにはいかない。


「それは…お断りします。この店はそんな不正に手を染めることはできません。」


李華が冷静に答えると、男の笑みが消えた。彼はテーブルを軽く叩きながら、怒りを抑えた声で言い放った。


「断るだと?あんた、俺たちが誰か分かってるのか?俺たちを怒らせると、痛い目を見ることになるぞ。」


「ご忠告、ありがとうございます。でも、やっぱりお断りします。」


李華は毅然とした態度を崩さず、男を見つめ返した。男はしばらく睨んだ後、再びニヤリと笑った。


「…まぁいいさ。すぐに答えを出す必要はない。あんたにチャンスをやるよ。」


男は立ち上がり、ポケットから名刺を取り出して李華に渡した。それには、町の裏社会で悪名高い組織の名前が書かれていた。


「何か考えが変わったら、すぐに連絡してくれ。じゃあな。」


男は名刺を渡すと、ゆっくりと店を出て行った。彼が去った後、李華は名刺を見つめながら、深いため息をついた。


「やっぱり…この町にはまだまだ悪党が潜んでいるわね。」


その夜、路地裏にある賽銭箱が再び彼女を呼んだ。新たな依頼が届いたのだ。李華は名刺をポケットに入れ、岡持を手に静かに立ち上がった。


「今夜もまた、仕事ね。」


彼女は再び変身し、街に潜む悪党たちを一掃するため、静かに歩き出した。町中華屋の店主としての顔を持つ彼女は、今日も戦士としての役目を果たすために進んでいくのだった。


次のターゲットは、町を支配しようとする悪党組織だ。李華の戦いはまだ始まったばかりだった。

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