第22話 真の実力の証明
魔法学園の定期試験が終わってから数日後、私は先生から個別で呼び出された。
「エレノア、授業外での訓練を見てくれて、本当にありがとう」
「いえ、私はみんなと一緒に腕を磨いているだけなので」
私は、正直な気持ちを伝えた。訓練しているが、一緒に成長しているという感覚が強かった。自分のためにもなっている活動なので、そこまで感謝されるようなことでもないと思うが。
「みんなが魔法を学ぼうとするモチベーションが高くて、授業中の集中力も本当に素晴らしい。これは、エレノアのおかげだと思うの」
先生は、そう言うと真剣な眼差しで私を見つめた。心の底からの感謝を感じる。
「そんな、先生方が基礎をしっかり教えてくださるから、みんなの実力が上がったんです。私は、ほんの少し成長のお手伝いをしただけですよ」
私は恐縮しつつ、先生方への感謝の気持ちを口にした。これは、本当の気持ちだ。私だけの功績ではない。
「それでも、ありがとう。あなた達の世代は、あなたがトップに立ってくれて本当に優秀よ。王国の未来が明るいと感じるのよ」
先生は、満足げに頷いた。そんな話をしていると、急に先生の表情が曇った。何か言いづらいことがあるようだ。私は背筋を伸ばし、黙って先生の次の言葉を待った。
「それで、えーっと、ね。実は、追加の試験を行うことになったのよ」
「えっ、追加試験ですか?」
私は、驚きを隠せなかった。成績が良かったのに追加の試験を行うの? そんな私の疑問に答えてくれた。どうして追加の試験を行うのか、という経緯について。
「これは、アルフレッド王子から学園へ指示されたことなの」
「あの人が……?」
「彼は、あなたの実力を疑っているのよ。この前まで平均点だったのに、前回の試験から急にトップの成績なんておかしいと。なにか裏でしているんじゃないかと」
何を考えているんだろう、あの男は。学園に、そんな事を言うなんて。私は呆れてため息をついた。
「私は、正直に実力を出しただけです」
「あなたの実力を疑っていません。ですが、アルフレッド王子は疑いを晴らすために再試験しろと言ってきたの。しかも、試験内容を高くするようにも言われているわ」
説明しながら先生の目には、怒りの色が浮かんでいた。
「本当に実力があるなら、クリアするべき課題だと。それが出来ないのなら、正しい評価を出せと。つまり、遠回しにあなたの評価を下げろと言っているようなものよ」
私は、先生がアルフレッド王子の指示に強い不満を抱いていることを感じ取った。
「先生、どうしてわざわざ私にそれを教えてくれたのですか?」
「この追加試験が不当なものだと感じているから。くだらない見栄のために権力を振りかざして、こんな愚かなことを指示するなんて許せない。学園を冒涜しているわ」
私も同感だった。話を聞いているうちにアルフレッド王子のことが、どんどん嫌いになっていった。改めて思う。あんな男と一緒にならなくて本当に良かった。
「実は、試験の得点を改ざんするように言われたの。それだけは絶対に拒否したわ。この追加試験は、その妥協案というわけ」
先生は、王子の理不尽な要求に翻弄されて苦しんでいるみたいだった。先生だって被害者なのだ。王家の絶対的な権力に、簡単には抵抗できない。
それでも先生は成績の改ざんは拒否して、追加試験という形をもぎ取ってくれた。それならば私は、自分のするべきことをする。
「その試験、受けさせてください」
そう答えた。それを聞いて先生は驚いた。本当に良いのかと、私の目を見てくる。そんな先生の目を見ながら、私は頷いた。
「自信があります。それから、難易度の高い試験というものに興味もあります。挑戦してみていいですか?」
「そう。ありがとう。助かるわ」
試験をクリアする気持ちは十分ある。だから挑むんだ。先生が、ホッとした表情を浮かべた。本当に大変そうね。
別日、追加試験に臨んだ。
たしかに難しい内容だった。だが、解けないわけではない。師匠から、魔法の基礎について徹底的に教え込まれていたから。
ちゃんと理論を理解しておかないと、他の人に魔法の使い方を教えることも出来ない。この知識が大事だと、私は実感している。
筆記試験の後は、実践試験も行われた。用意された課題をクリアしていく。試験の様子を見守ってくれる先生の表情は柔らかい。
上手くいっているようで、安心した。
こうして私は、追加試験を難なくクリアした。私の実力は本物だということを、これでもかと証明できたと思う。
アルフレッド王子の意地悪な計画は、完全に水の泡になったに違いない。
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