第2話 神の失敗
「………私がコインの回転、あるいは軌道をずらす事を前提にした波風でのコイン操作ですか。ここまで全部、あなたの目論見通りなのですね」
『さぁな。まぁ、お前がイカサマしなければ勝負は分からなかったかもな』
「イカサマしなくても540回転の3バウンドで表。どちらにせよコインを貴方に弾かせた時点で、勝負はついていました」
そう言って海を見る女性に俺は落ちたコインを拾って投げる。
投げたコインをキャッチした女性は苦笑する。
それもそのはずだ、コインを弾くまで、ただの硬貨だったのに、逆回転して裏に傾く様に削られてるからだ。
宙を舞っている最中、その場から動きもせずに硬貨を削るなんて事は人間には絶対にできない。
つまりこいつは、さっき言ってたこの世界のものではないと言う発言に納得がいく。
『さて、洗いざらい吐いてもらおうか』
「勿論お話ししますが、その前に一つ」
女性は指を鳴らす。
途端、視界が暗転し、意識が落ちる。
そして、目を覚ました時には。
『は?』
そこは別世界が広がっていた。
「貴方が私に勝っても負けても、ここに来る事は確定していました。あの世界で悪党とも聖人とも言われる伝説の詐欺師。だけど貴方の様な方が、ただの詐欺師で終わって良いまずが有りません。だから私は、この全てが遊戯で決まる、遊戯至上主義の世界に貴方を招待しました。それにしても、驚かないのですね」
『いや、十分に驚いた』
「にしては、冷静な佇まいですね」
『詐欺師として素顔をかくしてるもんでな』
「掴めない人ですね」
『御託は良い。結局俺に何をさせたいんだ』
そう言うと女性はクスリと笑う。
「私はこの世界に新たな風と刺激をもたらして欲しい。その上で貴方はこの世界で成り上がってください」
俺はまだこの世界の事を把握しきっている訳ではないが、女の言う話を要約すると、俺はこの世界に招待され成り上がる必要があらしい。
遊戯で全てが決まる、遊戯至上主義の世界か。
勝負内容は先ほどやった様な事なのだろう。
やがて俺が絞り出した言葉は……………。
『めんどくさいな』
「え?。普通新しい世界での冒険や出来事にワクワクするところじゃないの?!。俺がこの世界で成り上がってやるとかそんな気持ちはないの?」
『普通の人なら、そう言う事を夢に見るかもしれないが、生憎俺は詐欺師だ。夢も希望もないし、結局のところ、この世界でも金持ちからお金を奪い取るだけの話だ』
「えぇ?!。でも貴方、貧しい人にお金を配ってたじゃん。何かの正義心や情があってそう言う事をしてるんじゃないの?」
『誰だよ、そんなこと言った奴』
「誰も言ってないけど!でも何か理由があるんじゃないかって思うじゃん。だったら、貴方は貧しい人達にお金を渡してた理由ってなんなの?!」
『………今思えば何で何だろうな』
「何でって………」
するとその女は、がっくしと膝をついて
「連れてくる人を間違えた……」
『そりゃご愁傷様』
俺は他人事の様に、そう言うのだった。
別に俺は正義の味方って訳じゃない。
人様を騙して金を奪ってる時点で悪側の人間なのだ。
だからこそ俺には、罪悪感もプライドも何もない。
『…‥それにしてもこの世界は、遊戯で全てが決まる世界だよな?』
「えぇ、遊戯で負ければ何でも相手の要件を聞かないといけない世界。そして私は、この世界の遊戯神テスラート。とどのつまり、この世界で一番強くて偉い存在です」
『そうなんだな』
「‥‥反応薄くない?。貴方は人の身でありながら神の私と話せるなんて滅多にないのよ」
『へー』
それにしても、遊戯至上主義か。
……となると。
『じゃあさっきお前は俺に、
「そうですが……」
『お前のあの賭けはこの世界に準ずるものだった。そして賭けは互いに対等なものがないと成立しない。つまりお前は俺の運命の選択である自由をチップにした。となるならば…』
そう言ってテスラートに視線を向ける。
身の危険を感じたのかテスラートが焦り始める。
「ちよ、ちょっと待ってください。確かにその様なルールではあるのですが、あのぉー、そのぉーー…」
『お前の
「いや、しかし……」
『この世界は遊戯至上主義で、全ては遊戯で決まるんだろう?』
とりあえずこの世界の事を知らないといけない。
ならば、使えるものはなんであれ使う。
それが例え、非人道的であっても。
「そうだけどぉ……」
『なら、俺の実験に手伝ってもらおうか』
遊戯至上主義のルール。
それが果たしてどれだけの効力を持つのか。
どこまで賭けれるのか、それを確かめる為にも俺は。
『お前、遊戯神なんだろ?。なら、それなりに高いプライドは持ち合わせてる訳だ』
まずは、その者の尊厳を踏みにじる。
奴隷にする、なども考えたが…‥俺には味方なんて必要ない。
寧ろ邪魔だ。
実験をし終えた段階で用はない。
だからこそ、そんな命令をしなくて良い。
故に俺は、遊戯神に。
『手始めに服を脱げ』
「え?」
そんな命令をするのだった。
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