遊戯の神を倒した伝説の詐欺師は、遊戯至上主義の異世界に招待された!?
焔
第1話 詐欺師は神をも騙す
人ってのは嘘を吐く。
嘘を吐かなかった事がない人間がいない程、この世界で人と嘘は離れられない。
そして俺は、この世界で嘘を生業として生きていた。
そう……俺はいわゆる詐欺師だった。
金持ちからお金騙し取り、貧困な人達にお金を与えを繰り返す仕事。
勿論、俺も生活が掛かってる。
盗んだお金から少しくらい貰って行く。
そう言うわけで今日も今日とて、金持ちから騙し取ったお金をその人達に落としていく。
一仕事を終え、そこら辺で買ったパンを口に含む。
『さて、次の仕事は』
俺はそう言いながらメモ帳を取り出し、スケジュールを確認する。
詐欺師ってのは、色々と大変で少しのミスや狡猾さが欠けると一発アウトで
けれど、それだけじゃ詐欺師としてはやっていけない。
人を騙す嘘のつき方や、相手の嘘を見抜く技術、中には駆け引きにおける学門の知識など、何から何まで詐欺師としてやっていくには欠けてはいけない。
だから、戸籍も家族も友達も何もなく、ただひたすらに知識を蓄えてきた俺だからこそ、富豪から金を毟り取る
と、言っても常にリスクと隣り合わせな生活ではある。
けれど、俺はこの生活も悪くないとおもってはいるのだが。
口に含んたパンを水と共に飲み込み、海岸のベンチに腰を下ろす。
俺は左手をポケットに突っ込み、尾行してた何者かに声をかける。
『俺になんの様だ?』
「……………」
『そうだな。アドバイスするなら、呼吸と視線をもう少し意識した方が良いぞ』
「……お見事です。伝説の詐欺師、
そう言って物陰から一人の女性が現れる。
俺が詐欺師だと知っている奴は育ての親以外存在しない。
となると、売られたか。
『俺の事をどこで知った』
「誰にも聞いてません。私の力で貴方を見つけたのです」
『………』
「そんなに警戒しないでください。あなたの事を突き出しに来たわけでも、脅しに来たわけでも有りませんから」
今までの発言に嘘はない。
となれば、情報一つも無い状況で俺を見つけれた強者か、運がいいだけか。
『………それで、俺に何か用があるんだろ』
その言葉に女性はクスリと笑う。
「貴方と賭けがしたいと思いまして」
『賭け?』
「詐欺師の貴方はここを使うのが得意でしょ?」
そう言いながら自分の頭を、指でコツコツと叩く。
『確かに得意かもしれないが。そもそもとして、俺はお前と賭けをするメリットがない』
「メリットがあると言ったら?」
『……仮にメリットがあったとして、俺が負けたらどんなデメリットがある』
「私と一緒に来てもらいます」
『どこに?』
「それはまだ言えませんが、貴方に不利益を与えないとだけ約束します」
その女の呼吸や表情から嘘ではないとわかる。
故に、何を目論んでいるか分からない。
ならば、ここで不安の芽を積む他ない。
『…良いだろう。それで、なにで勝負を決める』
「そうですね。私が賭けを申し出たわけですから、賭けの内容は貴方に任せます」
『そうだな…………なら」
俺は余っていた硬貨を一枚取り出す。
「コイントスで決めようか。これなら勝敗は平等だ』
「そうですね、じゃあ私は裏で」
『なら俺は反対の表だ』
さて、どう出てくるか。
この女はただものではない事ぐらい俺には分かる。
賭けをしようと言って敗けに来たわけでもない事も。
だが、俺がやろうとしてるのはコイントス。
普通に考えればこの勝負、運に委ねられていると言っても過言じゃない。
それなのにも関わらず、そいつは楽しそうに笑みを浮かべている。
まぁ良い。
今はこの勝負に勝てば良い。
タイミングを見計らって、コインを弾き飛ばす。
宙に舞ったコインは回転しながら一度地を跳ねる。
特に変化はない。
そしてコインが二度目の着地をした瞬間だった。
コインが急に逆回転しはじめる。
三度目の着地でコインは裏に倒れ様とし、女性の声が響き渡る。
「私の勝ちですね」
『やはり何かしてくるとは思っていたが流石に想定外な方法だ。説明の付かないイカサマ』
「貴方の敗因は、私をこの世界の者だと思っていた事です。それでは一緒に」
と勝ったつもりになった女の言葉に俺は。
『それは、コインが裏になってから言うセリフだぞ。まぁ、その程度の想定外で良かったよ』
と言葉を捨てた刹那。
ほんの僅かに強い風が吹く。
「なっ?!」
『俺はお前の様に、妙な力は持っちゃいない』
コインは風に押されて面が青を向く。
そしてそのコインは………………
『ただ、少しばかりずる賢い事を生業にしててな。お前が何かする事ぐらい分かってた』
表の面で地面に落ちていた。
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