第10話 自分の武器

「体力がないな。全く…」

「はぁ…はぁ…うっ…」

「キツい…」

「足動かない…」


15周するまでに2〜3時間かかってしまった。もしかすると騎士も体力があった上での結果なのかもしれない。しかしこれでは…装備もつけないでこの結果はまずい。


「まぁいい。どのみち毎日やるから。覚悟しとけ」

「「「「「…」」」」」


絶望したような表情を見せる騎士達。それを見たイザベラは不思議がった。


「何故そんな嫌そうな顔をする?たった1日で強くなれるわけではない。何事にも回数を重なる事が重要だ。それじゃあ整列しろ、休憩は終わりだ」


まだすぐには動けないか、だが命令に対しての動きも雑なのはまずい。流石に疲れていてもそれぐらいはしっかりしてほしかった。


「色々指摘したいが…挙げるとキリがない。一旦それは後回しだ。さてお前らに聞きたい。剣術や格闘術は学んでいるな?」


疲れていながらも問いかけに頷く騎士達。どちらが上なのかようやく理解したらしい。するとフィルがスッと手を挙げた。


「我が国の剣術を学びました」

「教えてくれてありがとう。しかしそれだけではダメだ。一昨日の試合で剣がなくなった途端に降参する者が何人もいた。つまり剣がなくなったら何も出来ないという事になる」

「仰る通りです」


すみません…と申し訳なさそうな顔をして謝ろうとするフィルを止めた。


「いいか?国を護るのはお前達だ。手がなくなっても、足がなくなって動けなくなっても戦え。もしかしたらその間に味方が助けに来てくれるかもしれない」


傭兵達はよく頷いている。実際、死ぬかもしれない状況でイザベラに救われたことがある者ばかりなので彼女の言っていることは正しい。


「しかし剣士しかいないというのは防衛を担う上で良くない。なのでこれからお前達の武器適正を見る」


試合で剣に振り回されているやつもいたので適正を見るのは絶対にやるべきことであった。すでに何人か弓や槍などが向いている人をイザベラは見つけていた。


「あの…」

「なんだ?」


フィルが手を挙げた。何か質問があるのだろうか?


「何故先ほど走らせたのですか?」

「体力を増やすというのもあるが…無駄な力をなくす。というのが理由だな。それにこの適正検査は疲労があればあるほどいいのだ」

「どうゆうことですか?」


フィルや他の騎士はこういった検査について疲れていない時にやるものだという認識がある。そのため何故疲れているのにやるのか理解が出来なかった。


「こればっかりは口で説明するのは難しいが……武器と手が一体化するような感覚になるのだ。私も最初はお前らが腰につけているような細い剣だった。しかし全く手に馴染まなかった」


するとイザベラは背中に担いでいた大剣を抜き、片手で持ち上げた。


「ある時、こいつグリムスを手にした。その時は疲れて剣を握る握力すらなかったのに何故か持ち上げる事ができたのだ」


すると後ろを向き、ブンッと空に向かって1回素振りをした。振った方向を見ると雲が半分に割れていた。


「このように自分に合う武器を極めればこんな事まで出来る。無論傭兵達にも試してみたが間違いない。自分に合う武器を見つけている」

「なるほど…ありがとうございます」

「よし。ならこれから適正検査を始める。手当たり次第に試しても良いし、興味があるのを手にとってもいい。それじゃあ始め!」


その後、傭兵達は各々散らばり、騎士達に武器の使い方などを教えていた。



「そうそう。そんな感じ。センスあるね」

「あ、ありがとうございます!」


「うーん…君は偵察とかに向いてないかい?」

「そうかもしれません。正直戦うのは苦手で…」


「この刀?っていう武器良いですね」

「でも扱いは難しいよ?」



少し時間が経ち、周りを見ると傭兵と打ち解けた者が何人か。すでに自分の武器を見つけた者もいる。にしても…全員が剣士というのは過去の大臣は馬鹿なのか。


「あ…あの!」

「ん?何だ?」


考えにふけっていると突然声をかけられた。私よりも少し背が低い女か…女?


「その大きな剣…私も持てますか?」

「持ってみるか?」


イザベラは大剣グリムスを鞘ごと渡そうする。


「いいのですか?」

「構わん。持てる奴はそういない」


どうせ持てる者は私しかいない。今までずっと持ってみようとした奴らは全員ダメだった。今回もそうなると思っていた。


「持てました…」

「なに?」


キツそうな顔をせずに持っている。イザベラは少し驚いた。それに余裕で持っているようにも見える。


「珍しいな…ちょっと待て。お前名前は?」

「リアーナと言います」

「リアーナ、君に質問がある。魔力はあるか?」

「ありません」

「全く?ゼロか?」

「はい。でもその代わりに昔から身体能力は高いんですよ」

「…」


まさか私と同じような奴がいるとは…あとでセバスを呼んで検査してもらおう。面白い事になったと呟いた。



「あの…?」

「あぁすまない。それでお前は私に教えてもらいたいのか?」

「はい!色々見ましたけど、イザベラ様のその大きな剣に惹かれました」

「分かった。良いだろう。私に教えを乞う者は初めてだ。しかしあいにくこれしか手持ちがない。明日からでも良いか?」

「構いません」



イザベラはリアーナに対して疑問が生まれていた。無理もないだろう、自分と同じ体質がいるとは思ってもなかったのだから。


「質問だが、さっきの走り込みはどうだった?」

「あまり疲れなかったです。まぁ周りの仲間とペースを合わせていたので」

「剣は?」

「一昨日の試合で壊しました」

「なるほど。だが何故抵抗しなかった?」

「勝てる方法が思いつかなかったので、それならさっさと負けた方が良いかなって」

「そうゆう考え方は珍しい」


イザベラは「戦場で1番大切なのは判断力である」と考えているのですぐに決めれるというのは良い事であった。


「剣がないのか…ちょっと待ってろ」


大急ぎで彼女の剣を作らせる必要がある。セバスは…今アステールの手伝いをしているだろうが、それよりもこっちが優先だ。


そう考えたイザベラは笛を吹く、セバスとクローネは聞こえたはずだ。おそらく10分か15分ぐらいで来るはずなので、その間にリアーナに色々と話す事にした。


「もしかするとリアーナは私と同じかもしれない。私も魔力を持ってない…が、身体能力は抜群に高い」

「えっ貴方と同じ?」

「そうだ。これを呪いと捉えるか…祝福と捉えるかはお前次第だかな」

「…」


うーん…と少し考え込むリアーナ。


「私は祝福だと思います。この力のお陰で今があるし、何より役に立てるので」

「そうか、良い考えだな」

「ありがとうございます!」



それから少し経って、セバスとクローネがやって来た。アステールの手伝いは大丈夫なのかと聞くと「まぁ一国の王様なので…なんとか」とクローネにはぐらかされた。


その後彼女の魔力や身体能力を確認し、イザベラと同じ体質という事が分かった。


そして急いで、リアーナの能力に合った大剣を我が領地の鍛治職人達に発注。そして次の日の朝にはこっち王都に届いていた。


あとで彼ら鍛治職人には大量の鉱石、そして金貨を送っておこう。






























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