第4話 国王アステール

この依頼は前回のとは違って国に関する事なので、まずは国王にその訳を聞きに行くことにした。


10名の兵士とクローネを連れて馬車に乗って王都に向かう事にした。前回王都に行った時は私が先走りしたせいで兵士などの準備が出来なかったのである。


まぁ実際、兵士などを連れて行かなくてもいいと思っているが……セバスチャン曰く「辺境伯が単独でどこかへ行くというのはあまりよろしくない」らしい。


ちなみに兵士は全員イザベラの配下。つまり元傭兵。実力は折り紙つきである。


その影響もあってか、何事もなく王都に着いた。イザベラはというと…途中から外に出て、兵士と談笑したり、夜には少し格闘の手合わせなどをしていた。




「来たぞ」

「すまんな。わざわざ遠くから」

「構わん。この依頼は王都に行かないと出来ない依頼だ。それにこっちの屋敷に滞在できる」

「そうか」


イザベラ達は王都の中心にある王城に赴いた。何回も王城に通ってるので顔パスである。今は城の中の応接の間にて国王との話し合いである。


「にしてもやっと動き出したか」

「私の信頼できる仲間を集めていたら時間がかかってしまった」

「お前らしいな。外堀から埋めていくのか」

「その方が勝率は高いであろう?」


ニヤリと彼は笑った。彼はこの国の王様「フライム・アステール」という。前に民の反乱によって亡命をし、イザベラに依頼を送り国を取り返してもらった人物である。


「さて…もう分かっているとは思うが、3つの公爵家を変える。そうしなければこの国に未来はない。また民が怒りに満ちるその前に対処しなければならないしな」

「もしまたそうなったら、私が対処しよう。依頼を出してくれたらな」


そう言うと、アステールはハハッと笑った。


「盗賊の件といい…お前にお金を払いすぎている。せいぜい10年後とかになってほしいがな」

「それでどうやるんだ?正直私は隠密行動などはあまり得意では無いぞ?」



この依頼が手紙で届いた時、イザベラは何故私が呼ばれるのか疑問に思った。仮に暗殺依頼などであれば元暗殺部隊のセバスに指名依頼が来るはずなのである。



「暗殺はしないし、人は殺さない」

「なら何故だ?」

「議会に出て演説してほしいのだ」


紅茶を少し飲んでからその訳を話し始めた。何やら国王なりの考えがあるらしい。



「自分の立場を分かっているか?」

「いや全く。自由に行動していいと言われてるからただその通りにしているだけだ」


即答だった。イザベラの答えに対してはぁとため息をついたが話を続ける。



「辺境伯は国防を担っている。まぁ領地が隣国と面しているから必然だな。ここで重要なのが兵士の強さだ」

「ヴァルデン領の兵士は、私の傭兵団で構成されている。何か問題が?」


疑問をアステールにぶつかるが彼は「ないない」というジェスチャーをした。



「辺境伯になった時…2年ほど前か。最初はいくつかの貴族が貴殿の実力を疑問視していた。まぁしばらくしたら何も言わなくなったが」

「なら何も問題はないな」

「そこが大事なのだ」

「?」



彼女は傭兵から成り上がった前代未聞の貴族。しかも任命されたのは国を守る辺境伯。それなのに軍事力があり、貿易も農業も全てが上手くいっている。


このレッテルがどれほどの価値があるのかという事をアステールから説明された。イザベラは改めて自分がやってきた事の凄さを実感した。



「なるほど。私が国王の後ろにいると意思を表せば一気に形勢は傾くと思っているのか」

「そうゆう事だ。公爵家とはいっても当主が変わらないせいで何もかもが形骸化しつつある。当主を下ろすなら今しかない」

「分かった。その依頼受けよう」

「ありがとう」


そう言ってアステールは手を差し出したので手を握った。これは古くからの風習で依頼を受けたという事実を確認するものである。


「それでいつ行うのだ?」

「明後日、昼の鐘が鳴り終わったら議会が始まる」

「了解した。それまでに私が言う事を考えればいいのだな?」

「そうだ。正直…こちらで言うことを考えようと思ったがイザベラ自身の言葉の方が説得力が上がると思ったからだ。すまない」


そう言って少し申し訳なさそうな顔をしたアステールを見てイザベラはため息をついた。


「そのぐらい問題ない。全く…頼り甲斐がない王様だな。もっと自信を持て」

「…善処する」



それから2人は最近の出来事や他の国の情報を交換し、その日は終わった。アステールもイザベラもお互いに有意義な時間だったとのちに述べている。

























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