内政の大改革

第2話 予想通り

「やはりか…」

「予想通りでしたね、イザベラ様」

「む、セバスか」


私の住んでいる屋敷の庭園でギルド新聞を読んでいたところに執事のセバスチャンがやってきた。彼は元々、この国の暗殺部隊に仕えていたが先日ブチギレていたあのバカ貴族に辞めさせられたそうな。そこを私が雇ったのであった。


ちなみにこの国の名前は「フライム王国」という。


そして私が読んでいる「ギルド新聞」というのは、世界中に存在するギルドが発行している新聞である。「これを読めば今何が起こっているのか全てがわかる」と言われるほど、様々なことが書かれている。


ギルドというのは、簡単に言えば仕事の仲介所みたいなところで傭兵稼業をする場合は絶対になくてはならない場所である。



「あいつは私の助言を何故参考にしないのか」

「おそらく、イザベラ様よりも功績を挙げたいと思ったからなのでは?」

「バカな奴だ」


新聞には「フライム王国大臣。盗賊に敗れる!」と書かれていた。たかが盗賊如きに負けるとは苦笑するしかない。まぁ今回の盗賊は人数も強さも桁違いらしいのでなんとも言えないが…今思い出してもあの出鱈目な作戦は勝てるわけがなかった。


今頃、アイツは責任転嫁をしてる頃だろう。



「して…何用で来たのだ?」

「あっそうでした。王から手紙が来ております」

「まさかこいつの尻拭いをしろとか言うんじゃないだろうな?」


セバスから手紙を受け取る。手紙にはしっかりと王国の印の封蝋がされており、こう書かれていた。


〜〜〜


うちの無能貴族が本当にすまない。あの大臣は即刻解任させた。もう新聞で見たと思うが、例の盗賊を捕らえてほしい。無理なら倒しても構わない。 報酬は300万ゴルディでどうだろうか?


足りないなら連絡してくれ。すぐに用意する。


〜〜〜


「いつも通りですね」

「あぁ。そうだな。だが久しぶりに体を動かせる」

「笑みが怖いです。イザベラ様」


久しぶりに体を動かせる事に、笑みがこぼれる。なんとか落ち着こうとするが心の昂りが止まらない。


「人数はどうしますか?」

「このぐらい、私1人で十分だ」

「承知しました。いつご出発しますか?」

「今すぐにだ!私の武器は?」

「ここに」


いつの間にか、セバスチャンの手には私の使っている大剣があった。セバスはいつも何処からともなく私が欲しいものを用意してあるがどうやっているのか知りたいものだ。


「明日には帰ってくる。王には急いで連絡しておけ」

「承知しました」


イザベラは防具もつけないで武器だけを担ぎ、走り出した。馬に乗ったほうがいいという声もあるだろうが、彼女の場合は走って行ったほうが馬よりも速いのである。


正直、久しぶりの戦闘に心が躍っているのかもしれない。いつも以上に足が軽い。これなら半日もしないで盗賊の拠点につくかもしれない。





「あれ?イザベラ様は?」

「主様は行ってしまいましたよ」

「そんな…クッキーを焼いてきたのに」


ちょうどイザベラと入れ違いになってしまったらしい。クローネの耳は垂れ下がり、尻尾も元気がない。落ち込んでいるようだ。


「主様はどこに?」

「国王の依頼でお出かけに」

「久しぶりですね。前回の依頼は確か…半年も前ですか。爆発しますね」


戦闘狂ですから。とセバスは呟き、彼女の戦う姿を思い出した。


嬉々として敵を見つけて斬り込んでいく。いつもの冷静な姿とはまるで違うあの姿。止まらない暴力装置と言われるのも無理はない。


「彼女の見立てでは明日の朝ぐらいに帰ると思っていますが、私の予想は今日の日没には帰ってきますよ」

「そうですか。では夕食の準備をしておきましょう」



さて国王様には魔法筒で早急に返事を出しておきましょう。国王様も頼れるところがイザベラ様ぐらいしかないというのも今後の不安要素ではありますが……


セバスはイザベラの無事を祈った。




「早く着いたな。早急に終わらせよう」


確かここの盗賊団は200〜300人の盗賊で構成されている。その中のボスが強いらしい。だとしても王国の兵士が負けるのはあまり腑に落ちない。何か持っているのだろうか?


「まぁいい。斬って斬って斬るだけだ」

「そこのお前!何者だ?」


見回りをしていた盗賊が彼女を見つけて声をかけてきた。流石にこの軍服姿はまずかったか。


「私はただの傭兵だ。依頼でお前らを潰しにきた」

「おいおい…女がたった1人で?」

「何か問題でも?」


背中に担いだ大剣を抜く。彼はすぐさま戦闘態勢に入り警鐘を鳴らした。盗賊達が私に立ち向かってくる。そう考えた時、自然と笑みが溢れた。


「な、なんで笑っていやがる!」

「今から私1人に対して大勢の敵が向かってくるのだろう?これほど嬉しいことはない」

「何を言っt」


たった一回。横に素早く剣を振った。ただそれだけの事。それなのに彼の頭と体は分離し、2度と戻ることはなかった。


「さぁ来い!私をもっと興奮してみせろ!」


久しぶりの対人戦。これに落ち着けと言われても私には無理だ。ワラワラと盗賊が現れ、それぞれの武器を持ち、私に向かって走り出した。目の前に死んだ仲間がいるのが分かったのだろう。


「死ねやぁぁぁ!」

「おそい!」


ガキンッと相手の剣を弾き、吹き飛ばす。自分よりも大きい敵でも全てねじ伏せていく。ものの数分で周りには倒れた盗賊とまだ物足りなさそうな顔をしているイザベラしか残っていなかった。


「こんなものか…弱いなッッ!」

「おいおい、これも避けるのかよ」


不意打ちで矢が飛んできたので咄嗟に避ける。するとアジトからボスであろう人物がやってきた。最初はニヤニヤしていたものの、私の姿を見るなり、慌てだした。


「おいおい…ちょっと待て。お前まさか…」

「依頼でお前らを捕えるか倒す必要があるただの傭兵だ」

「国潰しが来やがった…!」

「では降参してくれると助かる」

「アホが!誰が降参なんかするか!」

「そうか。ならば死ね」


イザベラは一切の動作も見せず一気に盗賊のボスに近づき、剣を横にして思いっきり吹き飛ばした。咄嗟に防御の体勢をとったが意味がなかった。


「ぐっ…ガハッ」

「しまった…加減を間違えた…重傷だな」


盗賊のボスはなす術なく吹き飛ばされてアジトの建物に激突。そしてガラガラと音を立てて、壁が崩れた。


周りを見ると気絶した者、すでに生き絶えている者しかいない。ひとまずロープで生きている者を捕らえ、近くの木に縛り付けておいた。


捕えられた盗賊達はみんな伸びており、しばらく目覚めない。見た感じ明日まで目を覚さないだろう。


「取り敢えずこれでいいだろう。あとはなんとかしてくれる」


盗賊達をその場に残し、彼女は屋敷に戻ることにした。今日の戦闘を振り返ると短い時間で終わってしまい、全然物足りないと思ったイザベラであった。














































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