第50話副団長side ~複雑な心境2~
「副団長、お時間です」
「わかった」
近衛騎士団副団長の職務。それは、王族の護衛だ。今日は第二王子殿下の護衛につく日だった。
「では、行こうか」
「はい」
この国の王子は四人。
王女は誕生しなかったが、その分、男児に恵まれた。
第一王子、第二王子と、年子でお生まれになっている。
双方ともに文武両道。
第一王子殿下は、文に優れている。
第二王子殿下は、武に長けていた。
王太子は、第一王子殿下だ。
王太子殿下は、王太子として国王陛下の補佐をされている。
そんな王太子殿下を補佐しているのが第二王子殿下だ。
「副団長」
「なんだ」
「あの噂は本当でしょうか」
「どの噂だ」
「第二王子殿下が辺境に赴くと言う話です。なんでも辺境伯との縁組が持ち上がっているとか」
「ああ、そのことか。そうだな、事実だ」
第二王子殿下は、王太子殿下の右腕でもある。
だが、武に長けた第二王子殿下を王にと押す声もある。
「第二王子殿下が辺境に婿入りするのではないか、と囁く者達もでてきております」
「ああ」
「本当なのでしょうか?」
この部下は恐らく第二王子に傾倒している者‥‥‥ではないな。確かどこかの子爵家の出身だった。実家か、いや、もしかすると寄り親の貴族が第二王子を担ぎたがっているんだろう。それとも既にその勢力派閥に組み込まれているかだな。
「さぁ、どうかな」
「副団長」
煮え切らない反応に部下は不満なようだ。
たく。これだから若い連中は。こんな誰が聞いているか分からない王宮の廊下でする話じゃねぇってのに。
「おい、それ以上口を開くな。誰かに聞かれでもしてみろ。不敬罪で処罰されちまうぜ」
「っ!?」
言われて気が付くようじゃまだまだだな。若いからか?それとも家の連中から聞いてこいと命令されているのか?面倒だな。こういう輩は何もこの部下だけじゃない。
「まあ、縁組はするだろうよ。それが成立するかは別だ。王太子殿下もまだ婚約者が決まっていないからな。道理を弁えている第二王子殿下だ。王太子殿下の縁談が決まるまでは御自身の婚姻は控えられるだろうよ」
「そ、そうですよね……」
心なしかホッとした表情をする部下は腹芸ができないようだ。まあ、まだ若いからな。プライベートの時はそれでもいい。だが仕事中はもう少し腹芸ができるようになってもらわねぇと困る。表情でまるわかりっていうのはな……。
副団長である俺が言っているからか?少しは疑えよ。この理屈が通るなら何で第三王子が先に婚約したのかって話になる。
あれか?第三王子が即位する目途はないと思ってるからか?
失礼だが、それが大半が思っていることだな。末の第四王子は未だ幼いし……。ま、優秀な上の二人を差し置いて下の二人が即位することは万が一にもないだろう。
「無駄話は終了だ。仕事に集中しろ」
「は、はい!」
単純なヤツだ。
俺も昔はそうだった。
何時からだ?
オンとオフの切り替えが上手くできるようになったのは。
歳を取ると余計なことまで考えるようになる。
歳を取れば取るほど、嫌でも現実が見えてくるってもんだ。
ここ数年できな臭くなってきている国がある。
それを警戒しての縁組だ。
殿下達の縁組が慎重なのも頷ける。
これは俺の勘だ。
第二王子殿下は辺境に行く。
国境の要の場所に――
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