第21話副団長side ~従兄妹~

 甘えていたんだ。

 従兄妹という関係に。

 幼馴染の従妹に。


 俺は男爵のじーさんに可愛がられていた。

 だから男爵家に頻繁に遊びに行ったし、よく泊まったりもしていた。

 俺の家がじーさんの近くだってのも理由のひとつだ。遠方だったら流石に無理だったろうさ。


 男爵令嬢のロディーテと仲良くなるのは早かった。

 年が離れていた分、妹ができたみたいに嬉しかったのを覚えている。

 ほんのガキの頃から人並外れた美貌のロディーテに甘えられることに悪い気はしなかった。

 ロディーテは俺を「おにいちゃま」と呼んで慕ってくれていたし、俺も彼女を可愛がった。兄妹みたいな関係だった。


『おにいちゃまは騎士になるの?』


『まだ分かんねぇな』


『そうなの?』


『ああ、先ずは騎士団の入団テストに受からねぇと話しになんねぇしな』


『おにいちゃまなら大丈夫よ』


『おいおい』


『おにいちゃまが入団テストに合格するまではロディの騎士様ね』


 可愛いことを言ってくれる従妹。

 小さい頃から「ロディはお姫様で、おにいちゃまはお姫様を守る騎士様」と嬉しそうに語っていた。

 ロディーテは俺によく甘えてきた。


『おにいちゃま、だっこして』


『ロディ、一緒に遊んで』


『おにいちゃま、絵本読んで』


 俺はロディーテのおねだりを全部聞いた。可愛い従妹を可愛がるのは当然だろう?

 それは俺がアンビーと結婚することになっても変わらなかった。


 甘え上手なロディーテはアンビーに懐いていたし、自他共に厳しいアンビーもロディーテは例外なのか随分可愛がっていたと思う。

 真逆の二人だからこそ気が合ったのかもしれない。

 ロディーテがプライド伯爵と結婚してからは、流石に会う回数は減ったが。

 身分が違い過ぎて、気軽に会うわけにはいかなかった。

 ロディーテがプライド伯爵と結婚すると聞いた時は驚いたさ。


 まさか、伯爵様と!?

 何かの間違いじゃねぇのか?


 何度、伯父に確認したことか。

 聞けば、プライド伯爵の一目惚れで、あっという間に婚約まで話が進んだらしい。ロディーテも伯爵にベタ惚れで、幸せそうだったと聞いている。


 プライド伯爵は悪い噂のない良い人物だ。性格も穏やかで、芸術家らしく少し変わった男だと思った。

 美男美女の夫婦は、社交界でも有名なおしどり夫婦として有名になった。


 俺の心配を余所に、ロディーテの結婚生活は順調だった。

 絵に描いたような新婚生活を送っていた。

 プライド伯爵は浮気をすることもなく、ロディーテを溺愛していたからだ。

 子供も生まれて順風満帆。


 それが、まさか……こんなことになるなんて。

 あの頃は夢にも思っていなかった。




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