マリオンのイケメンじいじと王子の帰還
「冒険者ギルド、北西部統括支部長及びギルドマスター、ダリオン・ブルーだ。久し振りですなあ。タイアドの国王陛下」
「う、うむ。ダリオン殿、よく参られた」
マリオンの母方の祖父、ダリオンがタイアド王国の王都へやってきたのは、マリオンが書いた告発文がタイアド王国の新聞に掲載された、なんと翌日である。
本来なら早馬でも何日もかかる距離を、何と空を飛ぶ飛竜便のコンテナに荷物と一緒に入って数時間でやってきた猛者である。
上空を飛ぶ飛竜便のコンテナの中は低温になってとても寒い。良い子は絶対やっちゃいけません。
白髪の混ざるピンクブラウンの髪を短く刈り上げ、同じ色の顎髭に鮮やかな水色の瞳の七十代ほどの老人だ。
若い頃は大剣を振るう冒険者として知られていて、現在でも数少ないSSランク保持者である。
背も高く大柄で筋肉盛り盛り、日焼けした肌は精悍。
その上、年を経てなお衰えぬ男の色気ムンムン。冒険者ギルドのイケメン高齢者部門の人気投票でここ十年ずっと上位常連の男だった。
要するに顔がいい。身体もいい。冒険者ギルドという世界的組織のお偉いさん、と三拍子揃った隙のない男、それがマリオンの祖父である。
ちなみに彼は声もいい。彼に声をかけられて落ちなかった男女はいなかったのだが、唯一振られた今の妻、マリオンの祖母に出会ってからは己の容姿に驕ることなく妻一筋、家族一筋のマイホームパパ化したことでも知られていた。
「以前お会いしたのはサミット開催国でしたか」
「あ、ああ。南部の共和国だったな」
それから、謁見室で国王、王妃、王太子の三人でこのダリオンを出迎え歓談していたわけだが。
「さて、それで」
ようやく本題だ。
「おう、わしの可愛い孫ちゃんに何してくれてんの? 喧嘩なら買うぞコラ」
恫喝するような低い声は、広い謁見室にとてもよく通った。
孫のマリオンがここ、タイアド王国を訪れることになった経緯は、もちろん祖父のダリオンは知っている。
だが、冒険者ギルドのお偉いさんで家を留守にすることが多いダリオンは、その後のマリオンのことをあまり知らなかった。
「手紙がさ。全然来ねえんだよ。俺は毎週送ってんのに一通も。初めて外で働くわけだし、忙しいんだろうな、変に催促したりしたら孫ちゃんに負担かけちまうかなって気遣ってたら……何なん? やっと手紙が来たと思ったら『じいじが一通も手紙くれなくて泣く日もありました』とか俺が泣くわ!」
「「「………………」」」
大きな日焼けした手に握られているのが、そのマリオンからの手紙なのだろう。
「一体この落とし前はどうつけるおつもりで?」
SSランク冒険者の覇気で睨みつけられて、国王も王太子も王妃もビクッと震えて背筋が冷えた。
だが、何とか国王が口を開きかけたとき、遠くから変な音が聞こえてきた。
ヒエエエエエ……
キウウウウウ……
フヒャアアアアア……
「エドアルド第二王子殿下のご帰還です! 国王陛下にさっそく報告のためお目通り願いたいとのこと」
「あ、後にせよと伝えよ!」
今はまずダリオンの相手が先だ。
しかし、謁見室の扉をぶち破りかねない勢いで、大きな荷車を引いてやってきた人物がいた。
真紅の騎士服を身にまとい、タイアド王族特有の金髪碧眼の若い青年。美形だが愛嬌ある顔立ちの、エドアルド王子だ。
「父上! 兄上! 任務完了しました、これは討伐報酬! すごいでしょ!」
キヒャーヒャヒャヒャヒャ!
エドアルド王子が、仔犬が獲物を飼い主に「見て見て!」するかのようにエメラルド色の瞳をキラキラ輝かせ、胸を張って見せた荷車の中には。
たくさんの巨大な野菜が山と積まれている。
だがどういうわけか、その野菜の表面には窪んだりヘコんだりで顔のようなものがあって、皆揃って奇声を上げていた。
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