第2色 丸内林檎は逃亡中?

 【数年前】


 午前十時、私、丸内林檎まるうち りんごは薄暗い路地裏を走っていた。 荒い呼吸を整える暇もなく、ただひたすらに走っていた。 正しく云えば《逃げていた》。 何から逃げているのかというと、


「いたぞ! そっちだ!」


 野太い声が響く。 水色の服と帽子の格好をした人達に……そう、『警察』に私は追いかけられている。


「りんごちゃん! こっち!」


 私の隣を走っていた青年が曲がり角を曲がり、私もそれに続く。 しかし、その先にみえたのは、まっすぐ続く道ではなく、空に向かってそびえたつ壁だった。


「そんな……!?」


 私達は引き返そうとしたが、数十メートル後ろからは警察の足音がドタバタと地響きを立てて少しずつ確実に近づいてきていた。


「どうしよう、りんごちゃん!?」


 どう考えたってこのままでは捕まる。 そして、私は荒い呼吸を整えて言った。


「丸内林檎史上最大の危機です」





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