マルッと解決! 丸内林檎の色彩(カラフル)事件簿
たぬきち
はじめての事件
第1色 丸内探偵事務所
少しレトロな雰囲気を醸し出す商店街、その中に店を構えるひとつの八百屋があった。 その八百屋の二階にひとつの探偵事務所がある。
その探偵事務所の中では、一人の女性が書類をファイルにしまい、一仕事を終え、机に置かれた冷めたアップルティーの入ったコップを手に取り口に運ぶ。
「……ふぅ」
そうその女性こそ、この探偵事務所の若き所長、
今日も今日とて彼女は探偵の責務を全うしている。 この街の事件はこの私が全てマルッと解決してみせると。
「何自分に浸ってるんだ」
………………。
「今日もたかが猫探しで街の平和を護ったとでも思ってるのか?」
私の優雅な時間を勝手に事務所に入ってきた一人の刀を腰に掛けた黒髪の男性がぶち壊す。
「たかが猫探しじゃありませんよ。 猫にだって居場所や帰る場所があって、帰りを待つ飼い主様の下へ送り届けるのも私達の仕事です」
「そうそう、ボクたちあってこその平穏って奴だよ」
黒髪の男性に空中で浮きながら胡坐をかいている陽気な男が私の言葉に肯定してくれる。
「それと、『黒崎さん』、いくら知り合いでも勝手に事務所に入ってきて貰っては困ります。 奥さんにもよく注意されてましたよね?」
私が注意すると、彼は何故か「……ふっ」と鼻で嗤う。
この黒髪の男性は『
「黒崎さん、こんにちは、よかったらこちらに腰かけてください」
空中で胡坐をかいている男性とは別の爽やかな男性が客間の机にコーヒーの淹れたコップを置き、黒崎さんに声を掛ける。
「わあーい、ありがとう、アラン! 砂糖とミルクちょーだい」
「ち、ちがうよ。 これは黒崎さんに出したものだから、ノワルのじゃないよ」
図々しくもお客様に出したコーヒーを飲もうとするのを止める。
この二人は私の幼馴染の
「ノワルはお客様じゃないから自分でいれなよ」
「そんな固い事いわないでよ~」
二人はコーヒーの入ったコップの取り合いをする。 そんな二人を横目に私は黒崎さんに声を掛ける。
「ところで、今日はどのようなご用件で? また、魔法犯罪取締り科からの依頼ですか?」
この世界では、ちょっとした魔法が存在してまして、その魔法を使った悪事などを取締るのが、黒崎さんの仕事なんです。
要件を聞くと黒崎さんは首を横に振る。
「いや、今回は事件の資料を届けにきた訳じゃない」
「では、どのようなご用件で?」
私が首を傾げると黒崎さんは懐から一枚の白い洋封筒を取り出した。
「俺とお前が『はじめて捜査した事件』覚えてるか?」
「!?」
彼のその言葉に私の脳裏に『あの事件』が蘇る。
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