第11話:新たな居候。

ジゼルが夢の世界に帰らなくなったので、俺たちはラブラブな毎日を過ごしていた。


ところが、俺の妹「音緒ねお」が上京してくるって言うじゃないかよ。

しかも住居費を節約するためにって俺のマンションに同居するって話だ。


そういや妹ももう高校卒業して女子大生になるんだった。

いつまでも高校生でいるわけないんだ・・・そんなことすっかり忘れていた。


どうすんだよ、俺はジゼルと同棲みたいな暮らししてるし、このことは親も妹も

知らないのにさ・・・


妹が来たら、バレるよな。

でも、「音緒ねお」に来るなってことは言えないし・・・。


で、そのことをジゼルに話した。

そしたら冷静沈着に言われた。


「普通に彼女ができましたって言えばいいじゃん・・・」

おとちゃんに彼女ができたって不思議じゃないでしょ」


「夢の中の女だなんて言ったら信じないと思うけど、ふつうに彼女だって言えば、

納得してくれるよ」


たしかに言われてみれば、まあそのとおりなんだけどな。

落ち着いて考えたらなにもビビることはないんだ。


で、なんやかんや言って、土曜日、妹が母親と一緒に上京してきた。


当日、俺の部屋のドアホンがピンポン鳴ったから、俺がふたりを出迎えようかと

思ったら、いち早くジゼルが出た。


やっぱりマズいって思ったけど、ジゼルが玄関に出なくても部屋のどこかにいる

訳だから、すぐにふたりにバレるよな。


ドアを開けると「音緒ねお」と俺の母親が、目の前に立ってるジゼルを見た。

妹と母親は、この人誰って顔をした。


ジゼルは普通に挨拶した。


「いらっしゃいませ、どうぞ」


「はあ・・・お邪魔します・・・あの、ここって響 音太郎の部屋ですよね」


音緒ねお」が確認するように言った。


「はい、そうですよ・・・わたし音ちゃんのめちゃ親しいお友達です」

「玄関じゃなんですから中におあがりください」


音緒ねお」と母親は狐につままれたようにジゼルにうながされて

部屋の中に入ってきた。


で、俺を見つけた「音緒ねお」が言った。


「お兄ちゃん・・・どうなってるの?」

「めっちゃ親しいお友達ってなに?」

「なんにも言ってくれないから、驚いたじゃない・・・」

「彼女がいるならいるって言ってくれなきゃ困るでしょ?」


母親も、そうそうって言うようにうなずいた。


「まあな・・・言いそびれてた・・・」

「改めて、紹介しとく・・・俺の彼女「ジゼル」」


「よろしくおねがします・・・「音緒ねお」とお母様・・・ジゼルです」


「あ、こちらこそ・・・ジゼルさん・・・あの外人さん?」


母親が言った。


「親しいお友達って・・・早い話、彼女でしょ・・・お兄ちゃんの?

あれですかね・・・私、兄に彼女さんがいるなんて知らなかったから図々しく

押しかけてきましたけど・・・やっぱり私がいたらご迷惑?」


「そんなことありませんよ・・・みんなで仲良く暮らしていきましょ」

「楽しいじゃないですか・・・ね、音ちゃん」


「うん・・・まあな」


(つうかさ、「音緒ねお」がいたら夢とエッチできねえじゃん)


ってことで俺の部屋に妹って居候が増えた。

母親は妹を頼んだよって言ってとっとと田舎へ帰って行った。


で、いくらもしないうちに「音緒ねお」は夢のことを「ジゼ」って呼んで

ジゼルは「音緒ねお」のことを「ねおっち」って呼んでいた。

お互いの歳もあまり変わらないってことで、まるで仲良しの姉妹みたいになってる

じゃんかよ。


で、妹に聞かれた。


「あのさ・・・ジゼの苗字ってなんて言うの?」


苗字・・・そんなもんジゼルにあるわけないだろ・・・でもな、ないとおかしよな。

俺は慌ててひらめいた言葉を言った。


「え、ええと・・・ジゼル・ドリーミング」


「え、ドリーミング?・・・夢?」


「だな・・・そう聞いてるけど・・・あはは」


笑ってごまかした後、俺は山下達郎さんの「ドリーミング・ガール」って曲を

思い出した。

で、ジゼルにぴったりな曲だよなって思った。


でもって「音緒ねお」は無事大学に入学した。

しかも俺より優秀なやつらが行くような大学で将来は、なにかの研究者に

なりたいんだそうだ。


つづく。



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