第10話:ジゼルの意外な才能
その朝も俺とジゼルはラブな時間をすごした。
日曜日だから大学も休み・・・ゆっくり朝食を食べてホテルを出ることにした。
朝の海も素敵だとジゼルは思った。
「
「言ったろ?こういうのもたまにはいいって・・・」
10時過ぎホテルをチェックアウトしようと俺とジゼルはフロントに降りて行った。
そしたらジゼルが言った。
「あ、ピアノ」
来た時は気づかなかったが、フロントの隅にグランドピアノが置いてあった。
「え?ジゼル・・・ピアノがどうした?」
ジゼルは受付のホテリエに
「あのピアノ弾いていいですか?」
って聞いた。
「どうぞ、ご自由に弾いてくださってけっこうですよ」
「え?ジゼル、ピアノなんか弾けるのか?」
「みたいね・・・でもそれも音ちゃんが夢の中に描いたことだよ」
「たしかに音楽は好きだけど・・・」
そうか・・・妹だ・・・
そうなんだ・・・きっとそれだ・・・それがジゼルに反映してるんだ。
「じゃ〜弾いて聴かせてよ」
「いいよ・・・・」
ジゼルは夢の中でもピアノは弾いていたが音太郎が覚えていなかっただけだった。
ジゼルはおもむろにピアノを弾き始めて、おまけに歌い始めた。
俺は感心した・・・でもせっかくの夢のパフォーマンスを邪魔しちゃいけない
と思って黙ってそのまま聴きいっていた。
俺はジゼルにすっかり魅了された。
そしてジゼルの演奏と歌が終わると、拍手をしながら絶賛した。
「すげえ・・・ジゼル」
「ノラ・ジョーンズのドント・ノー・ホワイじゃん」
「音ちゃんが好きな曲だよ」
「音ちゃんからもらった、プレゼントのお返し・・・まだ足りたいと思うけど」
「充分だよ・・・エッチもさせてもらったし」
俺は受付のホテリエに聞こえないように小声でそう言った。
ジゼルはクスって笑った。
「もういいよね・・・そろそろ帰りましょ」
それから俺たちはホテルをチェックアウトした。
いつもの日常とは違う経験にジゼルは幸せを感じていた。
お昼は帰りに見つけたラーメン屋さんで素朴にラーメンを食べた。
レストランもいいけど、そういうのだって音太郎といれば幸せってジゼルは思った。
要はジゼルは音太郎とさえいれば、どこでもよかったのだ。
そうしてふたりは日常へと帰って行った。
夕食のかたずけをしてるジゼルに食事を終えてソファに座っていた音太郎が言った。
「ねえ、そんなのほうっといて、こっちへおいでよ」
「ちょっと待ってて」
「今日は君と話してたい・・・」
「早くおいでよ」
「もうすぐ終わるから」
「新婚さんみたいだな・・・なんだかとっても新鮮」
「何、言ってるの?・・・聞こえない」
洗い物を終えたジゼルが俺が座ってるソファまでやって来た。
「だから、新婚さんみたいだって言ったんだよ・・・俺たち」
「そうだね・・・でも私と音ちゃん、結婚できないよ」
「あ〜そうやって現実に引き戻す〜・・・」
「それはそうだけど・・・そんなの関係ないからね」
「そんなのいいから、もっとそばにおいで・・・」
「え?なに?・・・うそだよね」
「なにが?うそって?」
「また?・・・」
「そう・・・四六時中してたい」
「音ちゃんの頭の中ってスケベなこととエッチいことでいっぱいなんだね」
「私だって、疲れちゃうよ」
「スケベもエッチも同じだよ」
「それよか、夢は夢の中のキャラなのに、疲れたりするんだ・・・」
「それなんだけど・・・前は疲れなんか感じなかったんだけど・・・」
「最近は普通に疲れちゃうの」
「そう、じゃ〜エッチはいい・・・でもハグくらいさせてくれてもいいだろ?」
そう言って俺はジゼルを抱きしめた。
「あ、ほんとにいい匂いだ・・・」
「君の匂い・・・俺が選んだ匂いか・・・この匂いが俺は好きだったんだな」
「なんの匂いか私には分かんないけど・・・」
「いいの・・・この匂いはクセになりそう・・・」
「考えてみたら、私ってすべて音ちゃんが思い描いた存在なんだよね」
「まさに夢は俺の理想的の女・・・」
「それっていいことなのかな?」
「いいんだよ、それで・・・」
「なんたらって会社のキャラクター召喚装置なんてのも最近はあるんだよ」
「でもそれってジゼルみたいな理想のキャラじゃないからね」
結局、万人向けのキャラだから・・・そう言う意味じゃジゼルは貴重な存在
なんだよ・・・世界でたった一人のね」
「ふ〜ん・・・そうなんだ・・・」
この時、俺とジゼルは幸せの絶頂にいた。
怖いものなんてなにもなかった。
お互いの愛はこのまま順調にいくもんだと俺も夢も思っていた
でも、この幸せを脅かすようなことがふたりを待っていた。
それも俺が招いた出来事だったんだけど・・・。
人間って自分の過去に犯した過ちは、いつかまた自分に跳ね返ってくるもの
なんだね。
つづく。
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