第6話:それはもう過去の話だから。
ジゼルは完全に誤解していた。
絵里とは今はなにもないのに・・・。
そりゃたしかに彼女とは過去に少しはあったよ。
でもそれって過去のことだろ?、今どうこうって訳じゃないじゃないか。
だけどあまりにも純粋すぎるジゼルは理解しようとしなかった。
過去のことだろうとジゼルは音太郎のことを不純だと思った。
「だからさ・・・誤解なんだって・・・」
「だって、私以外に女がいたんじゃない・・・」
「だから、それはずっと前のことだから」
「その時は、まだジゼルはいなかったんだから・・・」
「あのさ・・・もし将来付き合うかもしれない彼女に悪いなんて思ってたら
一生恋愛なんかできないだろ?」
「誰だって過去に好きな人のひとりやふたりいたって不思議じゃないよ 」
「あの人とは恋愛じゃなかったとしても・・・その時の気まぐれてあの人と
エッチしたんでしょ・・・そんなの不純だよ、許せない・・・」
「音ちゃんには過去だって綺麗でいて欲しかったのに・・・」
「俺は潔白だよ・・・なにも悪いことしてないからな」
「ジゼルを裏切ったりなんかしてないし・・・」
「ジゼルが自分で勝手に誤解してスネてるだけだろ?」
「・・・・・」
「ジゼル・・・」
「
「浮気って・・・そんなの浮気って言えないだろ?・・・誤解だって」
「あいつが絵里が自分の欲求を解消したくて俺のところに
きただけだよ・・・もう追い返したから・・・二度と来ないよ」
「分かってくれないかな?」
「・・・・・」
「これだけ言ってもだめなの」
「いつまでも泣くなよ・・・床がびしょ濡れじゃんか・・・」
「なあ・・・もういいかげん許してくれよ?」
「ってか許してもらわないといけないようなこと、なんもしてないし・・・」
「一度でも過去にそんなことした俺のこと信じられないんだ、ジゼルは」
「ひょっとして・・・もしかして夢の中に帰るのか?」
「夢の中に帰れるなら、もうとっくに帰ってるよ」
「だけど、もう帰れないの・・・」
「なんで?」
「こっちの世界で音ちゃんとエッチしちゃったから・・・ 」
「え、そうなの?」
「処女を失っちゃったら、もう帰れないの」
「じゃ〜二度と夢の中には帰れないんだ」
「だったらなおさらだよ・・・俺の誤解といてラブラブでいようよ」
ジゼルは首を横に振った。
「そんなに俺が許せないのか?」
「・・・・」
「なんとか言えよ・・・」
「・・・・・」
「そうか、俺が全部悪いんだ」
「ジゼルにそんな辛い思いせてる俺がいけないんだな」
「なんで誤解されなきゃいけないんだよ、こんなくだらないことで?」
「今回のことは俺はなんのヤマしいことなんてないけど、もし謝ってほしいなら、
謝るよ・・・」
「とにかく身に憶えのないことで揉めるのは嫌だからさ・・・」
それでもジゼルは俺を許せなかったのか、口を聞こうとしなかった。
ジゼルから笑顔が消えた。
そんなだから晩飯も作ってもらえなかった。
俺の腹はペコちゃんのまま、寝なきゃいけないことになった。
とりあえず俺と一緒に寝るのが嫌だったのかジゼルはソファで寝た。
そんなに俺が嫌いなのか?
俺ってそんな純粋な性格のキャラを作ったのか?
しかたないので、次の朝、また説得しようと思った。
こんなことで壊れる俺とジゼルじゃないはず・・・。
そしたら次の朝、ジゼルがソファにいなかったから早くに起きたのかと
思って部屋中探したけど、どこを探してもジゼルはいなかった。
彼女は俺の前から忽然と消えた。
俺になにも告げないでジゼルは俺の前からいなくなった。
俺は一瞬、ジゼルは俺に嫌気がさして夢の世界へまた帰ったのかと思った。
でも、処女を失ったらもう夢の中へは帰れないって彼女は言ってた。
それがほんとなら、じゃ〜ジゼルはどこへ行ったんだ。
俺のこと誤解したまま・・・いや誤解じゃなくて勘違いしたまま。
過去だろうが未来だろうが自分以外に女の影があることがジゼルには許せない
んだと俺は思った。
その日俺はジゼルがいなくなったまま、とりあえず大学へ行った。
肝心な彼女がいないんじゃ家にいてもしょうがないもんな。
でも俺は講義の間じゅうずっと上の空だった。
スマホなんか持たせてないから、出ていかれちゃったら探しようがないだろ。
恋人どうしの揉め事なんてカッコ悪くて警察に届けるわけにもいかないし・・・。
それでも俺は矢も楯もたまらず、バイトを休んでジゼルを探しにでかけた。
つづく。
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