第5話:これってまるっきり誤解だよ。

ジゼルは夢の中へ帰らず、俺のそばにいてくれるようになった。

俺とジゼルはその後も順調よく愛を育んでいた。


俺が大学とバイトで忙しくしていた。

バイトで疲れて帰って来た俺はソファにもたれて一息ついた。


「お疲れ・・・おとちゃん」


ジゼルが冷たい飲み物を持ってきてくれた。

その飲み物を一気に飲み干すと、俺はジゼルを引き寄せてにチュってした。

ちょうどその時だった。


俺の部屋のドアホンがピンポーンって鳴った。


最近ネットでなにも買ってないから宅配だとは思わんかったし

田舎からおふくろだ出て来たのなら、前もって連絡が入るはず・・・。


もしかして大学のダチかと思って、俺は軽い気持ちでドアを開けた。


「こんにちは・・・」


ちょっと派手めな女がそこに立っていた。


「え?絵里?ちゃん・・・」


ひびき君・・・今時間ある?」


それは俺と同じ大学に通ってる女子、付き合ってるのかないのか中途半端な関係の「大楠 絵里おおくす えり」だった。


「とくに用事はないけど・・・でも・・・」


「入っていい?」


「あ・・・今日はマズいってか・・・ずっとマズいし・・・」


「音ちゃん・・・だれ?」


玄関で俺が絵里とやりとりしてたから、ジゼルが気がついて様子を見に来た。

ジゼルを見て絵里はいぶかしそうな顔をした。


「響君、この子誰?」


「ああ・・・俺の彼女」


「音ちゃんこの人は?」


このときジゼルの心に不安がよぎった。


「そうなんだ・・・へ〜響君も隅に置けないね」

「こんな可愛い子、どこで拾ってきたの?」

「私と寝たときは彼女なんていなかったよね」


「ちょちょちょ・・・待て待て・・・」


「なに、慌ててんの・・・寝たよね、何度も・・・私と」


「いいから、外で話そう」


俺はそう言って絵里を外に連れ出した。


「ジゼル、なんでもないから・・・ちょっと出てくる、ごめん」


「音ちゃん・・・」


あの女性はなに?誰?音ちゃんとどんな関係?

あの人、音ちゃんと寝たって言わなかった?

しかも何度も寝たって?・・・。


これは音太郎に確かめるしかないとジゼルは思う前になぜか悲しみがこみ上げて

きた。

私以外に女がいたんだ・・・ジゼルはそう思った。


絵里を連れて外に出た俺は彼女を連れて近所のカフェに入った。

ウエイトレスが注文を取りに来たけど、俺は上の空だった。

たぶん適当にコーヒーかなんか注文した。


「あのさ、マズいよ・・・今更なに?」

「俺たち、ただ魔が指した者どうしだろ?」

「君とは行きずりみたいなもんじゃないか?・・・恋人かどうかも分かんない

関係だしないし・・・」

「まあ、勢いで一度だけ、したけど・・・」


「あの時は、ふたりとも寂しい者同士だったからね」


「ジゼルが誤解したら、どうしてくれるんだよ」


「ジゼルっていうのあの子・・・外人?・・・可愛い子ね」


「いいから、なんで今更たまげたみたいに訪ねてきた?」


「ごめん・・・私、付き合ってた彼がいたんだけどね、そいつと別れちゃって、

って言うか向こうが出てっちゃったんだけどね 」

「要は、私がフラれたってわけ・・・で、寂しくて、辛くて、悲しくて・・・

どうしようもなくて響君に慰めてもらおうかな〜って思って・・・ 」


「慰めてって・・・」

「そんな誰とでも寝るから、だから彼氏にフラれたんじゃないのか?」


「ひどい・・・別れたのはそれが理由じゃないよ」


「悪かったよ・・・」


「そうなんだ・・・彼氏と別れたのか・・・気の毒だね・・・とは思うけど

俺を元彼の代わりにするないよな」


「自分の辛い気持ちを俺で誤魔化そうと思ったのか? 」


「だから、ごめんって謝ってるじゃん」


「響君に彼女がいるなんて知らなかったし・・・ 」

「もしいるの知ってたら来なかったよ」


「きっと誤解されてるな、ジゼルに・・・」

「な、もう一度俺の部屋に来て、ちゃんとジゼルに説明してやってくれないか?」

「もう終わってるし過去のことだし、今はなんの関係もないって・・・」


「え?寝たって言えばいいの?」

「そんなこと言ってないだろ・・・なにも関係ないって言ってくれって言ってんの」


「悪いけど・・・響君に彼女がいるって分かって、もういいやって気になっちゃったから私帰るわ・・・彼女にジゼルちゃんによろしくね」


「おい、火種だけ撒いて帰るのか?」


「もしジゼルちゃんが誤解してるってなら自分で誤解解きなさいよ」


そう言って絵里は無責任にプイッと帰って行った。


俺がマンションの部屋に帰ると、玄関の上がり端でジゼルが泣いていた。


「た、ただいま・・・」

「なあ、あのさ、なんでもないからね彼女とは・・・」

「ジゼルが泣くような理由、なにもないから」


「音ちゃんを信じてたのに・・・私だけって思ってたのに・・・」

「さっきの人と何度も関係持ってるって・・・」


「それは過去のことだよ・・・今はまじで彼女とは付き合ってないから」


そう言い訳するとジゼルはそこにしゃがみこんだまま号泣した。


つづく。

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