おねえちゃんとお出かけしました 2

(そよそよと優しい風が吹き、木々が小さく鳴る)

(二人は喫茶店のテラス席のテーブルを挟んで向かい合っている)


「君との出会いは、小学校に上がる少し前の頃」

(静かな声で懐かしそうに話す)


「お家に来たおじさんとおばさんが連れて来た小さな男の子。最初はおばさんの後ろに隠れていて……」


「私も小さかったけど君はもっと小さくて、よちよち歩き」


「君は覚えていないと思うけど私は覚えてるよー。可愛かったなあ……」


「私が『はじめまして。よろしくね』って挨拶したら、小さな君がよちよち歩きで私に飛び込んで来てね。『うわー。かわいい』って抱きしめちゃった。うふふ」


「それが私たちの出会い」


「で、私も君も親に連れられてお互いの家を行き来するようになったんだよね」

(一度言葉が途切れる)


「あー。今日はいいお天気。青い空、白い雲」

(空を見上げる)


「小さい頃もこんな風に一緒に空を見上げて雲を眺めて。『あれはイヌさん』『あっちにネコさん』『ウサギさんもいる』なんて、雲を指差して、二人で笑って……」


「小さい頃って本当に想像力豊かで、雲を眺めているだけでも楽しかったな……」


「そうだ。君と手を繋いで、私のお家のお庭をお散歩したこと覚えてる?」

(視線を戻す)


「小さなお庭もあの時の私たちにはまだ大きかったよね。私、君といると気が大きくなっちゃってさ。ちょっとした探検気分、君の手を引いて一緒に歩いたんだ」


「お庭の花壇のお花を眺めたり、お空の雲を見上げて遊んで」


「夕方、君は疲れてすやすやと眠ってしまって、その寝顔をずっと眺めていたな……」


「うふふ。私にとっては大切な思い出の1ページ」


「お散歩だけじゃないよ。絵本読んだの、覚えてるかな?」 


「私、小さい頃、お母さんによく絵本を読んでもらってたんだよね」


「お母さんのお膝の上でね、絵本を読んでもらって、絵本の世界の中で遊んで」


「あのときの暖かさ、彩り豊かな絵本と、それを読んでくれたお母さんの優しい声」


「私の人生の原点みたいなものでさ、私の心に物語というものを伝えてくれた気がする」


「そんな頃に私は小さな君と出会ったんだよね」


「覚えてる? おばさんに連れられて君が遊びに来たんだけど、お天気の悪い日があったの。今日はお家の中で過ごそうってことになって」


「そしたら、君は私の持ってた絵本に興味津々、好奇心いっぱい」


「私、おねえさんぶって、君に絵本読んであげたんだよね。覚えてる?」


「その絵本は動物さんたちの冒険の物語」


「私なりに頑張って絵本を読むと、君は無邪気に目をキラキラさせて、一緒に笑って、一緒に驚いて、一緒に絵本の世界で冒険して……」


「君が『もっともっと』って顔で続きをせがんだこと、今でも思い出すなあ」


「それも思い出の1ページ」


「想像力豊かで絵本の中に無限の世界が見えたあの頃」


「うふふ。ああいう体験が今の私を形作ったのかもしれないなー」


「巣ごもりしている間、あの頃のことをよく思い返していたよ」

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